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ジョーカー/映画レビュー



【弱者が辿り着く狂気を描いた作品】

DC作品の独立作品として初めてジョーカーの原点を描き映像化された本作。
この作品は脳に損傷がありストレスがあったりすると笑いだしてしまう障害を抱えた孤独な男、アーサーが社会との摩擦の中で徐々に狂気に呑まれジョーカーへと変貌していく様を描いた作品です。
この作品で主人公アーサーは、病気の母を看病しながらコメディアンとして売れることを目指していますがその姿が何とも痛ましくそしてその劇中で描かれる重苦しさにどこか共感を覚えます。
また「ジョーカー」は現代の社会問題を赤裸々に見せた作品でもあります。

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ジョーカーのテーマ


冒頭でアーサーは舞台であるゴッサムの路地裏で不良少年達に暴行されるところから始まります。
街は汚れ少年達も貧乏な身なり、アーサーは看板を持って宣伝するピエロです。
そんなアーサーから物を盗もうとするわけですが、当然ピエロにそんな対した金はありません。
結果、アーサーに憂さ晴らしをする為に暴行、そこでタイトルが出てきます、「ジョーカー」です。

「ジョーカー」は弱者が自分より弱い弱者を痛めつけモンスターを産み出す社会の負のスパイラルをテーマにした作品なのです。

誰しもが避けたことのある変な人

映画ではアーサーがバスに乗れば子供を笑わせようとすると親から気味悪がられたり、アーサーの働くピエロの仕事場でもどこか距離を取られています。
仕事でうまくいかない時はゴミ箱を蹴り上げ、近所の優しくしてくれた女の子のことを考えて妄想にふけっていました。
逃げ場のないアーサーの過酷な現実に対しアーサーは自殺を連想させるようなメモをしていたりします。

「この人生以上に硬貨(高価)な死を」

アーサーはまさに現実に存在するクラスに一人はいた障害を持っていたり変な行動をして距離を取られている「あの子」を思い出すような存在です。

自分は内心どこか差別していて見て見ぬふりをしている現実を直視させるようなこのキャラクターは日本に存在した犯罪者達にも重なるものがあります。

例えば多くの人で賑わうハロウィーンの夜、走行中の電車内で乗客が無差別に襲われた事件、京王線刺傷事件(けいおうせんししょうじけん)です。2021年令和3年)10月31日東京都調布市を走行中の京王電鉄京王線車内で発生した殺人未遂事件。
殺人未遂などの罪に問われた被告は事件当時、映画の悪役「ジョーカー」に扮していました。
殺人事件を起こした犯人は高校卒業後介護の職に就いたものの職場になじめなかったといいます。
そんな中でも交際を続けている彼女と別れて交際は終了。
結果、自殺願望をもった犯罪者は京王線で突如乗客たちをナイフで襲ったのです。

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このように、社会で隅に追いやれたりもしくは何もかも失った人が起こす犯罪の出来事を分かりやすく可視化した作品がジョーカーの特徴といえます。
アーサーは潜在的に犯罪者になるポイントをいくつももっていますが
しかし、そんなアーサーにも一握りの希望がありました。
それはコメディアンになることです。


お笑いとは?攻撃な言葉で笑う人間の本質


アーサーは大物芸人マレー・フランクリンが司会を務めるトークショーを見るのが日課、彼のことを尊敬して存在しない父親の代わりのような存在として認識していました。
番組が始まれば彼の横で脚光を浴びる自分の姿を夢見てコメディアンを目指す日々。
そしてアーサーはよくコメディクラブに通いコメディアンの笑いを研究してネタを思いつけばノートに書き記し何処が面白いのか考えているような真面目な人間です。

アーサーはコメディアンのネタを下ネタはウケる、攻撃的なワードは面白がられるという風に受け取ります。
実際、お笑いネタは誰かを晒したり小馬鹿にしたりもしくは自虐的な発言をしたりしてどこか誰かにトゲトゲしい言葉を投げかけることが多いです。
ですがそこには皆の共通認識に当て嵌まるワードを言えなければなりません、ですがアーサーにはそもそも多くの人々とかけ離れた境遇です。
なので残念なことに彼は普通の人達と笑いのツボが違ったり世間とズレている、当然コメディクラブで話して見てもウケることはない、彼は世間との摩擦に苦しんでいました。

しかし彼にはチャンスがやってきます。
病室で倒れた母の看病をしている傍らテレビを見ているとマレーの番組が始まります。
アーサーはマレーの番組で紹介されました。
しかしそこでの紹介のされ方というのは人を笑わせる コメディアン アーサーではなく笑われている ジョーカーとしてでした。
アーサーはその姿を見て憎しみに近い感情を隠せないのでした。

