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守りのDX vs 攻めのDX〜新しい価値創造のためのDXの実態と本質とは〜

「DXに長年取り組んでいるがなかなか組織に定着しない」2023年には約3兆円の市場規模が見込まれ、5Gの普及やデジタル庁の発足などの潮流により一層注目されている「DX」ですが、現場の推進者の多くは「なかなか社内に定着しない」とお悩みのことでしょう。

残念ながら、DXは誤解されやすい単語であり、推進者が適切にDXについて理解していなければ、現場の理解は得られず定着もしません。そこで、本記事ではDXの基本を他社の成功事例を交えながら解説します。DXを正しく理解して、自社に適したやり方で推進して行きましょう。

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1.現場で起こりがちな3つの「DXあるある」

5Gの普及によるIT活用の本格化、デジタル庁発足で国策としてデジタル化を推進、コロナ禍によるテレワークの促進など、昨今の世の中はデジタルを活用する前提で物事が進んでいます。こうした潮流のなかでデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が注目されるのはもはや必然の流れでしょう。

しかし、単に「DX」といっても企業がDXに取り組む際には多くの落とし穴があります。以下では、DXを推進する現場で起こりがちなDXあるあるをご紹介します。

DXあるある:業務システムを導入すればDX推進は完璧!
事例:ある日、IT部門にトップダウンで「DX推進」がミッションとして課せられ、現場の担当者はコスト削減・業務効率化を目指して、ERP、CRM、SFAなどの業務システムの導入に躍起になる。
担当者の本音:「業務システムを導入して既存業務の効率化はできたけど、新しい事業の創造につながっているのだろうか?」

DXあるある:最新の技術を使うことがDXになる!
事例:AI、IoT、ドローン、5Gなど世間で話題の最新技術を使うことが重要で、その先にあるビジネス設計などにたどりついていない。
担当者の本音:「技術的なノウハウは日々蓄積されているけれど、会社の事業に貢献できているかと尋ねられると自信がない……」

DXあるある:成功事例ができたからDXは達成した!
事例:社内の優秀な人が新規アプリやサービスを立ち上げて、既存事業には及ばないものの売上げが立っており、新規事業として成功しているように見える。
担当者の本音:「これまでになかった新規事業が立ち上がり、ある程度は成功した。社内の一部では変革が起きたが、既存事業や組織全体に大きな影響があったかどうかは不明」

もしあなたがDX推進の担当者でしたら、上記のDXあるあるに思い当たる節があるのではないでしょうか。こうした「DXあるある」を対策するためにも、DXについて正しく理解する必要があります。

2. これって本当にDX?DXの正しい定義を解説

2018年に公開された経済産業省の「DX推進ガイドライン」の定義にも書かれている通り、DXとは「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革する」活動を指します。

しかし、こうした定義を自社の事業や文化に適用させ、現場に落とし込むにはどうすればよいのでしょうか。「DX」を因数分解することで、そのヒントを探っていきましょう。

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2-1.DXは2種類に分けられる「守りのDXと攻めのDX」

DXの活動は、守りと攻めの2つに大分類できます。そこからさらに、①IT化②デジタイゼーション③デジタライゼーション④デジタルトランスフォーメーションの4つの分類ができます。

守りのDXとは、デジタルによって既存業務のプロセスを変革する活動を指し、①IT化 ②デジタイゼーションが含まれます。業務の効率化やコスト削減を目指して、MAとSFAなどの業務システムを導入し顧客情報の管理を自動化することで、業務の効率化を目指します。

攻めのDXとは、既存業務のデジタル化により顧客体験を革新したり、新産業を生み出す活動です。③デジタライゼーションは、顧客体験の革新が主目的です。たとえば、インターネット通販では、顧客の購買データを蓄積することで、リピート来店した顧客にパーソナライズした提案ができます。実店舗ではできない顧客体験の創出は、まさにデジタライセージョンの領域です。

デジタライゼーションの先にあるのが「デジタルトランスフォーメーション」です。デジタライゼーションによって既存の顧客体験を革新する新規事業を創出し、社会的な影響力を持たせるところまで成長させ、新しい産業を生み出す活動を指します。

