仕事の仲間は友達じゃない。相談されない人事労務が考える「真っ当な関係性の築き方」
人事労務は保健室の先生ではない
―一般的に人事労務って、相談されてナンボというか「話を聞いてあげますよ〜」「窓口は開かれていますよ〜」って感じを出すじゃないですか?そういう雰囲気を作ることが仕事というか。でも、榎本さんってそうじゃない。そこについてどう考えていますか?
それでいうと実は私も元々は、人事労務は母のような、相談役みたいな、おせっかいするものだと思ってたんです。
―え!そうなんですか?
はい!そう思ってました。前の会社ではそれで上手くいってましたし。職場の愚痴もそうですけど、色んな人が色んなことを相談してきて「嫁とうまくいかなくて」「誰がうざい」「誰が臭い」とか…そんなことまで聞いていましたし、それが正しいと思ってました!
―それをちゃんと聞いてあげることが正しいことだと…?
そうです。学校だと保健室の先生がいるけど、会社だとそういう人がいないじゃないですか。人事労務がそういうのを吐き出せる場所になることで、リフレッシュして職場に行ってもらえれば、それがいいことなんじゃないかと思っていました。だから私からも結構踏み込んで「大丈夫?」って社員に愚痴や不満を聞きにいったりもしていましたね!
―そこにやりがいを感じてやっていたと。今の榎本さんのスタンスと全然違うじゃないですか!
全然違いますね(笑)。
―今のスタンスになったきっかけは何だったんですか?
まず、さっきも話したように私は元々保健室の先生みたいなのが人事労務だと思っていて、前職でもそうしていました。ですが、みんマに人事労務として入社してまず最初に受けた入社研修の資料に、「人事は保健室の先生じゃありません」って書いてあって。そこでまず、私は面食らって「え?違うの?じゃあなんだろう」と思ったんですよね。なのでそこからは会社の人たちがどういう感じで人と接しているのかをまず様子見したんです。するとたしかに、人間関係の愚痴とか恋愛の話をしてくる人が全然いないなぁと気づいたんですよね。そこにまず驚いて。この会社では自分が過去にやってきた人事労務のやり方は通用しないなって思って。となると、じゃあ人事労務って何するんだって話が出てくるじゃないですか。
―面白いですね。それでどうしたんですか?
それでだんだん感じたのが「人事労務は相談されなくていいんだ」っていうことです。人事労務は忙しくないほうがいいんですよね。相談されない方が、健全な状態なんじゃないかなって思ってますね。
―相談されるような問題がそもそも起きていないのであれば、そんなにいいことはないじゃん!ってことですよね?
そうですね。あと、この前、面接をしていて、候補者の方とみんマのコミュニケーションの話になったんですよ。で、振り返ってみると、みんマってメンバー同士がすごく仲がいいわけじゃないんですよね。休みの日までべったり一緒にいて、プライベートな話も、もう何でも知ってるみたいな関係性じゃなくて、一緒にいる時、ランチや飲み会の時とかも、仕事の話を中心にするっていう。みんなが熱く仕事の話をして関係性が深くなっていくんですよね。私は今までプライベートの話とか、突っ込んだ個人的な話を最初にして、関係性を深めていたんですけど、関係性を深めるための入り口が違うなと思って。でも、それこそが本来の仕事仲間というか、正しい仕事の関係性なんじゃないかと思ってて。
仕事を通して築く関係性が「大正解」
―私は仕事の仲間って、友達ではないと思うんですよね。結果的にプライベートでも仲良くなれたら素晴らしいことですが、それはあくまで一生懸命に仕事に取り組んだ結果の副産物だと思うんです。仕事以外の話から信頼関係を築くのは、私は安直なコミュニケーションだと思っていて、順番が逆だと思うんですよね。
まぁ取っ付きやすいのはありますよね、プライベートの話の方が。
―そうですね。でも、私達は会社を成長させるために集まっているわけで、カルチャー倶楽部に集まっているわけではないと思うんですよね。
みんマの人たちは仕事の話をして関係性が深まっていく。それが真っ当な仕事での仲間の関係性なんだなって今思ってて!私は今、それが大正解だなって思ってます!