笑わせること笑われること


お笑い芸人は笑わせることは好きですが笑われることを好まない傾向にあります。
例えば元芸人の宮迫さんの過去の発言ではアメトーーク!という番組で笑わせた話を誇らしく話しています。
番組にて、ジャケットからYシャツが出ているのを発見したと言い「すごく話が盛り上がってたんですけど“盛り上がっているところ、ごめん。出川さん、なぜ袖だけそんなに出ているんですか?”って言ったら、ドカーンとウケた」と振り返る。「みんなが気になっているけど、言わないところをイジってくれたとなって大爆笑になるんです」と。
人の間違いや失敗を指摘して笑いに変えた宮迫さん、しかしこの話をある人物にいじられて笑いに変えられると宮迫さんは怒り出したのです。


宮迫さんをいじった人物その人物とは粗品さんでした。
粗品さんは宮迫さんのこの話を小バカにしながら一蹴しました。
「MCとして終わってるやろ。MCとして終わり上げてるやろ、この手法」「後輩が頑張ってトークして(るのに)自分の笑い優先して、出川さんに(指摘するなんて)どういうことやねん」「独りよがりすぎるやろ」。まったくチームのお笑いできてないよ、独りよがりな。自分で笑い取りたいだけやん。あかんよ」と辛口なコメントです。


これに対し宮迫さんは粗品さんに対してユーチューバー・ヒカルのバースデーイベントで「テレビに出てた時の俺を超えてから言え!」「お前、アメトーーク!みたいな番組作ったけ?」と発言、自分が笑われる立場になると激昂しました。

しかし、よく考えれば粗品さんがやったことは宮迫さんが出川さんの恥ずしい所を指摘して小馬鹿にして笑いをとったのと同じで今度は宮迫さんのアメトーークの振る舞いを小馬鹿にして笑いをとったに過ぎません。
ですが宮迫さんは怒り狂ったのです。

笑いをとるのと笑われることは違う、ジョーカーでも同様にアーサーは笑わせる側でいたかったのでしょう。
ですがそうはなりませんでした。



-そして悪のインフルエンサーへ-


アーサーは解雇され悲劇的な人生に打ちのめされて失意の中で家へ帰る途中、酒に酔ったウェイン社の社員が女性へセクハラして嫌がらせをしている場面に出会います。
そんなときに彼の障害が出てしまいました。
過剰なストレスにより笑ってしまったアーサーは社員達に絡まれてしまいます。
一度不良少年達に暴行を働かれたアーサー、彼は自分の持っていた護身用の拳銃で威嚇射撃するつもりでした。
しかし、ウェイン社の社員達を撃ち殺してしまいます。
アーサーはどんな人間にも反撃出来なかった人間でした。
だからこそこ殺人にアーサーは高揚感を覚えます。
アーサーはこの事件を引き起こしたことで悪への道に進んでしまいます。

そして事件後にアーサーの家に電話の着信がありました、マレーの番組に招待されたのです。

アーサーはマレーの番組に出てどんな話をするかリハーサルをします。
そのリハーサルとはマレーとの談笑後に拳銃自殺をしアーサーの物語に幕を閉じるというものでした。

場面は移りマレーの番組の楽屋でアーサーは初めてマレーに会います。
アーサーはマレーに一つお願い事をしました。
その内容は自分をジョーカーとして紹介してくれ、という話でした。

番組が始まりアーサーとマレーは談笑後、アーサーはジョークを言います。
しかし、マレーはアーサーのジョークを笑えないと言ってしまいました。
アーサーはその後、地下鉄での殺人を告白し自分の信じていたマレーに批判されてしまいます。

そして、アーサーは言います。
「お前らは俺たちのような人間にこう言う、狼にはなれない大人しくしてろ」と

そして最後、アーサーはマレーフランクリンを撃ち殺します。
カメラに向かってマレーの決め台詞「That's life!(それが人生!)」を真似しようとした瞬間に放送は中断され、駆け付けた警察に取り押さえられました。

そしてジョーカーとなったアーサーはパトカーで暴動する市民を見ます。
彼が世間との一体感や共感を初めて感じたのは皮肉にも殺人という行いによってでした。
貧富の差で苦しむゴッサムシティの人々にとって大企業の高給取りのウェイン社の社員を殺したのは傲慢な金持ちを成敗したように見え人々はアーサーの行いを支持したのです。

-まとめ-

ジョーカーとなったアーサーが最後、精神科医に対してアーサーは、「君には理解できないさ」と言い、フランク・シナトラのThat's Lifeを口ずさんだ場面はこの作品の全体像を綺麗に魅せたシーンでした。

この作品の素晴らしい所はアーサーに感情輸入が出来る場面と逆に一歩離れて引いてしまう場面の押し引きのバランスがちゃんと上手くアーサーという人物を捉えやすく描写されている所です。

社会現象にもなった過激な犯罪者になる男の物語、次のジョーカー:フォリ・ア・ドゥを見たい方はぜひ見た方が良い作品だと思います!



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