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バンカラ女子のクリスマス

「あのー。好きです。付き合ってください」
トレーニング室で筋トレを終えて着替えてバイクで帰ろうとしたらいきなり女子が近づいてきてこう言われた。
「あのさ~。一応聞くんだけどあたしが女だったこと分かって言ってる?」
「はい、もちろんです。あいみょん先輩!」
「はぁ」とため息を洩らす。
女子に告白されたのはこれで7人目だ。
なぜかあだ名があいみょん先輩。
あいみょんに似てるって言われるけど声と髪型だけなんだけどなぁ~。むしろ小松菜奈?
ちなみにあたしはボロボロの学ランを着ている。
そして下駄も。
なぜならバンカラ女子応援団長だからだ。
そのせいか女子ばかりにモテてしまう。
モテるために応援団長になったわけじゃないんだけどな。
「そのあいみょん先輩ってのやめてくれないかな」
「あ、すいませんえ~っと。あざみ先輩」
「あのさ、好きって言ってくれるのはうれしいんだけどさ。女の子同士で付き合うって意味分かって言ってんの?」
「…ダメ、ですか?」
「いやダメってことはないけど…困ったな」
まあ好きになるのに女も男も関係ないとは思っているけど。
「君、名前は?」
「1年C組の一条みさきです」
色白で小柄でほわっとしたかわいらしい女子だ。
髪をポニーテールに束ねている。
「みさきちゃんさ。付き合うってのは置いといてまずは友達からでもいい?」
「はいっ」
目を輝かせて頷くみさきちゃん。
「じゃあたしたち友達だね。よろしくみさきちゃん」
「はい、よろしくお願いしますあざみさん」
「帰り送ってくよ。もう遅いし」
そう言って彼女にヘルメットを渡して400CCのバイクのエンジンをかける。
「ありがとうございます」
うちの学校はバイク通学オッケーだしもう1年以上乗っているので2人乗りもオッケーだ。
さすがに下駄は運転しづらいのでローファーに履き替える。
「あ、ごめん。あたしの学ランちょっと臭いかも。あんまり嗅がないでね」
先輩から譲り受けた継ぎはぎだらけの学ラン、一度もクリーニングに出してないから臭いかも。やっぱ洗おうかな。
「ふふ、大丈夫です」
「あ、そうだ。帰りファミレス寄らない?おごったげるよ」
「え?いいんですか?うれしい」
笑顔が輝くみさきちゃん。
「うん、寒い中あたしのこと待ってくれてたみたいだし」
今日は冬休みになったばかりで学校は休みだけど体がなまるといけないから誰もいないトレーニング室で筋トレとバイクをしてきたのだ。
応援団は体力勝負だから。
「それに今日はクリスマスだもんね。メリークリスマスみさきちゃん」
「メリークリスマスあざみさん」
さすがにこれを言ったらこっ恥ずかしくなった。
顔が赤くなるのが分かる。
柄にもないことは言うもんじゃないな。
でもまぁいいか。クリスマスだし。

【続く】



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