歌う氷
ドイツに住んでいた当時。友人家族とうちの家族で、一緒に湖畔をハイキングしていた時のこと。
この日は、気温が下がってきた11月下旬。ちょうど湖が凍り始めた時期だった。
子どもたちが凍っている湖の表面へ石や氷を投げて滑らせてみると、この世のものとは思えない不思議な音がした。
↑ その時に撮影した10秒ほどの動画。小さめの音だけど、バッチリ録音できた。
で、その時は、「なんでこんな音がするんだろうね~??」ってみんなで首をかしげて、それで終わった。
そして週が明けて。
会社へ出社してからフト、「そういえば氷といえば、同僚の北欧フィンランド人に聞いたら何か分かるのでは?」とひらめいて、彼女のところにいって聞いてみた。
僕
「あのさぁ、ちょっと聞きたいんだけどね。この週末にハイキングへ行ってきて、凍った湖の上で氷や石を滑らせたら、不思議な音がしたんだk・・」
と、僕の質問が終わる前に、即答。
フィンランド人
「あー、それはね、氷がたわむ時に出る音なんだ。氷の上を何かが通ると、氷に重みがかかって微妙に上がったり下がったり、たわんだりする。氷には裂け目がたくさんあってね。その裂け目に空気が入ったり出たり、または水が入ったり出たりすると、こういう音が聞こえるよ。ノルディックスキーで氷の上を歩いても、同じ音がするんだ」
僕
「え??いやいや、でもそんな裂け目は見えなかったし、滑らせていた石や氷はとっても小さくて軽いものだったけど?ほら、この音なんだけれども・・・」
といって、この動画の音を聞いてもらった。
フィンランド人
「そうだよ、まさにこの音。氷ってね、実は目に見えないくらい小さな裂け目が無数にあって、軽いものを滑らせても、実は結構たわんでいるんだ。そして氷の厚さによって、音が変わってくる。この音だったら・・・、そう、たぶん氷の厚さは数cm程度の薄い氷ね。そして氷が50cmくらいまで厚くなると、車で上を走っても割れないくらいになる。でもそうなると、たわみが少なくなるから、あまり音がしなくなるんだ」
僕
「ホントに不思議な音やね」
フィンランド人
「あのね、氷って『いきもの』なんだよ。常に厚さや状態が変わり続けていて、音も常に変化し続ける」
さすが餅は餅屋で、氷のことはフィンランド人がよく知っていた。この同僚のフィンランド人は、以前投稿した「フィンランド人と話してみた」の人。やっぱり、自然についての知識と思い入れが素晴らしかった。
この不思議な音についての情報は、ネットで探してもあまり多く見つからなかったものの、かろうじていくつか動画が見つかった。ここでは「歌う氷」とも表現されていた。
↓ もし興味ある人は、コチラの動画を。
2つ目の動画のナレーション曰く、「この音は、湖が凍り始めた冬の初めの時期に一番よく聞こえる」って。確かに、自分の経験と一致する。
そして続くナレーションでは「氷がどれだけのスピードで厚くなっていくか等は毎年違うから、氷の音も毎年違っている」っていう説明がある。これも同僚フィンランド人の「氷は『いきもの』なんだ」という表現と符合する。
やはり現地の人はよく知っている
みなさんは、氷がこんな不思議な感じの音を出すということを知っていたでしょうか。
いっつも思うんだけど、これだけ情報が氾濫する世の中になって、「世界のことはだいたいのところは知っているだろう」と思っていても、まだまだローカルの人やその道の人に聞かないと分からないことって、山ほどあるもんやね。
by 世界の人に聞いてみた
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