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4年以上毎日カレーを食べ続けた夫がスプーンを置いた日 #01

私の夫は約4年4ヶ月毎日1食以上カレーを食べ続けている、いや、食べ続けていた。

週明けの月曜日、仕事が立て込んでいたのかピリピリとした緊張感のある事務所の中で夫が口を開いた。


「ご報告があります。僕は昨日、カレーを食べていません。」


毎日カレーを食べ続けるようになってから、1,582日目の2020年6月6日(土)をもって、夫は毎日連続でカレーを食べ続けることに4年4ヶ月ピッタリで自ら終止符を打った。

カレーを食べていない報告を受け、「おお、それは由々しき事態じゃん…!!」と返答したところ、夫は私の動揺とは裏腹に「これは啓示だと思うんだよね」と清々しい表情をしていた。


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夫はシンデレラのように「その国の現地時間午前0時までに必ず1食以上カレーを食べる」という独自ルールを自ら設定し、海外旅行での航空機遅延による綱渡り的なトランジット中や、移動や打ち合わせが立て続いてご飯を食べる暇なんかない!という時でもレトルトカレーを持ち歩き、常温のレトルトカレーをストローで吸引したり、何がなんでも己の課したルールを遵守していた。


誰も見ていないし(厳密には私が見ているが)、1日食べなかったからって誰にも叱責されるわけでもないのに、意地でも己が定めたルールに忠実だった夫。

そんな夫が、4年以上も続けた習慣を急にやめたのだ。


その理由は「カレー研究に没頭していたから」である。


め

え? ウソでしょ?


カレー探訪を始め、カレーをもっと知りたいという思いからカレーを作るようになり、少しずつイベント企画や出店などをするうちに、世界の料理やレシピについて書籍を読み漁り、Netflixで世界の料理や文化の番組を観たり、日本の伝統文化や発酵文化を掘っていった夫。

この2ヶ月のコロナ禍中に外食を控えて会社のキッチンでカレーを作りまくったことが決定打になり、カレーにもっと多角的なアプローチをしたくなったようだ。


作り手側になると、鑑賞側だった時よりも感じ方や見えてくるものが格段に変わるし、それが ”食” の場合は食材や調理方法だけでなく各国の気温や地形や文化まで関係してくるので、掘れば掘るほどあれやこれやと発見が続いて知的好奇心が麻薬みたいに強烈に刺激されて、どんどん沼にハマっていく。

夫は一旦疑問に思うと、とても純粋にどっぷりと掘りまくる性質なので、新しい事実が次から次へと湧き出てくる料理への興味が抑えきれなくなったようだ。

とはいえ、何かを毎日続けるということは大変なことだし、いろんなお店のカレーを食べられるように同じ店舗にはなるべく行かないように気を遣っていた4年5ヶ月の蓄積をスパッと止めるのは、なかなか勇気がいることのような気がしたが、夫は何かが吹っ切れたようなスッキリとした顔をしていた。


男は建設すべきものも、破壊すべきものもなくなると、非常に不幸を感じるものである。

[E・アラン、エミール=オーギュスト・シャルティエ](19~20世紀フランスの哲学者、1868~1951)「幸福語録」より


毎日のカレー探訪を続けて、もう東京のカレー店はほぼ堪能した。あとは次々生まれる新店を見つけて突撃する…ということをしていても、もう建設している感覚ではなく、95%完成している建物にちょいちょいテコ入れをしている気分だとしたら、そりゃあ面白くないよね。

ついに、夫は今までの主に鑑賞者側だったカレー探訪期間を破壊し、次の作り手側の自分を建設していく局面を迎えたことを悟って、決めたのだ。


年齢を重ねると変化が煩わしくなり、変化への対応力も弱くなっていくし、新しいことを始めることが億劫になっていくものだと思っていたけど、夫を見ていると新しいことを始めることがめっちゃ楽しそうだし、ワクワクが全身から湧き出ていて幸せそう。ちょっと羨ましいぞ。

毎日連続カレーを止めても、カレーをもっと深堀りすることが目的だから結局カレーは食べ続けるし、私はこれからもブンブン振り回されるわけですけれども、今後の行方も程よい距離感で生ぬるく見守り続けて応援していく所存です。


そして私は今後、毎日カレーを食べ続けていなかったのに一緒にいただけで影響されて変化したことや困ったことなどを、夫の毎日連続カレーの終止符を皮切りに書き記していこうと思う。


ちなみに、私は夫と別行動の際にカレーを見つけたら写真に撮って共有することが癖になっているが毎日連続カレーをやめた途端、見事に一蹴された。

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なんだか、私も習慣になっていたので子供が巣立ってしまったような寂しさがある…ような、ないような。


そして、夫は今ヴィーガン食を体験中。

今日は「ねぇねぇ日曜日さ、コオロギラーメン食べに行かない?」って誘われた。
絶対行くわけないじゃん。
夫を応援・サポートしつつも自分の意思は絶対に曲げないのも一緒に暮らしていく秘訣だと思う。


緊急事態宣言解除も解除され、東京都の休業要請もかなり緩和されて、今まで休業を余儀なくされていたカレー屋さんも徐々に店内での食事ができるようになっていくと思うので、夫がFacebookで発信していた1,582日間分のカレー探訪軌跡をWEBサイトにまとめました。

これ見ていろんなカレー屋さんに行って、自分好みのカレー屋さんを見つけて欲しい。


>> 毎日連続でいろんなカレー屋を探訪した夫のカレー屋レビュー

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