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こんなに違う!ベトナムと日本の日常

こんにちは!ゲストライターのトゥクです。
本連載では、外国人視点から日本に住む上で感じたことや気づき、出来事を通して、読者の皆さんの新たな視点や発見につながればと思い、ご紹介しています。
そして前回は「皆が読みやすい日本語を目指して」というテーマの記事を発信しました。

今回は前回記事のようにデザイナーとしてのインクルーシブな視点の提供では無く、外国人の立場から見た、私の故郷ベトナムと日本の慣習の違いをご紹介したいと思います。具体的には、筆者が日本とベトナムを行き来する中で身近に感じた慣習の違いを、体験談を交えて皆さんにご紹介します!

1. え!?ご飯はワンプレートじゃないの?

日本にきてから驚いた日本の慣習は多くありますが、その中でも食事シーンでのカルチャーショックが特に印象的です。その一つが、日本料理の盛り付けについてです。皆さんがイメージする日本料理の盛り付けはこのような状態でしょうか?

トゥクさんが出会った日本料理 小鉢に細かく盛り付けられている。
トゥクさんが出会った日本料理 小鉢に細かく盛り付けられている。

日本料理全てが上記画像のような盛り付けでは無いとしても、私が出会ってきた日本料理の盛り付けは基本的に、食事の種類ごとに各小皿に盛り付けをして提供されます。
しかしながら、私の故郷であるベトナムでは一人一人にこのように分けられている形式ではなく、おかずなどが大皿などに盛られて提供され、それを各々がシェアして食べる形式が一般的です。

トゥクさんが帰省した時の宴会の食事 大皿に盛り付けられた料理が並んでいる。
トゥクさんが帰省した時の宴会の食事 大皿に盛り付けられた料理が並んでいる。

こちらは私が帰省した際に撮った実際の食事風景です。各自が自分のお碗を与えられた状態で、大皿やご飯釜から食べたいように取っていくようなスタイルです。さらに、取り皿もお椀一つで、ご飯やおかず等関係無く一つのお椀に入れて食べるのがベトナム流です。

そういえばお箸のタブーの違いもあります。直箸などは日本と同様タブーとされていますが、二人箸(お互いに箸を使って食べ物を渡したり千切ったりする行為)はタブーではないです。上記の写真のようにおかずが盛られている大皿でうまくちぎれない場合などには、頼まれる場合もありますし、頼めるのです。私自身、日本でシェア前提のメニューが出る居酒屋などに行った際に友人に二人箸を頼んでしまうのですが、いつも相手が躊躇している様子にちょっとしたギャップを感じました。

また、食事のスタイルで「ねこまんま」は日本ではあまりいいイメージがありません。ただ、ベトナムではご飯に汁物を入れて食べるのは一般的です。前半はご飯とおかずで食べつつ、後半はスープを同じお椀に入れて食べます。

2. なんでご飯を食べる前に手を合わせるの?

多分読者の皆様もいつも行っているであろう、食事をする前と後の「いただきます」「ご馳走様でした」の挨拶にも衝撃を受けました。この慣習を私が初めて知ったのは、ベトナムから来日後に、小学校2年生として学校に通い始めた時でした。
私が通っていたベトナムの小学校では、日本のように給食タイムとしてみんなで一緒に食べることはありませんでした。お昼タイムとして、ご飯を食べる時間と休憩時間がセットになっていました。その為、各自の判断で学校内外またはお家でご飯を食べるなどかなり自由にお昼の時間を過ごしていました。
なので、日本に来た際にみんなで一緒に給食を食べることにも驚いたのですが、それと同時に非常に驚いたのは「いただきます」「ご馳走様でした」の挨拶です。私の学校の場合は、その掛け声をクラスのみんなでするまでは食べることがダメだったので、なおさら驚きました。
改めて調べたところ、この「いただきます」は日本特有の挨拶であり、外国語には同様の言葉が存在しないらしいです。ただ、このような慣習に驚きはしましたが、個人的には食事の際に感謝を込めた挨拶を行うことは素晴らしいことだと思いますし、日本人らしさの現れでもあると感じました。
私自身、この「いただきます」「ご馳走様です」は家の中では言わないので、日本に住んで13年近くたった今でもこの慣習が身に付いておらず、日本人の友人らとご飯を食べに行くと本当に丁寧だなあと思っています。

3. 「お邪魔します」ってなんで言うの?

挨拶つながりでもう一つ驚いた日本の慣習があります。それは、相手宅に入る際に言う「お邪魔します」と出る際に言う「お邪魔しました」という挨拶です。
こちらの挨拶を日本語以外の言語でも調べたところ、該当する単語は見つけられませんでした。ベトナムでも、他者のお家に入る際にそのような挨拶をする慣習は無く、相手に対して挨拶をするのみです。なので、初めて友人のお家に複数の友人と共にお邪魔した時は、その慣習に驚いて「なぜそれを言うの?」と聞いてしまいました。

4. 家の玄関が全然違う!

