見出し画像

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語⑳

「おめでとう、奇跡だね」


産婦人科って
どんな感じなんだろう
若い女の人が大勢いるんだろうな
みんなおなかが大きくて、幸せそうに
キラキラしてるのかな
 
そこへ車いすの私が一人で行ったら
絶対に注目の的だよね
なんて思われるんだろう
 
妄想や卑屈な考えがあとからあとから湧いてきて止まりません
あ~
やっぱりやめようかな
 
就職は
してみて、ダメなら辞めればいい
結婚も
してみて、ダメなら離婚すればいい
と思って挑戦してきたけれど
子供は産んでみてダメだからって
元に戻すわけにはいかないぞ
等々
やらない言い訳を探しまくって、並べ立て…
 
でも、
「後悔はしたくない」
そして、ついに
たった一人で大学病院の産婦人科へ
 
行ってみたら
どうってことはありませんでした
まあ、車椅子なので一応は注目されますが、
いつものことです。
廊下の待合ベンチには様々な女性がならんでいます
もちろんお腹の大きな人もいましたが
産科と婦人科があったので、
お腹が大きくない人も、すこし年齢が高そうな方も、
で、みなさんご自分の事でいっぱいのようでした
私も自分のことでいっぱいで、周りを気にしている場合ではありません
名前を呼ばれて診察室に入ると
優しそうな年配のおじいさん先生でした
(当時の女性雑誌にインタビュー記事が載るような有名な先生だと後で知りました)
先生は私の話を聞いて、ちょっと考えてから
「わかりました、それでは基礎体温をつけて1か月後にまた来て下さい」
と言われました。
 
1か月後
基礎体温表をみて
おじいちゃん先生は言われました
「大丈夫、ちゃんと産めるから。僕が産ませてあげるよ」
ちょっと誤解されそうな言い方ですが、はっきりそう言ってくださったので
とても安心して、お任せできると思いました。
期待に胸を膨らませ、妊活が始まります!
 
ところが、
結果が出ません
毎月毎月
「あ、またダメだった」
の繰り返しです。
先生は
「おかしいな~」
と首をひねり
ありとあらゆる
いや~な、めちゃくちゃ辛い検査をして
時が過ぎました
「これでだめだったら諦めよう」
と最終チャレンジ
・・・
ダメでした
 
仕方がありません
ここまで頑張ったんだから
もういいや
 
ところが、病院通いをやめた後
基礎体温が下がらない
「え?」
「風邪かな?」
「まさか?」
と思いながら、再び大学病院へ
すると、おじいちゃん先生が笑顔で・・・
「おめでとう」
「奇跡だね」
 
私のおなかに・・・
来てくれました
ついに
ありがとう
 
「母子手帳」
「母親学級」
私の人生にはあり得ないこと
のはずでした
 
支援学校で書いた作文とはまったく違う人生
夢だった「普通の人生」がまた一歩先へ・・・
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?