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009.答えは、しりあがりの半疑問形?

見ているとよくわかるのですが、手が上がらないのは、どう対応したらよいのか、戸惑っているのです。戸惑いの原因は、「答えは日本に決まっているが、そんな簡単な問題なのか? 他になにか意図はあるのではないか?」ということと、「こんなやさしい問題に、自慢げに手をあげて『日本』と答えるのは、恥ずかしい」という微妙な心理が働き、お互いへの牽制もあって、手をあげられないのです。

公開のセミナーや講演会ならば参加者は製造業の競争相手もいます。ここで屈託なく「日本」などと答えるのは、無知をさらすようでメンツにかかわるというところでしょう。これは、日本人に特有の、場の空気を読む心理からくる行動ですね。

海外ならば、この国はどこですか?と聞いた瞬間に、即座に手があがり「日本」という答えがでてきます。響きが軽い。正解かどうかよりも、質問されたらとりあえず手をあげて答える、正解や深い洞察よりも自己主張することが重視される世界での風景です。

手があがりそうもないのを見て、「言いにくいでしょうが、あえて言っていただくとどこですか?」と催促をすると、パラパラと2、3人が不安そうに手をあげてくださるので、どうぞと指名すると、「日本?」と答えてくれます。

答えは、しりあがりの半疑問形。こんな答えでいいのかしら?と逆に問いかけています。自信がなさそうです。

「はい、ありがとうございます。どうみても「この国」は日本をさしているようにみえますね。あたりまえすぎて答えるのが恥ずかしい、と思っていらっしゃったと思いますが、思い切って口にだしてくださってありがとうございます。勇気を持ってお答えくださったのですが、残念ですが、日本ではないのです。さて、では、日本でないとすると、どこの国をさしているのでしょうか?」と続けます。

ここから、みなさん迷いはじめます。

頭の中に、ドイツ? スイス? 韓国? まさか中国?というわけはないよねえ? など、コミックさながらの「?」の吹き出しがたくさんでているような顔つきをされています。手があがりません。

どの国も、「ヨーロッパの発明はそこで完成される」、「生まれついての職人たち」「機械や道具を考案したことがない人はいない」「職業が喜びを構成する」というフレーズがひっかかり、日本以外にそんな国はあるのか?と考え、どの国も正答といいきる自信がなくて迷っているのです。

そのうち、ぱらぱらと手があがり、答えをいただきますが、そのたびに、「はい、ありがとうございます。そうですよね。日本でなければ他にはそのあたりが考えられますよね。惜しいのですが、でも違うのです」などと答えながら、「他には?」と挙手をうながします。しかし、なかなか求める正解はでてきません。

ドイツ? スイス? 中国? 韓国? イタリア? ベトナム?……と、思いつく国名があらかた出尽くしたところで質問を切り上げ、答えを明かします。

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