鈴木小太郎

日本中世史・中世文学研究。gooブログ「学問空間」では過去を、こちらでは未来を語りたい。 https://blog.goo.ne.jp/daikanjin

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最近の記事

「創られた伝統」を創るためには何が必要か。

「創られた伝統」という言葉があって、これはエリック・ホブズボームというイギリスの歴史家が提唱した概念ですが、一般には非常に否定的な意味合いで用いられています。 特定の制度や習慣・儀礼などが「伝統」として重んじられているように見えるけれど、そんなものは別にそう古くまで遡れる訳じゃなく、割と近年に「創られた伝統」なのさ、みたいな軽蔑的な感じですね。 日本では、例えば「国家神道」などが「創られた伝統」として批判されたりしています。 平山昇『初詣の社会史 鉄道が生んだ娯楽とナショナ

    • ペルガモン博物館との異同

      古代・中世の遺跡の復原というと、ベルリンのペルガモン博物館のような例もありますね。 こちらは「本物」をそのまま持ってきて大規模に展示していますから、相当な迫力があり、古代・中世の世界観にある程度近づくことができそうです。 ペルガモン博物館(「世界遺産オンラインガイド」サイト内) https://worldheritagesite.xyz/contents/pergamonmuseum/ Pergamon Museum https://en.wikipedia.org/wik

      • グローバルな「里宮」

        前回投稿で「社会の精神の安定化に効果が高いものは古代・中世の建造物」と書きましたが、国民国家を自明の前提として議論している訳ではないので、社会ではなく「世界」ないし「人類」とする方が適切でした。 さて、人類の精神の安定化に効果が高いものは古代・中世の建造物だとして、別にそれが「本物」である必要はありません。 世界遺産として登録されているような古代・中世の建造物の場合、たとえ相当に経年劣化していても、その修繕には厳格な規制があります。 そうした厳格な姿勢は学問的には価値があるか

        • 『フロイトのイタリア』

          危機を完全に回避することはできないが、危機をなるべく先送りすることは可能かもしれない。 世界の精神的不安定に対する特効薬はないが、ゆっくりと世界の体質を改善する薬はあるかもしれない。 その一つの可能性は歴史。 歴史に関する知識が豊かになれば、多くの人が短期的な利害を離れ、長期的な視野を持つことが可能となる。 しかし、歴史といっても理論や史実そのものに世界を安定化させる力は弱い。 また、近い歴史はむしろ世界を不安定にする可能性が相当あるが、遠い歴史は安定化につながることが多い。

          再開します。

          6月20日に「日本の「宗教的空白」の濃度」を書いて以降、五カ月近く経ってしまいましたが、ウクライナ戦争に加えてイスラエルとハマスの戦争まで始まってしまい、世界の不穏さは一段と増していますね。 この間、第一ブログの方はほぼ毎日欠かさず書いているので、私にとって、こちらのテーマ「動的博物館国家論」は細かい考証と並行して書くのが困難であることを認めざるを得ません。 しかし、少しずつでも、こちらである程度アイディアを形にしておいて、整理した上で来年、第一ブログの方に移そうかと思ってい

          再開します。

          日本の「宗教的空白」の濃度

          私も一応、南北朝時代くらいまで遡って日本の「宗教的空白」を考えてみたのですが、戦国時代までは時期と地方によって、その「宗教的空白」の濃度は相当に変動していますね。 時代が下るにつれて宗教感情が希薄になる、「宗教的空白」の濃度が増すということでは全くなくて、逆転はいくらでもあったし、地方によっても様相は様々だったようです。 しかし、近世の長い平和の中で、大きな方向としては時間の経過とともに、そして日本全体においてある程度均質的に「宗教的空白」の濃度が増して行き、幕末維新期から明

          日本の「宗教的空白」の濃度

          トッドと「宗教的空白」

          私は一時期、エマニュエル・トッドに凝っていて、「宗教的空白」という表現も直接にはトッドの著作から借りたものです。 『シャルリとは誰か?』(文春新書、2016)の冒頭、2015年10月25日付の「日本の読者へ」において、トッドは次のように書いています。 ◇◇◇  宗教的空白と、格差の拡大と、スケープゴート探しというこの問題設定において、日本はどう位置づけられるべきでしょうか。  もし私の変数から極端に単純化した等式を引き出すなら、宗教的空白+格差の拡大=(つまり)外国人恐怖症

          トッドと「宗教的空白」

          2020年7月の頃

          コロナ禍が始まってしばらく経った2020年7月、第一ブログで「コロナ後の世界と日本の役割」という些か大袈裟なタイトルの記事を書いてみました。 ここではアメリカと中国のことしか言及していませんが、2022年2月に始まったウクライナ戦争は、「世界的な精神的不安定が、近い将来に本格的な世界戦争に転化する可能性」を示唆しているのかもしれません。 ま、私も別に予言者を気取る訳ではなく、漠然とした不安感は多くの人が共有していたでしょうが、実際に戦争が現実化してみると、「戦争反対を声高に叫

          2020年7月の頃

          少し休んでしまいましたが、

          明日から再開します。 第一ブログ「学問空間」の方で承久の乱の宇治川合戦を検討していて、細かな考証に集中していると別の話題で文章を書くのが少し難しかったのですが、宇治川合戦の方が終わって負担が減ったので、またこちらも頑張ります。

          少し休んでしまいましたが、

          「宗教的空白」について

          私の第一ブログ「学問空間」で「宗教的空白」についてあれこれ考え始めたのは今から七年前、2016年のことで、同年の「新年のご挨拶」で「グローバル神道の夢物語」という妙なシリーズを始めると宣言し、森鴎外の「かのやうに」を出発点に日本人の宗教観を検討してみました。 社会の精神的安定にとって必要なのは「ビリーフ」ではなく「プラクティス」である。 https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/0b4bb2bea23d79256a8fafc6bd4bb32a

          「宗教的空白」について

          ウクライナ後の世界が最も必要とするもの

          核戦争に発展しない限り、何時になるかはともかく、ロシアのウクライナ侵攻はロシアの敗北で終わるだろうと思われます。 しかし、主要国の間では曲がりなりにも安定していた世界秩序の一画が崩れた後、いったい何が起きるのか。 特に極東では、台湾問題があります。 中国としてはロシアの敗北の原因を研究はするでしょうが、それは台湾侵攻を諦めるという方向で作用するのではなく、ロシアのように失敗せずに台湾を攻略する方法の模索となるでしょう。 台湾以外でも、ロシア・ウクライナ戦争は、世界のどの地域に

          ウクライナ後の世界が最も必要とするもの

          第二ブログを始めます。

          gooブログ「学問空間」は様々なカテゴリーの雑居状態で、ここ二年ほどは日本中世史の記事が大半を占めていました。 ただ、細かな史実を追って行くのが楽しい反面、別の話題を書きづらくなってしまい、たとえ書いても中世史関係の記事に埋もれてしまって、見づらい状況になっています。 そこで、歴史、すなわち過去については従来通り第一ブログで書くこととし、こちらで「動的博物館国家論」と題して、私が現在一番関心を持っている日本が進むべき将来像について書いて行こうと思います。

          第二ブログを始めます。