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【番外】友へ

友人が亡くなったと
知らせを受けたとき
体調が急に崩れた

彼女の名前の入った主語と
「亡くなった」という述語が
どうにも結び付かなかった

まだお若いし
少し前まで元気にしていた
活動的で
私たちのコミュニティの中心人物
明るいムードメーカーだった
笑っている顔やおどけている顔しか
思い出せない

動かなくなった彼女に会いに行くことを
体が躊躇っていた
会いたい気持ちはあるのに
今の自分にはそのエネルギーがない気がして
また後日にさせてもらおうかとも思った

今朝になりふと
自転車なら行かれる
という気がした
山の麓にある彼女の家まで
だらだら続くなだらかな上り坂を30分
重いペダルを踏み続ける
自転車でないと行かれなかった

かつて一度だけ
彼とその山を登ったときに
2台の自転車で連れ立ったこの道
マリが後ろで彼の背中を追いかけた
今日は彼の遺した自転車を
マリが漕ぐ

彼女は写真家エミコさんの
100人斬りポートレートの3人目に
「無職」というoccupationがかっこいい
奥様であった彼女の好奇心の触手は
自由に手広く伸ばされて
彼女の好奇心を満たすに留まらず
よいものを広めるたくさんの活動を主催した

旦那様はそれに一切関わらず
否定もしないスタンス
だから一切関知しない
数日にわたり100人以上訪れた
彼女の活動に関わった弔問者たちから
その活動を知る

その触手のひとつから
彼とマリもお世話になった
彼女の主催した米糠の糠袋を作る会
彼女の田んぼで獲れた無農薬の米糠と
彼女が持参した着物の端切れで
塩もこだわりのお塩を入れて
マリは彼のために糠袋を手縫いした

彼と山に登った帰りには
彼女の自宅である素敵なログハウスを
彼と一緒に見せてもらった
彼女は不在だったので
外側からだけだったけれど

霊山を真横に臨むこの家で
寝起きする空気はどんな心地だったろう
いつもおどけて笑いを取っていた
彼女の姿を知る者は
信じられるだろうか
彼女が鬱だったということを

まるで寝ているようなんですけどと
旦那様は言うけれど
やはり温度と気配を失った彼女の
氷のような頬のラインに
そっと視線を沿わせて
ありがとう、と
おつかれさま、を言った

困った人がいたらすぐに駆けつける
老若男女の区別なく誰とでも打ち解ける
あちこちに顔を出し
いつも人に囲まれていた

りーさんに感謝を込めて

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とりとめもなく書いてしまいました。
今日の日記のようなものです。
ヘッダー画像をお借りいたしました。ありがとうございます。

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