同僚が死んだ時の話

 あれは25歳くらいの時でしょうか、私は仕事が終わると毎日のように大通公園に車を停めて、友人達とナンパにいそしんでいました。
 ある日いつものように大通公園で恒例のナンパをしていました。今回は会社の同僚達とです。
 しばらく時間が経過した時、同僚の一人が何者かに絡まれていました。
「何だ揉め事か?」
とそちらに行き話を聞くと中学の同級生だそうです。
 しばらくナンパは中断、その同級生を交えていろいろ話していました。
 そうしているとなんでかわかりませんが、次々と同僚の周りに人が集まってきました。集まった人の数はおよそ30人近く。
 集まった人達は皆同僚の中学時代の同級生でした。
 ある人は仕事の帰り。
 ある人はデートの途中。
 ある人はたまたま東京から帰ってきたところ。
 ある人はバイトの帰り。
 当時は携帯電話なんてないし、持っていてもポケベル。だから自宅にいないと連絡なんて取れないんですよね。
 そんな時代なのにこの人数が、深夜の札幌大通公園に集まり話をしていました。
「なんか不思議だね。」
 引っ越して住所や電話番号が変わった人もいる。一人暮らしを始めた人もいる。だから連絡先の交換をしていました。私はその友人の同僚なだけなので、この集団の中では部外者。だからこそ割と冷静でした。
 何かの前触れかな?
 そんな感じの夏の夜でした。

 そしてそれから1ヶ月ほど経過したある日の深夜に連絡がありました。
 交通事故で同僚が死んだと……
 一緒に車を走らせていた別な同僚からの連絡でした。カーブを曲がりきれずに電柱に激突。そのまま病院に運ばれましたが意識が戻ることはありませんでした。
 そして葬式の時にすごい人数の同級生が来ていました。疎遠だった人たちも全員あのナンパの時に連絡先を交換していたので、スムーズに連絡が回ったそうです。
 まだ携帯電話のない、ポケベルの時代の話です。

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