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紐で綴じたら『日記:2024.2.16』

今日の私は大忙し。

朝から夕方、印刷から郵送までの工程を1日でこなした。しかもシャワーまで入った。
追い込まれてからしかやらない性格とはこの事だ。今日の行動力は尋常ではなかった。


初めて紐綴じをした。

原稿は、表紙・あらすじ・登場人物・本編を入れて117枚。自宅のコピー機がコトコトと唸り、私の為に印刷を引き受けてくれた。

見たこともない枚数だった。

卒業論文も、私のはもっと少なかった気がする。これだけの量があるのは、大学のコピー機の下にある両面真っ白な予備のコピー用紙だけだ。

全てに字が書いてある紙。小さなパンチで少しずつ開けて、ページを見ながら並べて、表紙を付けて、ようやく紐で綴じられる。

紐綴じの方法をYouTubeで観ながら倣う。
今までのコンクールは郵送では無くデータ送信だったし、学生時代にも紐綴じの経験はなかった。

私は数時間前に買ってきた紐綴じ用の紐を取り出す。この紐20本入だったのだが、あと19本、一生かけて使い切れるだろうかと不安になった。

穴に通してキツく縛る。
緩く重ねられていた用紙達が怯えて縮こまった。固くなった紐周りの部分。私の作品が1つにまとまって作品になったのを、目に見える形で表現することが出来たのだと感動する。

写真を撮った。
初めて一人で書き、印刷して、紐で綴じたものだ。愛らしく、誇らしく、勇ましく見えた。

ずっしりとした重みのあるシナリオ。117枚分の私の思いがぐっと入っていると思うと、より一層達成感を味わえた。


物語を作ること約1年が経った。
SNSでのいいねやコメントが来る度、自分の作品が世をじわじわと自分色に染めている感覚だった。それが嬉しく、夢を追い掛ける糧、生きる糧になっていた。

だが今日、原稿を印刷して、紐綴じをした。

評価はまだ貰えない。必ずしも好評価が来るとは限らない。もしかしたら、あらすじの時点で面白ないと思われて、割と大きめなゴミ箱に縦に丸められて捨てられるかもしれない。

でも、作品は完成した。私の今出せる全力を、パソコンに映る縦書きの原稿に込めた。

郵送の為に歩いた雪道だって、小さい穴あけパンチで小刻みに開けていた時間だって、私にとっては作品を生み出す為の必要な時間で、大切な経験で、楽しい思い出だ。

「完成した原稿」を両手で掲げる。
私は物語を1つ完結させることが出来たのだと、大きめに打ったタイトルが告げた。


私のやる気はさらに高まった。

まだまだ待ち受けるたくさんのコンクール。そして、毎日の日記とSNS投稿。

私は全てが好きだし、これだけで暮らしていけたらこれ以上幸せなことはない。
でも現実は甘くない。ただ原稿を印刷しただけで飛び跳ねている場合では無い。私には常に時間が無いのだ。


原稿用紙を紐で綴じるように、気を引き締めなくてはいけない。

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