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【イベントレポート】くるむと"行動経済学"をまなぶ

デザインスタジオCULUMUでは、多様な分野・業界についてそれぞれの専門家、知識人を招き、その分野、領域の知識を広げていくイベント、「くるむとまなぶ」を開催しています。

vol.2では、UXデザイナーの中島さんをお招きし、「行動経済学」について学びました。




くるむとまなぶとは


くるむとまなぶは、デザインスタジオCULUMUの、開かれた社内勉強会です。
私たちは『障壁を生まない豊かな社会をデザインする』ために、
人々が共創する可能性をもっと深めたいと考えました。

CULUMUのメンバーが今学びたいことについて、様々な領域で活躍されている方々をお招きして学んでいきます。


vol.2はくるむと"行動経済学"をまなぶ

vol.2では、UXデザイナーの中島さんをお招きし、「行動経済学」についてCULUMUのメンバーと一緒に学んでいきました。

ゲスト講師:中島亮太郎(UXデザイナー)

中島 亮太郎(UXデザイナー / talodesign代表)

talodesign代表。工業製品のデザインと人間工学やユーザビリティのリサーチを経て、ハード・ソフトを問わずユーザーとビジネスをつなげるプロダクトの事業戦略や体験設計を専門にデザイン・ディレクターとして活動したのち、2024年5月に独立。業種を問わず、大企業からスタートアップまで協業。個人では、行動経済学とデザイン、DIYとデザイン、ボードゲームづくり、学習とデザインなどに興味をもって活動。北海道生まれ。札幌市立高等専門学校後に武蔵野美術大学卒業。2021年9月に書籍「ビジネスデザインのための行動経済学ノート」を出版。

個人サイト:
https://talodesign.net/

ビジネスデザインのための行動経済学ノート:
https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798169934

イベントの様子

くるむメンバーのまなび

今回の講義を経て、メンバーが得た学びや感想をまとめました。

行動経済学の本質を再認識した

行動経済学というと、「企業の都合の良い方向にユーザーを誘導する」ダークパターンのようなイメージを持っていました。しかし、中島さんのお話を聞いて、全くその逆であり、むしろデザイナーはその倫理観を守り、企業とユーザーどちらの利益も守りながら仕組みをデザインしていく必要があるのだと改めて気づかされました。デザイナーが増えていく中で、デザインの哲学を支えているデザインに関する著名な研究者の言葉(「形態は機能に従う」など)を知らないデザイナーも増えているのではないか?という投げかけも、ハッとさせられました。さまざまなバックグラウンドを持つデザイナーがいるなかで、CULUMU内部でそうした学びも積極的に行っていかなければいけないと思いました。

UIデザイナー

行動経済学の根底には「より良い選択ができるように人々を手助けすること」があることをストレートに議論できて、よても良い会でした。また、世の中のパターンを知ることも大事だと思いますが、取り組んでいるサービス・事業の中で「人」中心に考え、提供価値をどう後押しできるを引き続き考えようと思える会でした。中島さんありがとうございました!

UXデザイナー


行動経済学を取り入れる上での「倫理観」を養う大切さに気づく

「テクノロジー、デザイン、行動経済学、AIなどそのものには善悪はなく、使う人によってその力がポジティブにもネガティブにも働く」これは普段デザインをしていく中でも意識的に持っておかなくてはいけない部分だなとあらためて思いました。マーケティングの視点でデザインを考えているときに、数字を上げるとかたくさん買ってもらうとかの部分にばかりフォーカスしていると、自分でも気が付かずにダークパターンを行ってしまうことが十分にあり得るので、デザイナーとして「ユーザーにとっていいことなのだろうか」という倫理観を忘れずにデザインに向き合いたいと思います。「デザイナーは数少ない社内の中にいながらユーザーの立場に立てる人、ユーザーの代弁者」はハッとさせられました。

サービスデザイナー

デザインも行動経済学もテクノロジーも使う人によって、ポジティブにもネガティブにもなることが改めて話を聞けて、印象的でした。普段の仕事のなかではどうしても目の前のものや、やらなければいけないことに囚われて、そのデザイン、設計がどういう影響を社会に与えるかを客観的に捉えることが必要だと感じました。よりデザイナーにも道徳観が求められてくるなかでどのような振る舞いを仕事の中でしていくか考えたいと思いました。