世の中では「DX推進」が叫ばれていますが、真のDXを企業が実現するには既存プロセスの効率化ではなく、新しい価値創造を目的とする「攻めのDX」に注目する必要があります。

事例紹介:カメラに起きたDX事例

『守りのDX vs 攻めのDX 』徹底解説書.pptx (2)

銀盤カメラやフィルムカメラは、「デジタイゼーション」によってデジタルカメラへと革新されました。デジタルカメラの誕生とインターネットの普及によって人びとは写真や動画をシェアするようになり、体験の革新的イノベーションである「デジタライゼーション」が起きました。

人びとの行動の変化と通信速度技術の向上があいまったことで、YouTuber、Instagrammer、TikTokerという新産業が生まれ、既存産業を破壊する「デジタルトランスフォーメーション」が起きました。

3. DX推進を成功させるために知っておきたいポイントと「BX」の考え方

自社の既存事業や組織体制に適した方法で、DX推進を成功させるためにはどうすればよいのでしょうか。冒頭の「DXあるある」でご紹介した事例を用いて、DX推進を成功させるためのチェックポイントをご紹介します。

DX推進のチェックポイント:既存業務の効率化に終始していませんか?

DX推進のために業務システムを導入することは決して悪いことではありません。進め方としては間違っておらず、むしろ、DXを推進するための前提条件として業務システムの導入と整備は必須事項です。しかし、業務システムの導入は「プロセス改善に留まる」という点には注意が必要です。業務システムによるDXは「デジタイゼーション」の部分しかカバーできないのです。

この特性を踏まえて、さらに一歩踏み込んだDX推進を行うには、IT部門とビジネス部門の風通しをよくしましょう。DXの主担当となるIT部門の人材とビジネス部門のメンバーが対等に会話をして連携することで、業務システムの導入が「新しい顧客体験の創造」に向けた足掛かりができるでしょう。

DX推進のチェックポイント:その技術を使うことで顧客の何の課題が解決できますか?

AIやIoTなど、最新の技術をつかう際に重要なのは「この技術を使うことで、顧客の何の課題を解決できるのか」という視点です。その技術を使うことで顧客課題を解決し、既存事業を変革できるアイデアは生まれますか?

最新技術を活用することで起こる、ビジネス的なインパクトを見通すことで、デジタライゼーションの先にある「デジタルトランスフォーメーション」に向けて正しく前進できるでしょう。

DX推進のチェックポイント:新規事業で得た知見を既存事業に還元できていますか?

立ち上げた新規事業が成功して、顧客満足度の向上や収益確保ができているならば、DX推進の一歩として素晴らしい流れができています。ここで意識したいのが「その新規事業が既存事業や企業の文化などに影響を及ぼしたのか」という問いです。

新規事業で得た知見や成功体験は既存事業にとっても有益です。会社のDX推進を局所的な成果ではなく、継続的な成果とするためにも、既存事業へのDX展開は必須です。そのためにも視座をあげた組織的な探索が必要になるでしょう。

DX推進のチェックポイント:そもそも必要だったのはDXではなく「ビジネストランスフォーメーション(BX)」ではありませんか?

既存事業をデジタル技術によって革新したは良いものの、思ったような成果が出ていないと感じるとき、本当に必要なのは「DX」ではなく、ビジネストランスフォーメーション(以下、BX)の考え方かもしれません。

顧客は何を求めているのか?市場の未来はどうなっているの?会社はどこに向かうべきか?こうしたまだ見ぬ未来に思いを馳せ、解決策を探索する活動がBXです。その探索活動のための手段として「デジタル」を活用することがDXです。実際に昨今のビジネストレンドである「OO as a Service」「D2C」「サブスクリプションモデル」「サーキュラーエコノミー」の共通点として「BX」が隠れています。これらは既存のビジネスを革新するBXの流れであり、デジタル技術を活用して既存事業を革新する「攻めのDX」でもある点を理解しておきましょう。

3-1.事例紹介:Netflixとウォークマンの歴史からみるBX事例

デジタル技術を活用し、顧客や市場のインサイトを得て、既存事業を革新する新規産業の創出に成功した事例と失敗した事例をご紹介します。

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BXに成功したNetflix

Netflixは、もともと「DVDレンタル」のサービスを提供していました。企業に蓄積された映画を扱う知見と「いつでも・どこでも・視聴したい」という顧客のニーズを掛け合わせたことで、「映画をDVDで発送して顧客のもとに届ける」といった既存事業を革新する方法を思いつきました。それが「オンラインで映画を顧客に配信する」という提供方法です。

