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001.どうなる?日本のものづくり

なぜ私たち日本人は、こんなにコンパクトでこぎれいな商品を作るようになったのだろうか?
この原稿≪ものづくり 日本の心≫を書くことになったきっけかは、この疑問です。
世界中にたくさんの国があり、それぞれの国で製造業があり、ものづくりが行われています。仕事で、世界中のとは言いませんが、少なくとも、両手・両足を合わせた以上の数の国・地域を訪問し、工場でのものづくりを見るたびに、私たちは、なんであんな作り方をしているのだろう、と気になりました。
世界にはいろいろな国があります。
・それらしく作って用途が足せればそれで充分とする国
・よそのやり方を手早く真似しようとする国
・スケール大きく大雑把に作ろうとする国
・自分たちのやり方でやりたいとこだわる国
・どこにもない新しいやり方をしようとする国
・・・などなど。
そんな中で、どうやら、仕上がりを重視してコンパクトにきれいにまとめることにこだわり、過剰ともいえる神経を使っているのは私たち日本人だけのようなのです。私たちの中にものづくりの通奏低音が流れているのではないか、ということです。
私たち自身、全く気が付かないほど、まるでDNAに書き込まれたかのようにコンパクトに、こぎれいにまとめられたものをいとおしむ心があるように思えたのです。
私たちは、なぜ、そんなやり方をするようになったのだろうか、そう思って本などを参考に読んでみましたが、どうやら、とても簡単に答えの出せる疑問ではないと分かってきました。
そこで途中経過、先へのたたき台としてまとめてみたのがこの原稿です。
 
かつてはものづくり、技術動向に関連する記事があふれていましたが、最近は、「ものづくり」について、あまり話題になりません。どうしたのでしょうか、ものづくりを語っても意味がなくなった?と言われそうですが、それは違います。ものづくりとその技術は、相変わらず産業の基盤です。なぜこんな風になったのか、まずは日本のものづくりをめぐる現状を見てみましょう。
 
001どうなる?日本のものづくり 
2020年あたりをさかいに産業界・社会のあり方が大きく変化しました。
そのきっかけになったのは大きくふたつあります。
一つは2020年春から始まったコロナ禍による人的な接触への忌避、ソーシャル・ディスタンス確保への要請であり、もう一つは地球温暖化を考慮した化石燃料の回避です。そして、その結果としてSDGsをめざした自動車業界の世界的なEV化へのシフトがすすみました。
20世紀から21世紀にかけて、グローバル化の進展とともに負の要素として世界的な感染症、パンデミックの危険性は危惧されていました。そんな中で起こったのがコロナです。
始まりは、2019年秋、ひそかに武漢で流行り始めた肺炎でした。2020年になるとそれが急速に猛威をふるうようになり、コロナ(covit-19)とよばれて、急速に世界に伝播するようになりました。肺や心臓などに呼吸器系の基礎疾患を持つ高齢者への感染が相次いで、パンデミックが現実のものとなりました。
これで社会の様相は一変しました。
人が集まることが危険とされたことで、企業での仕事も個別に離れた自宅等でのネットワークを介してのリモート作業が奨励されるようになりました。通勤等による混雑が問題視されてzoomやgoogle meetを使用したリモート会議などの活用が議論され、会社に出社すること自体が避けられるようになりました。
会社で仕事をするという面では事務作業や営業はそれで代替可能ですが、問題は製造業の現場における加工・組み立て作業です。ネットワークを介した作業でコロナの伝播を回避できても、ものの移動を伴うものづくりはできません。
コロナ以前、産業界では自動化やITの活用が急がれ、ものづくりの無人化、IoTがすすめられてきました。ドイツ発祥のインダストリー4.0(Industrie4.0)などが大きな話題となっていたのもそうした流れの延長にあるものでした。
コロナが猛威を振るった2020‐21年の2年間、製造業の現場作業が話題になることはほとんどありませんでした。しかし、現実には現場で集合してものづくりの作業は行われていました。メディアを賑わすのはコロナ対策としてのソーシャル・ディスタンス確保と業務処理を両立させるリモートワークの話題であり、工場における業務に関しては、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が叫ばれるだけでほとんど話題になりませんでした。


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