―大正解!?ちょっとこれ、なかなか文字では伝わりにくいんですけど、榎本さんは今、手をグルグルと花丸にしてます(笑)
それをドライって言う人も多分いると思うんですよね。
―いると思いますよ。
でも、それって違うんですよね。今、採用とか労務ポジションの面接をさせてもらってるんですけど、そこでお話する候補者の方にも「ご自身が得意なこと」とか「業務でこれまで成果を出してきたこと」みたいなことを質問すると、「社員とコミュニケーションを取るのが上手で、よく”◯◯さんにしか話せないんだけど”っていう相談をされることが多い」って言われる方が結構いらっしゃるんです。でも、私はそれをすごいなって全然思えなくて。何でかっていうと、それって属人化しちゃってるじゃないですか。「どうして自分にだけ相談が来ちゃうんだろう」って思わないのかなって思うんですよね。もしかしたらその人が悩んでいることって、他の人も同じように思っていることかもしれないじゃないですか。人事労務としてはそこを課題として捉えて、みんなが悩まないような仕組みを根本から作るべきで。そういう仕組みを作る方がすごいなって思います。
―なるほどぉ〜!
相談が自分だけに来る、頼られてる特別感にその人は浸ってるだけなんじゃないかなと思うんですよ。
―そうだと思います。相談される自分に酔ってるんだと思います。
「よく相談されるんですよ〜」って言われるんですけど、それってどうなんだろう(=強みになっていないよ)って。でもそれは過去の私でもあるんですよね(笑)
―あー!それ!榎本さんはそういう経験があったからこそ、自分への反省というか、違うんじゃないかと思っているわけですもんね。
そうです。多分その時の私は優越感に浸ってたんだと思います(笑)
誰か一人を特別扱いしない
―もちろん誰でも悩みってあると思うし、本当に困った時に、人事労務に相談できることで助かる人もいると思います。しかし、承認欲求から相談に来るような社員を、下手に肯定してしまうと、相談者の被害者意識を悪い意味で育ててしまう可能性があると思うのですがどうでしょうか?
そうですね。分かります。私も仕事をする上で特別扱いはなるべくしたくないと思っていて。イレギュラーを作らないっていうのもそうなんですけど。一人一人にカスタマイズして何かに対応するんじゃなくて。言っちゃ悪いんですけど、例えば一人の声に耳を傾けすぎるのは慎重になりたいですね。そういった声が2人、3人と集まってきたら、何かやっぱり仕組みがおかしいんじゃないかと思いますし、それなら根本から仕組みを変えるべきだと思います。
―なるほど、人との向き合い方っていう点では、うちの出店者とコンサルタントのスタンスと似てるかもしれないですね。
私もめっちゃ似てると思っていますね。あと、例えば同じHRチームだからよくしてあげるとか、役職が上だからとか、後輩だからとか…そういうので対応を変えていると、やっぱり信頼を失ってしまうなっていうのはすごく思っています。
―相手によって態度を変える人は信頼を失いますよね。
はい。他にも、すごく気分が良くて特別に対応してあげましたみたいな時って、特別扱いされた人は2回目も同じ対応を期待するじゃないですか。でも2回目は、もしかしたら自分がすごく忙しくって同じ対応ができないかもしれない。同じ対応ができなければ、その人の期待を裏切ることになりますよね。だったら最初からそういう対応はするべきではない。絶対に自分がいつでもできる対応をしたいと思ってます。
―私も出店者さんと向き合う時とか、いつもそう心がけています。本当は格好良いことバチッと言いたいんですけどね。出来ないことを言って期待させてはいけないと思うので。
そうですね。一方で、自分ができる範囲を自分の中でちょっとずつ上げていく努力は常にしているんですよ。対応の品質向上みたいな部分を自分の中で上げていくってことは常にやるべきことではあると思うんですけど、誰かに対してだけ先に品質を上げるのではなくて、根本から品質を上げることができるように努力しています。
―今すごい良いこと言ってると思います!
