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タクシーがいない『2023.11.25』
「ドタキャンくらったんだけど、明日の夕方ご飯どう?」
大学時代のバイトの先輩から連絡があった。誘い方が可哀想過ぎる。ご飯に行った。
先輩と家が近いから、いつも家近くの居酒屋に行っていたが、今日はどうしても行きたいお店が街にあるそうで、バスを使って外に出た。
昨日は雪が降っていた。そして雨と雷も降っていた。おかげで地面はスケートリンク。それも、ガッタガタの整備前のスケート場だ。
子どもやお年寄りだけではなく、大人や外国人観光客、そして私の先輩もツルツルピカピカの地面をビビりながら進んでいた。
仕事を辞めてから先輩と飲んだのは二回目。
その時の日記がこちら↓
私より十個も歳上の先輩だが、先輩風を吹かせることも無ければ、気を遣えと強制されることもない。楽しい雰囲気を私のような後輩に作ってくれる人だ。
今日も私の話をうんうんと聞いて、共通の趣味の話をして、たくさん笑って、心も体も満たされた。
寒くて凍えそうな夜。私と先輩はタクシー乗り場まで向かった。バスがまだ数本残っていても、アルコールが入れば絶対にバスには乗らない先輩。いつものことなので、ヒールで雪と氷を踏み締める先輩の隣を歩く。
タクシーがいない。
どこを探してもいない。
「ねえタクシーいないんだけど!!!!」
そこら辺の酔っ払いが叫ぶ程あたり全員が凍えながらタクシーを探すが、祝日のせいか、雪で車が動かしにくいのか、タクシーは一向に来ない。
諦めた私達はバス乗り場でバスを待つことにした。
バスはあと十〜十五分程で来る予定だ。
だがアルコールの入った体は冷え込むのが早い。バス停まで歩いたせいで尚更身体が冷えて、口も上手く動かせない。
「無駄な時間だ……」
先輩が言った。
いつもタクシーに乗る先輩にとっては、バスを待つこととタクシーに乗れないことのダブルパンチなんだろう。
任せなよ。
私はそう思って、話を始めた。
私は空き時間を有効活用するのが得意だ。何も無くても話題を出すし、相手がつまらなくならないように話すことも出来る。
私にとって無駄な時間は無いのだ。
先輩と私の共通の趣味の話をした。
これのこんな部分が良くて、この前インスタで探したんですよ、とスマホを二人で見る。
私もその画像持ってる、と先輩もスマホを出して見る。
今度これが欲しくて、こっちの違うバージョンは持ってるんですけど、と話を広げる。
お金って無いのに無くなっていくって話をしたり。
バスが来た。
「さ、乗りますか」
私がバスの方を向き伝えた。
「時間潰すの上手いよね」
今日のハイライトだった。
誰にも言われたことなかった。嬉しかった。
誰かが私といる時、つまらないなと感じさせることに申し訳なさを感じる。だから笑わせたり、話題を出したり、話を聞いたりする。好きな人以外にやる時は疲れるけど、基本はそのスタンスで人と関わる。相手が楽しければ、自分も楽しいから。
でもそれに気付いた人なんていない。先輩はただの感想を言っただけなのだろうけど、私にとっては最高の褒め言葉であった。
人と関わる時は、どれだけ仲が良くても気を遣う必要があると思っている。それは、話の内容や話す量や口調なども含まれている。それを無意識にすることで、人と上手くコミュニケーションが取れているんだと思う。
自分の無意識を、人に褒められるほど嬉しいことはない。褒められるということは、これからも続けていい仕草だということだ。
開けっぴろげにすると、お節介だと言われるから知り合いには言わないでおくけど、私はこれからも人に気を遣える人間でありたいと思った。
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