同社では既存のDVDレンタル事業がうまくいっていたため、社内からは「やらなくてもよいのではないか」という声もあがりましたが、それらのハードルを乗り越えたことで、今やオンラインサブスクリプションの動画配信サービスを台頭する存在となりました。

BXに失敗したウォークマン

世界初の小型音楽再生機として開発されたソニーのウォークマンは、販売当時の最先端の技術をもちいて世界中で大ヒットになりました。顧客のニーズである「いつでも・どこでも・好きな音楽を聞きたい」というニーズを発掘したソニーは、ハードディスクを用いることで、MDを取り替えずに、電波配信(ネットを介した音楽配信)ができる未来を予見していました。

しかし、当時のソニーはMDによって莫大な収益を得ていたため、社内からは「ハードディスクを用いることはMDの収益を失うこと」という意味合いに捉えられ、大反発が起きました。その間にハードディスクを搭載したiPodが誕生し、iPhoneによってネット接続による音楽配信という新規産業が誕生しました。

以上の成功・失敗事例から学べる点としては大きく3つあります。1つは、既存事業の革新には顧客や市場のニーズの探索が欠かせない点です。2つ目に、既存事業の革新には最新の技術が必要になる点です。3つ目に、新規事業を成功させ新規産業の創出へとつなげるためには組織全体の視座をあげる活動が必須であるという点です。

4. 既存事業を革新する「攻めのDX」実現のヒント

顧客体験を革新し、新しい産業を創出する「攻めのDX」を実現するには、デジタル技術の活用が欠かせません。加えて、製品を通じて顧客に「体験的・情緒的な価値」を提供するという視点も重要です。

そこで、デジタル技術を活用して顧客と継続的な接点を持ち、体験的・情緒的な価値の提供に成功した企業の事例をご紹介します。

事例:Lightning as a Service: 提供価値の向上を目指すフィリップス

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フィリップス社のコアビジネスは「照明器具を売る」ことですが、同社では顧客が照明器具を買う前後にどのような体験をするのかに注目をしました。IoT技術を活用した新サービスの立ち上げにより、既存の照明器具の売り切り型のビジネスモデルから、LED電球の導入後の電力消費削減を謳ったサブスクリプション型のビジネスモデルを持った新規事業を創出できました。「Signify」と呼ばれる子会社を立ち上げ、顧客に提供できる価値の幅を拡げることができました。

事例:Homing as a Service: Daiwa Living x 東京電力パワーグリッド x plusbennly

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国内の事例として、Daiwa Living・東京電力パワーグリッド・NECレノボが「企業の垣根を超えてデータを活用し合いながらサービス提供を行う」というコンセプトでHoming as a Serviceの新規事業を創出しました。

Daiwa Livingのコアビジネスは「住宅を借りる」ですが、その前後の顧客の生活や「より良い住環境で生活したい」というニーズに着目しました。そして、NECレノボと技術提携して、スマートスピーカーを活用して家電製品の自動運用と制御による住環境の最適化を実現。物件の価値を向上しました。入居者は生活データを提供することで、消費財・家電の最適な買い替えタイミングでメーカーに接続されます。入居者の方々への販売額は月間5億円に伸びています。

4-1.既存事業を革新する「攻めのDX」のためのヒントの見つけ方

自社のコアビジネスを活かしながら、顧客により良い体験を提供するためには、既存事業の入念な探索と深化が欠かせません。こうした活動を地道に繰り返すことで、新規事業を生み出し、社会的なインパクトの大きいイノベーションにより、本当のDXを成功させられます。

既存事業や産業を革新するDXの実現には、顧客・市場・企業が今後どのように変わっていくのか予測し、社会や消費者の行動変容にも視野を広げる必要があります。攻めのDXは、幅広い知識と経験が必要になることから、自社ですべて完結させずに、外部の専門家の力を適宜活用することで、着実に成功に向けて進めることができるでしょう。

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