でもほんと、みんマに来てからですよ!こんなふうに思うようになったのは。結果的には良かったと思ってます。最初「保健室の先生じゃない」って言われて「なんで?」って思って。そこからどんどん会社の人と関わっていくにつれて知っていくわけですよね。それでスタンスを知っていったみたいな感じです。
悩みがない=会社に無関心?
―でも、やっぱり相談をされると人事労務としては嬉しいと思うんですよね。でも、相手が喜ぶ姿を見ることで、だんだんと人事労務としてのあり方すらも分からなくなっていくと思うんですよね。
最初の方にも言ったんですけど、プライベートの話や愚痴を聞いてあげて関係性を深めていく仕事仲間ってどうなんだろうなって思うんですよね。まあ、結果論でしかないんですけど、私が積極的に相談を受けない人事労務になって、正解だったんじゃないかなって思ってます。悩んだときに自己解決するか正しいポジションの人に相談できているということ。会社によって人事労務のあり方はそれぞれだと思うんですけど、今のみんマのスタイルは正解なんじゃないかなって思うんですよね。仕事の話をして深まっていく本当の仕事仲間の関係ってこれじゃないの?って思いますよね。ただ、個性もあると思うので、誰にも話せず溜め込んだり塞ぎ込んでしまう人が声をあげることができる環境にすることは労務の仕事ではありますね。
―では、逆にみんマの課題だなと思うことはありますか?
課題で言うと、仕事の話をして関係を深めていくっていうのって、出社してる人はできると思うんですけど、リモートの人ってなかなかできないと思うんですよね。できないというか、リモートだとなおさら自分から動かないとコミュニケーションの機会は生まれないと思うんですよね。だから、やっぱりリモートワークしてる人たちがどんな悩みを持っているかとか、どんな思いで働いているかとかが見えてこない。悩みが本当になければ、それはそれで別にいいじゃないかとも思うんですけど。でも、悩みがないということは、会社に対して自分から関わろうみたいな気持ちがあんまりないのかな...みたいな。
―それはそうだと思いますよ。リモートワークで働きたい人って、自由な働き方が優先されるので「会社を成長させるために自分からコミュニケーションをとるぞ!」という気概は小さいと思うんです。
思ってないんですかね…ってことはそれで満足してるから悩みもしないし、ストレスも特に感じてないってことなんでしょうか?
―そうだと思います。もちろん、業務の悩みはあるでしょう。でも結局、私は人との関わりが一番のストレスになると思うんです。だから、人との関わりが最小限であれば、ストレスも最小限でしょうね。私はそれはそれで良いことだと思いますけど!
なんか…それで本当に楽しいのかな?って思っちゃうんですよ。だって週7日のうち5日は仕事をするじゃないですか。で、1日のほとんど、3分の1が仕事をしてる時間じゃないですか。その時間がそんな感じでいいのかなって思っちゃいます。
―え!?
「人事労務は相談されないほうが良い」と冒頭でお話ししましたが、個々人の中で多少負荷のかかる環境で大いに悩み、その相談が人事労務に来るのではなく、色々な人とコミュニケーションを取っていく中で、解決策や答えを導き出し、周囲の人との関係を深めながら学び続けていく方が絶対楽しいと思うんですよね。だから、本来であればその人たちが自分からコミュニケーションを取ろうとしてくれるのが一番良いんですけど、それは自分から関わろうとする気持ちが無ければ難しいなって。だから、労務としては、イベントの企画などを通してコミュニケーションが生まれる機会や仕組みをつくりたいなと思いますね。
日々の業務もあってなかなかそういったことを考えられていないんですけど、そこは今後取り組んでいきたいことのひとつですね。
―おぉ…良い課題ですね!(榎本さん覚醒している…!?)