次に、ベトナムと日本のお家の玄関が全然違うというお話です。文字通り玄関の形が違うということでもありますし、形状や交通手段の違いによって玄関の使い方も異なる為、自ずと文化も違って来るのかなとも最近思っています。

まずベトナムのお家の紹介をします。
こちらの写真が筆者のベトナムにある実家です。

玄関外正面から見た写真
玄関外正面から見た写真

ベトナムの都市部の住宅は基本的に縦長になっており、3階以上あるお家が多いです。そして基本的には道路に面しており、大きなドア(シャッター?)を挟んだらお家の中になっています。そして道路ではバンバンバイクが走っているので、案の定部屋の中はすぐに埃まみれになります。

中から家の外を見た写真
中から家の外を見た写真

日本のお家だと、玄関を入ったら廊下が続いてその奥に客間があるのが基本様式かと思いますが、ベトナムは玄関開けたらすぐ客間がある様式がほとんどです。そしてその客間はバイク置き場も兼ねていたりします。ちなみにベトナム人は素足文化なので、入ったら玄関付近(外とか)に靴・サンダルをおきますが、気づいたら違う人に履かれてしまうことも多々ありますので、ベトナムに行く際にはご注意ください(笑)。
あとは普通にドアを開けっぱなしにしている人も多いです。私の母や祖父母も、日本に住んでいるのに限界や窓などあらゆるドアを全開にしているところが、ベトナム人らしいなと思います(笑)。

個人的には、玄関の形状からもわかる通り、ベトナムの方は「内と外」という境界線の認識が曖昧だと感じることがあります。日本では人様のお家に入る際に、「お邪魔します」という挨拶をするなど、少々堅い印象を感じます。
逆にベトナムの場合では先述の通り、玄関(?)を入ってすぐに客間がある為常に人が玄関付近に居ます。その為、外を歩く人々に容易に声をかける事が可能であり、またその逆もあり得ます。私自身も帰省するたびに、隣人のおばちゃんとかに「あら!日本から帰ってきたの?お茶飲んできなさい〜」と声かけられるなど、他者を内に招き入れることに抵抗があまりないです。また自分が家にいる場合も、隣人が雑談しに躊躇なく家に押しかけてきたりします。

ちなみにベトナムでワイワイ雑談することを指すスラングを「tám(=タム)」といいます。この言葉は本来は8という意味ですが、おばさんという言葉を加えることで、よく喋る人(=bà tám)という意味になります。なので、隣人が押しかける時は「Qua tám!(=雑談しにきたよ!)」とよく言われたりしますね。

5. みんな昼寝しなくても大丈夫なの?

最後に、お昼寝文化についてです。日本の学校や企業では、お昼休みの時間は1時間のところが多いと思いますが、ベトナムのお昼休みは1時間半の場合が多いです。日本よりやや長い理由としては、お昼寝をするためでもあります。

ちなみに私の叔母は小学校の英語教師をやっていますが、お昼時になると自宅に帰ってご飯食べたら2時間ほどお昼寝してから、再度お仕事に行きます。お昼寝をする時間を確保する為にベトナムの始業や、学校の開始がめちゃめちゃ朝早くて7時から授業が始まったりします。

お昼寝タイムになると、オフィスでは床にマットレスを敷いて寝たり、路上ではハンモックを木にかけて寝ていたり、バイクの上で器用に寝ている人などもいます。

昨年度ベトナムに帰省してそちらからリモートワークを行った際に「お昼寝しないの?」と質問されて改めてびっくりしました(笑)。そういえば日本に来てから、小学校でお昼寝時間がなかったことにショックを受けたのを思い出しました。

ベトナムにいた時にはお昼寝文化がなんであるかなど疑問に思いませんでした。日本での生活を経て改めて考えてみると、ベトナムは日本と比べてとても暑いことが分かりました。その為「暑すぎてお昼寝をしないとやってられない!」のかなとも思っています。改めて調べたところ、ベトナムは元々農業が盛んで人口のほとんどが農民でした。そしてベトナムは熱帯地域に位置しており、正午ごろに太陽が一番高くなります。そんな炎天下の中で働くのはエネルギー効率も悪く、体にも悪いため、正午の時間帯を避けるという解決策としてお昼寝することに繋がったみたいです。そして今では、ベトナムの慣習の一つになっています。

おわりに

ここまでベトナムと日本に住んでいる筆者が体験した慣習の違いについて、体験談と共に紹介してきました。
今回はベトナム人視点からの日本とのカルチャーギャップエピソードを紹介しましたが、逆に皆さんが日本から海外に訪れた際日本人視点で感じるカルチャーギャップもあるはずです。その時に、文化の良し悪しを判断するのでは無く、違いに面白みを感じ、楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。
ちなみにベトナムはとても親日国家で、日本文化が好きというベトナム人も多くおり、街中で日本語の文字を見かけることも多々あります。料理もとても美味しいので、読者の皆さんもぜひ訪れてみてください。

この記事を通して、「確かに」「なるほど」と言う発見を提供すると共に、何気ない日常生活で出会う種々の事柄を、多様な視点で見つめ直してもらえたら嬉しいです。
次回も、今回とはまた違ったトピックに関して外国人としての視点からの感想をお届けしようと思っています。毎月更新していく予定ですので、また来月の記事も楽しみにしていてください!
ここまでご愛読くださり誠にありがとうございました!


とぅく / Lathanh Truc:DeNAデザイナー
ベトナムホーチミン市出身。
多摩美術大学情報デザインコース卒。Takram UIデザインインターン生。
「UX/UIデザイン」「デザインマネジメント」「対話する場づくり」「ひとりひとりの背中を押して、人生を応援するデザイン」
デザインを語るポッドキャスト「なにからデザイン」配信中!


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