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探究学習プログラム #04 -東葛飾高等学校 手を使わない玉入れプロジェクト-

手を使わない玉入れプロジェクトとは

手を使わない玉入れプロジェクトとは、制限時間内に、手を使わずにカゴに入れた玉の数を競い合うプログラムです。チーム対抗で直接玉に手を触れずに、カゴに玉を多く入れる方法を考え、装置をつくって試しながら進めます。全4回のプログラムを通じて、答えがわからないことに対してつくって試しながら新たな手がかりを得る感覚を掴むことを、目的としています。

1回目と2回目は、チームごとに手を使わずに玉を入れるアイデアを考え、試行錯誤を繰り返しながら、答えのない問いにチームで挑みます。3回目は、クラス内でのチーム対抗戦を行い、時間内に多くの玉を入れたチームがクラス代表として選出されます。そして、4回目の授業でクラス対抗戦に挑みます。

4回目クラス対抗戦の様子
制作されたプロトタイプ

東葛飾高等学校の淺岡先生へのインタビュー

千葉県立東葛飾高等学校の探究学習担当、淺岡先生にお話をお伺いしました。

導入の経緯

Q.手を使わない玉入れプロジェクトの導入経緯を教えてください。

これまでの生徒の学習状況を見ていく中で、いきなり長期的なプログラムから始めるのではなく、まずは短期間で探究学習の流れをぐるっと体感した方が良いと考えるようになりました。そこでCURIO SCHOOLの手を使わない玉入れを取り入れることに決めました。

Q.なぜ、短期間で探究学習の流れを体感してほしいと考えたのですか。

これまでの探究学習プログラムは10〜11か月間かけて通年で行うプログラムでした。そのため、最初の1、2ヶ月でつまずいてしまった生徒は、その後の8〜9ヶ月が身にならないものになっている実態がありました。手を使わない玉入れを導入したのは、短期的に成果を出して探究の面白さや考え方を理解してもらいたかったからです。

Q.なぜ、探究学習の最初につまづいてしまうかもしれないと考えたのですか。

本校ではずっと自由研究という形で探究学習に取り組んでいました。現在は1年生で探究学習の基礎を固めて、2〜3年生で自由研究をします。自由研究は生徒が興味関心のあるテーマを1つ選び、自分の力で研究を進めていきます。中にはうまくテーマ設定ができずに、1年を棒に振ってしまう生徒もいます。短期的でも探究の仕方を理解する機会があれば、今後の自由研究に繋がると考えました。

Q.手を使わない玉入れプロジェクトを知った経緯を教えてください。

他の教員にMONO-COTO INNOVATION(弊社主催の中高生デザイン思考コンテスト)の募集要項を見せてもらい、CURIO SCHOOLを知りました。そしてプログラムを色々と調べていくうちに、玉入れをテーマに短期的に探究学習ができるプログラムがあることを知り、紹介してもらいました。

プログラムを導入してみて

Q.手を使わない玉入れを導入した成果はありますか。

生徒が短期間で探究の面白さを知り、探究学習へのモチベーションを上げるという目的は達成できたと思います。授業回ごとのプログラムスライド資料を各クラス担任が使い、生徒に指示を出せたことがよかったです。プログラムやパワーポイント資料が作られすぎていないので、教師がカスタマイズでき、生徒も余白をしっかりと考えながら、プログラムを進められました。

Q.パワーポイントの資料が作られすぎてない点とは、具体的にどのような使いやすさにつながるのでしょうか。

作られすぎているというのは、プログラムとして型がカチッと決まっているものです。資料を見せ方や時間配分まで決まっていると、状況に応じた流動性のある指導ができなくなってしまいます。手を使わない玉入れの資料は手を加えられる点が良かったです。時間配分やパワーポイントの文面を少し変えている先生もいらっしゃいました。私も状況に合わせて少し変更を加えました。例えば4回目のクラス代表による学年対抗戦のスライドですね。本校では担任特別賞という賞を新たに作りました。私が「担任特別賞発表」といった形で生徒が作った作品をスライドで表示できるように変更しました。

Q.担任特別賞を作られた経緯を教えてください。

完全に私の思いつきです(笑)クラス対抗戦で代表に選ばれるのは各クラス1チームだけです。本校は1学年8クラスなので、8チームしか表に出ることができません。しかし、クラス代表決定戦で敗れた中にもクリイティブに富んだチームがあると考え、担任特別賞を作ることで表に出すようにしました。

