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タイルを踏み締めて『日記:2024.3.2』

今日は何歩だった?
母と夜に話す話題の1つであった。


入社した4月からもう1年が経とうとしている。

接客業をしていた私は、4月から辞めるまでずっと店内を走り回る生活をしていた。

階段を上って、下って、上って、立ち止まってはお客さんか上司に呼ばれて対応して、上って、下って。フロア自体も大きいし、力仕事もやっていた。今思えば、精神的なストレスより体力の限界が近かったのかもしれない。

仕事中はスマホを持ち歩くことを義務付けられていた。走り回る私と一緒に行動していたスマホ。彼は私の仕事量を測っていた。毎日数百歩歩いて、いや数万歩走って、頑張って働いていた。

その時に比べて、歩数が1/100くらいになっている。


今の時代は進歩している。スマホをただ持ち歩くだけで、私のその日の歩数が分かるようになっていた。何かしら設定をしたり、他の場所を開けばもっと有効活用出来るのかもしれないけれど、歩数が知れるというのは、私も、母も、嬉しかった。

それを知ってから、母とその日の歩数を確認するようになっていた。

母が買い物に出掛け、私が自宅にいる日は母が私の20倍くらい歩いていた。母が家にいる日に私が友達と遊びに行くと、母の30倍歩いていた時もあった。

歩数の話をして、今日はこれがあったからこんなに歩いたんだ。スマホを忘れて数歩しか歩いていないことになってしまった、とか。歩数を話題として今日の振り返りをすることが出来た。

歩いた道や理由や時間は、私の今日を語る糧になっていた。


今日、家族でスーパーに行った時に気付いたことがあった。
最近歩いていない。運動をしていない、と。

部屋に篭ってパソコンに向き合う時間は大切だし大好きだが、学生時代や社会人時代は通勤通学で歩数を稼いでいたし、何も考えずとも必要最低限の運動は軽々とこなしていた。
だが今は、人間としての運動を何もしていなく、人としての機能も生かせていなかった。

だからスーパーにいる間、たくさん歩いてみた。せっかく外に出たのだから、動かなければ勿体無い気がした。家で出来ないことを、今しようと思った。

小さな店内を満遍なく1周すると約800歩。5周したら4000歩になる。目の前にきちんとした結果が見えると嬉しくて、親が買い物を終えるまで足を止めずに歩き続けた。

歩いている間、私は色々なことを考えた。ずっと前に応募したコンクールの結果、これからの夢。私が目指すべき、なりたい像というのはなんなんだろう。と。

昔から妄想を膨らませるのが好きだった。
こんな自分になれたらいいなと思うものを妄想しては、それになりきって誰もいない所で話していた。私はひとりっ子だから、家にも1人の空間はたくさん存在した。

歩いている時、そんなことを考えた。こんな自分になれていたらいいなと思った。ただ歩いている時の考え事は、何もやる気がない暇な時間とは違って、病んでしまうような考えが出てこなくてとても良い。何かを考える時は、体を動かしながらやろうと決めた。

私はスーパーのタイルの上を歩いている時、自分もまだ知らない自分を目指して歩いている気がした。

今はまだ地元のスーパーの中だけど、いつかこのタイルが、自分にしか渡れない綱になるかもしれないし、茨の道になるかもしれない。


それでも私は歩きたいと思った。私の知らない道に進みたいと思った。

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