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ルクセンブルクで働いている人たちに聞いてみた

【2018年冬に聞いた話】

仕事の打合せがあって、2018年当時にルクセンブルクへ出張した(*ドイツに住んでいます)。ルクセンブルクはフランスとドイツとベルギーの間にある小国で、面積は大阪府より一回り大きい程度。人口も60万人ほどで、日本で言えば市レベル。

一人当たりGDPが世界一

この国の特徴は、一人当たりGDPが世界一であること。その理由の一つは、税率が低く、税制優遇措置も充実していることが影響している。そういった税制上の魅力があることによって、多くの企業が欧州にある複数の拠点を束ねるための「持ち株会社」をルクセンブルクに置いている

但し、持ち株会社があるからといって、他の国で工場や営業拠点を運営している事業会社の税金が、ルクセンブルクにガッポリ入ってくるわけではない。税金の世界はそんなに甘くはないようで、基本的には実際に事業をやっているそれぞれの国に、きっちりと税金が落ちる仕組みになっている。

ではルクセンブルクは、持ち株会社が置かれることでどのような恩恵があるのか?

持ち株会社があると、それら持ち株会社の会計処理に必要な会計事務所の仕事が生まれる。また、持ち株会社の活動が法制度に適合しているかをチェックする弁護士事務所などの仕事も生まれる。更にそういった持ち株会社の資金を取り扱う金融サービスの仕事も生まれる。

こうやって、たとえ事業会社がなくても、持ち株会社があることで高度な専門知識が必要な仕事がルクセンブルクで創出されるため、一人当たりの所得が上がるという影響がある。ひとことで言えば、知識集約型産業の雇用が生まれるということなのかな。

そしてそのような仕事では、一定レベル以上の能力を持った人が必要になるので、人の移動が自由なEUでは、EUのあらゆる国々から優秀な人たちが集まってくる

ルクセンブルクの人たちに出身国を聞いてみた

さて本題に戻って、2018年にルクセンブルクの会社で働く3人と僕の合計4人で打合せをした。上記の背景からルクセンブルク人以外も多いんじゃないかなー、って思ったから、打合せの合間の雑談で、みんなに「どこの国出身?」って聞いてみた

一人目は隣国のベルギー人で、週末はベルギーへ帰る。

平日だけルクセンブルクのアパートで生活して、週末(おそらく金曜日の午後)には家族がいるベルギーの家へ車で帰るらしい。つまり、平日だけ単身赴任の生活。自宅とルクセンブルクの間は、たしか車で2~3時間って言ってたから、あまり無理なく生活できている様子。

二人目はオランダ人(ルーツは台湾系)。

この会社へ転職した際にオランダからルクセンブルクへ引っ越してきて、ルクセンブルクで一人暮らし中。

三人目は隣国のフランス人で、今もフランス在住。

毎日、車でフランスから国境を越えて通勤してきている。同じEU内なので国境管理はないけれど、でも越境通勤している人数が多いから「渋滞がひどくって、毎日1時間以上は通勤にかかる」ってぼやいていた。

この越境通勤は、EUではよくある「給与水準が高く福利厚生が充実している国(ルクセンブルク)で働いて、物価水準が比較的低い国(フランス)で生活する」というパターン。

結局・・・

ということで、ルクセンブルクで会議したけれど、誰一人としてルクセンブルク人はいなかった。そしてみんなルクセンブルクに根を下ろして生活しているわけではないから、ルクセンブルクのこともあまり知らない。例えば「この事務所からルクセンブルク中心部へ移動するには、何番の路面電車に乗ればいいんですか?」とか聞いても、みんな苦笑いしてチンプンカンプンな様子だった。なんとなく予想していたけれど・・・やはり。

一人当たりGDPが高い、もう一つの理由

ちなみに、ルクセンブルクが一人当たりGDPが高い理由は、前述のフランス人のように「越境通勤が一般的なこと」も大きく影響している。

一人当たりGDPを算出するには、「その国のGDP総額」を「国の人口数」で割るらしい。そのため、越境通勤者がルクセンブルクで仕事をすると、その成果は企業活動の成果として分子に算入されるけど、その人は国の人口にはカウントされない。つまり分母には入らない。だから越境通勤者の流入が多いほど、一人当たりGDPの数値が計算上で増えることになる。

統計によると、ルクセンブルクでは就業者の40%以上が隣国から越境通勤しているということで、影響はとても大きい。ネットの記事とかで「一人当たりのGDPが大きいから金持ちの国」というものも見かけるけど、現地の人と話をして聞いてみたら、そう単純な話ではないことに気がついた、という話でした。

↓ちなみにルクセンブルクは都心でも緑が多く、10月の紅葉の季節はめまいがするほど美しい。

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by 世界の人に聞いてみた

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