リサーチャー

「ふつう」や「自然さ」についても思考停止してはいけないなと改めて思いました。表面上の言葉で片付けずに私たちがいろんな視点で考え続けていく必要があると感じました。

UX/UIデザイナー


「行動経済学」をソーシャルグッドな実務に活用していくために今からできること

これまで行動経済学を無意識的に活用しながらデザインに取り入れていたが、倫理的にいいんだっけ?と立ち止まって考えることはなく、無意識的に悪用してしまっていたかもと終始反省していました、、
特にLPなどサービス・施策を認知し購入してもらうフェーズの中で悪用してしまいがち、、売上のために良かれな気持ちが大きかったです。
ただ、クライアントワークをやる中で ”倫理的に良くないのでこっちのデザインでいきましょう”、をクライアントに提案するのは、これまでの経験から難しいな〜と思いました。非倫理的な表現は長期的にはダメージを食らうとはいえ、短期的な売上はビジネスにとって必要は理解できるし、クライアントがNOなら押し通すことはできないなと。

とはいえ、まずは立ち止まって検討することがはじめの一歩だなと学びました。
行動経済学をGoodに活用するために、倫理的に良いビジネス・表現の仕方で成功例をもっと知ることや、立ち止まって考える際のチェックシートみたいなものがあると良さそうだなと感じました。

UXデザイナー

行動経済学やナッジといった理論・手法には、「自分自身にとってより良い選択ができるように人々を手助けすること」が目的のもの以外に、「経済合理性のため、人を操作している」ような側面もあるだろうという考えのもと、今回の勉強会に参加しました。
質疑応答でもありましたが、「より自然であるかどうか」をその倫理的な基準におく、というお答えについて、もっと対話を深めたいと思いました。
自然である、ということは、共有できている常識が時代に合っているかどうか、だと言い換えられますが、これはマジョリティの正当化にも繋がる思想でもあろうかと存じます。多種多少な立場のステークホルダー・ダイアローグを深めることにより、マジョリティの暴走を食い止め、未来志向のデザイン、行動経済学の実践があるのではないでしょうか。

UXデザイナー

ダークパターンの事例がありましたが、ビジネスの目的を達成するためのデザインをしようとすると、盲目的に意図せずダークパターンになっていることもあると思い、ハッとさせられました。一方で、社会的に良くないといわれるような依存性があるものでも、賭け事と子供の学びのように、活かす場面によっては、良し悪しが別れることを知り、とても学びになりました。

リサーチャー



📚行動経済学を知るための参考書籍

今回の講義は5冊の参考書籍とともにお話しいただきました。この機会にぜひ手に取って、行動経済学の源流に触れていただけたらと思います。

実践 行動経済学

リチャード・セイラー (著), キャス・サンスティーン (著), 遠藤 真美 (翻訳)


サイレント・ニーズ――ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る

ヤン・チップチェイス (著), サイモン・スタインハルト (著), 福田篤人 (翻訳)


ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン

仲野 佑希 (著), 宮田 宏美 (監修), ダークパターンJP編集部 (監修)


野外科学の方法: 思考と探検 (中公新書 332)

川喜田 二郎 (著)


ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ文庫 NF 410)

ダニエル・カーネマン (著), 村井章子 (翻訳)


アーカイブ動画でこの講義を学びたい方へ

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前回のレポートもぜひご覧ください。上記のフォーム申込で第一回のアーカイブも視聴いただけます。


次回のご案内

vol.3では、UXデザイナーの逸見貴人さんをお招きし、「まちづくり」について学びます。

空間や環境の整備、ルールやコミュニケーションづくりなど、豊かな生活をつくりだす背景にある仕組みや工夫について、今回は世界各国の事例も踏まえながら気づきを得る時間になればと思います。

株式会社NTTデータ サービスデザイナー/カタリストの逸見 貴人さんをお招きし、くるむと一緒に"まちづくり"を学んでみませんか?

詳細、お申し込みはこちらのイベントページをご覧ください!


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