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【門外不出】#2 アル中でも執筆依頼が途切れない、ライターの仕事術

その1から続く)
それと、大切なのは気遣いだ。編集者への「お布施」もある程度は必要だろう。現状は自分が生きることだけで精一杯のため「お布施」はなかなかできていないが、以前、打ち合わせで会った編集者に、評判のイタリアンレストランのドレッシングを渡した時はとても喜ばれた。誕生日が近いと知ったら、小さなケーキをご家族にも。こうして、編集者だけではなく編集者の家族までも味方にする。あるいは、とても小さなことだが、メールの返信は早く。オンラインやリアルの打ち合わせの時は10分前に到着する。編集者がたばこを吸うのなら、喫煙所を調べておく(私も喫煙者だから、笑)。こうした小さな気遣いも案件取得の一助になっているかもしれない。

だいぶ昔、私が編集者だった頃に素敵なライターさんだなと思ったり、お仕事を一緒にしたいと思っていたライターさんは「お酒を一緒に飲める人」だったなあ。コロナ禍で、取材どころか身近な人ともなかなか直接会って交流を持てない今、ライターと編集者のつながり方も変化があるのかもしれない。大事なのは「この人が好き」って気持ちだと改めて思ったりしている。

「この人が好き」「この人ならお願いできる」と一緒に戦う仲間=編集者がいたら、ライターは良い記事を作れるし、例えば、ライターの私が「今日は具合悪いな」と言ったら心配して締め切りを延ばしてくれたり、ギャラの交渉もしてくれる。そんな編集者と巡り合えたことがライターとしての財産なんだろう。

だがしかし、私は今日もお酒を飲む。

昨日、締め切りを過ぎても納品できない私に「早く原稿を書け!」と怒ってきた編集者に、明日謝ったら許してくれるかな。出版業界がもうそんなに優しい世界ではないとは分かっている。それでも、私に原稿を依頼してくれる編集者たちは私を「ダメすぎだろコイツ」と暖かく見守ってくれている人ばかりなのだ。そんな編集者に出会えたのも私の少ない運の1つなのかもしれない。多分、「そのうち死ぬ」と思われているのだろう。でも、思っていたよりアル中でも摂食障害でも不眠症でも死なない(笑)。

本日の酒の肴は石巻のショップから購入した筋子とコンビニのおにぎり。なんだかすごく贅沢な気分だ。 書くのが「好き」で、怒ってくれる編集者がいれば、多分、大丈夫。愛する編集者からの怒りも、筋子もコンビニのおにぎりも、生きる力になる。

ライターを30年弱続けている私にプロ意識はあまりなく、編集者と筋子とおにぎりに助けられているだけだ。仕事をくれる編集者と出会えるのは、自分の営業力というか、珍しい人、ネタになるっていうところで、編集者から探されるライターになっているというところなのかもしれない。

結論。

長いこと書く仕事を続けてきたが、ほかの人に「とにかく書け」というアドバイスは全くしたくない。初心者ライターさんには「相性が合う編集者に出会う努力」を徹底していただきたいと思う。昨今は営業ツールもたくさんあるが、相性が合う編集者と出会える機会はなかなかない。求人に応募して面接で落ちて、その度に凹むくらいなら、相性が良い編集者と出会う努力をした方が建設的だと思うのだ。

その努力ができないなら、ライターをやるより筋子を食べてお酒を飲んでいる方が良いかもしれない。それが今の私だ……(苦笑)。


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