追加された担任特別賞のスライド
担任特別賞に選ばれたチームの紹介

Q.プログラムの中で難しいと感じられたところは、ありましたか。

ルールの設定が非常に難しかったです。手を使わないという前提条件がありますが、全く手を使わないわけにもいかないため、どこまでが「手を使う」に該当するのかを決めるのが困難でした。逆に禁止事項を増やしてしまうと、創造性が失われてしまうので、ルールと創造性のバランスが非常に難しかったですね。スケジュール的にも厳しい点がありました。手を使わない玉入れは全4回のプログラムで、1回目、2回目でプロトタイプを制作して、3回目でクラス代表戦、4回目では代表によるクラス対抗戦でした。授業内では足りず、どうしても時間外の活動に頼らざるを得ない部分がありました。私としては、時間外でどれだけやれるかという点も大事だと考えているので、時間外の活動には賛成です。本校の場合は、プログラムを行った5月、6月がスポーツ祭や合唱祭などの学校行事と重なっていたので、手を使わない玉入れのために時間を作るのが難しかったです。

Q.どのようなルールの策定をされましたか。

基本ルールと補足ルールの2つに分けて作成しました。基本ルールでは直接手を使うことと同等の方法とジャンプして玉を入れることを禁止しました。補足ルールでは、今回の授業ではうまくルール化ができていなかった点を改めて規定しました。例えば、「グループで1つのプロトタイプを作る」というルールです。今回はうまく制限できず、プロトタイプを1人1つ作って、4人でそれぞれが操作して玉入れをしていたグループもありました。教員の中から少し面白みに欠けるとご指摘があったので、来年度はグループで1つのプロトタイプを作るという補足ルールを追加しました。やはり制限しすぎると、クリエイティブではなくなってしまうので、これが限界の制限だと思います。

制定されたルール

Q.時間外の活動について生徒さんや先生方はどう思われましたか。

生徒によって取り組みに差が出てきてしまうのは仕方がありません。やりたい子はいくらでもやり、あまり得意でなく好きではない子はできるだけやらないというのは、どのプログラムでも、どこの学校でも同じだと考えています。本校の場合は、時間外で活動できる時間が非常に限られています。本校は定時制も併設されており、A〜E組は4時50分頃には教室を綺麗にして完全撤去しなければなりません。F~H組は定時制クラスで教室を使用していないので、A〜E組とF〜H組間で放課後に使用できる時間に差が生まれてしまいました。時間外の活動をやりたいけどできない、という状況が本校の場合はありましたね。教員は時間外で探究学習をやることに対しては肯定的でした。やりたいならどんどんやりなさいと考えられている先生方ばかりいらっしゃいました。

Q.プログラムを実施して、生徒に変化はありましたか。

普段の授業中では見られない生徒の姿をたくさん見ることができました。探究学習と教科学習の大きな違いは明確な答えがないところです。もちろん、国語や社会でも明確な答えがないこともありますが、自分たちの発想に任せて、チームで何かを作り上げていくことはあまりない経験です。生徒からは自分にはない発想を持っている人やチームから、いい刺激をもらえたという話も聞きました。普段から授業でグループワークをすることがありますが、1つの明確な発問に対してチームで答えを探していくという学びです。答えがない探究学習とは大きく違います。

これからの探究活動

Q.今後の探究活動の展望を教えてください。

探究学習を中学校から高校、大学もしくは社会人になるところまで繋げたいです。 昔のように自由研究を生徒主体のものへと発展させていきたいとも考えています。高校1年生の時に探究の面白さや探究のやり方などの素地を身につけ、2〜3年生で自分のやりたいテーマについて研究してしていくというカリキュラムに変えたのは大きな改革だと思います。 

課題としては、ビジネスライクな探究学習プログラムにどのようにアカデミックな部分を融合させていくかという点です。CURIO SCHOOLの玉入れのプロジェクトだけではなく、企業提供プログラムはどちらかというとビジネスライクな印象を受けます。ビジネスライクなプログラムにアカデミックな面を融合させることが今後の課題の1つになるのではないかと思っています。現在は、企業プログラムから本校の自由研究への接続を図っています。自由研究は自分でテーマを決めて研究するので、1〜2月以降は今まで取り組んできた探究学習の仕方を元に、テーマ決めから研究まで繋げられるような授業をしていく予定です。

(インタビュー・文章:大門)

探究プログラムやインタビューの詳細は、弊社担当までお問い合わせください。
・プログラム:https://mono-coto-program.com/
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・担当: s-daimon@curioschool.com(大門)

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