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自慢の友達になりたい『2023.11.29』

「ちょっと可愛くなろうかなって思うさ」
「へー、良いんじゃない?」

小学校からの友達に告げた。


成人を過ぎると、昼から会える友達は少なくなった。話の内容が昼には似合わなかったり、自分が自分として機能する時間が夜しかなかったり、休みの日にわざわざ午前中に会いたい人が少ないからだ。夜に会える自由さを与えられた大人達は、夜に会うことで大人だと実感する。

だがこの子と会う時は、太陽が存在を明らかにしてから夕日に出会うまでの時間を体感出来る。私は彼女と過ごすそんな空間が好きだ。


知人に、勿体ないと言われたことがある。
若いのに勿体ない、もっと可愛くなれるのにって、言われたことがある。しかもそんなに前の話ではなくて、直近で。

失礼だね何それ、と言われたが、そうかもしれないなとも思った。
でも失礼なのかもな、とも思った。

だから自分で変わろうと思った。
私の手にかかればちょちょいのちょいだと言われる前に、自分が自分で変わってやろうと思った。

でもこの世には「プロ」というものが存在する。爪を綺麗に彩ったり、髪を自由自在に扱えたり、ツボを押すだけで健康にさせることが出来たり、体のパーツを整えることが出来たりする。自力で出来ないものを、学び実践し技術として身に付けている人が施してくれる世界。その人達が存在する理由は、素人では出来ないことがあるからだ。

私はまだまだ子どもなので、悔しいと思ってしまう。こんなもんかと思って生きてきた自分は、自力で変化しようと思ったことがない。自力での限界をまだ感じていないからだ。

自分で研究して、自分に合ったものを食べて、動いて、着て、施す。まだ出来ていないと思う。

素人の限界を知ってから、動き出したい。


「じゃあ私も可愛くなるね」
もう既に可愛い友達がそう話す。

ダメダメこれ以上可愛くなったら。
そう止める。

彼女は小学校の頃から、私のことを可愛いと言い続けてくれている。何も施されていない私のことを。

「でもねえ、本当に可愛くなったなあと思うんだよね」

彼女がいつもくれるその言葉に救われる。そんな彼女の自慢になりたいと思った。

「私が街中を歩いてて、あの子可愛いねってなったら、友達として誇らしく感じるよね」

私の自分でもよく分からない理論に、彼女は笑ってそうだね、と頷いた。

私は彼女に、この人私の友達なんだ!と自慢出来るような人間になりたい。
それは容姿のような外面から表れる魅力と、物書きという内面の磨き上げからなる魅力だ。私はこの両方を自力で培うことで、彼女に自慢の友達だと思われたい。


「じゃあ私も頑張るね」
もう既に頑張っている彼女がそう話す。

ダメダメ、これ以上頑張らないで。
私のそばでニコニコ笑ってるだけでいい。そう止める。

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