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仕事とプライベートが近いドイツ人について

「欧米人は仕事とプライベートをキッチリ分けるらしい」

僕は若い頃によくそういう話を聞いたんだけど・・・。

現実には、そのイメージが必ずしも正確ではないような気がする。僕の経験では、ドイツ人たちについては仕事とプライベートの境界があいまいなことも多い。

そんな印象を持つことになった僕の経験について、少し書いてみよう。

チュッ!

ドイツ人は一般的に家族を大事にしている。夫婦仲について言えば、必ずしもみんな仲睦まじいわけではなさそうだけど、それでも概して言えば「夫婦間で愛情表現を明確に示している人たち」は日本人より多いと思う。

以前、ドイツ人同僚(当時50才)と打合せをしていたら、彼の電話がなった。

ドイツ人同僚の男性
「あ、ワイフからの電話だ、ちょっとだけ待って。・・・あー、もしもし、ごめんね、いま日本人の同僚と打合せしているから、後から掛けなおすよ、悪いね、またあとでね、チュッ」

・・・つい今まで、目の前で仕事の話をしていた同僚が、電話口でチュッとか音鳴らしてるのを見ると、打合せの調子が狂うなぁ・・・。

なお、誤解を生まないように書いておくと、こんなことをするのは彼しか見たことないので、ドイツ人であっても決して一般的ではないと思う。

娘を会社行事に参加させる

彼を例にとってみると、彼は会社とプライベートを意図的に関係させている。

例えば、会社の公式な夏イベントで、同僚みんなで湖へ行ったことがあった。夏の午後に仕事を早々と切り上げて、みんなで湖へ。そこでSUP(スタンドアップパドル)を何時間か楽しんだ。

湖遊びが終わった後は、レストランで食事をして。陽が落ちてからは、みんな湖畔のデッキチェアーでのんびりと。その時間になったとき、前述の彼は当時高校生だった娘さんに来てもらって参加させた。

会社の人たちに交じって一緒に会話するティーンエイジャーの娘さん。社会人がどんなものか、雰囲気が分かって良い経験だったんじゃないかな。その中にはアジア系の僕やインド人もいて、英語で会話する。それはそれで、ちょっと国際的な経験にもなったはず。

彼はそんな娘さんに、時には会社のメールを見せることもあったと言っていた。娘さんにとっては難しい話を聞かされても面白くないから、話を単純化して分かりやすく面白おかしく説明して、社会人として働くということはどんなことかを学生の頃から学ばせていた様子。

そういう視点で言えば、たしかに僕も息子に対して、このnoteに書いている記事のような会社での異文化体験とか分かりやすい話をいつも語って聞かせてきた。息子にとってカイシャとは、なにやら面白いところだというイメージを持っているのかも。少なくとも、仕事の中に何らかの楽しみを見い出す方法が息子の心の隅に引っ掛かってくれていれば嬉しい。

雑談に花が咲く職場

さて、次に前述の彼のことからは離れて、一般的なドイツ人たちに目を向けたとしても、やっぱりプライベートのことについての話を聞くことはとっても多かった。

例えば、お昼ご飯を食べている時に家族の話をしてくれる同僚たち。

■ 娘さんが「お米を食べる時には牛乳をかけてマンゴーを載せて食べるのが大好き」という話を聞いたり。

または、仕事中にちょっと話しかけてみたら雑談に花が咲くことも。

■ 「娘さんがクリスマスにはニコラウスに萌える話」を聞かせてもらったり。

■ 若いバングラディシュ人同僚の女性が、職場の立ち話で自分自身の目指す人間像について語ってくれて共感したり。

または、家に招いてくれたり、会社をやめてもプライベートの連絡をくれることもよくある。

■ 家に招待してもらって、自分の住んでいる街がどんなに居心地が良いかについて話を聞いたり。

■ 50才くらいの元同僚の女性が、1年に2回くらいは「新しいボーイフレンドができたよ!」って連絡をくれるとか。

■ そうそう、ドイツで働いていた当時の同僚が、日本でお花見するためにドイツから奥さんと旅行に来ているので、ちょうど昨日一緒に飲みに行った。彼らはインド人だけど。

さらに言えば、仕事にある程度のプライベートを持ち込むこと自体が公式に認められているケースもある。

■ 僕がドイツで二つ目の会社に入った初日。いろんな書類にサインしていた中に、こんな書類があった。「常識的な範囲内であれば、仕事中に個人的な用事のために会社の設備(電話・インターネットなど)を利用することを、会社は認める」。なんでこんな書類があるのって聞いたら、「仕事とプライベートを完全に分けるなんて、現実的に不可能だってみんな知ってるでしょ。だから明文化して合意事項を明確にしているの」って。

■ 海外出張へ行くと、その業務が終わるタイミングで奥さんがやってきて、そのまま1週間ほど休暇を取得して夫婦で観光旅行をして帰る。上司が認めた上で。

仕事とプライベートはキッチリ分けるもの?

果たしてドイツ人は、本当に「仕事とプライベートはキッチリ分ける」人たちなんだろうか。

いつものように、どちらが良いということを主張したいわけではない。ただ、「仕事とプライベートをキッチリ分ける」ことが絶対的に正しいことでもなく、また必ずしも人間の自然な性質に合っている訳でもないだろう。

そう考えると仕事とプライベートの関係は、「自分にとって心地よいと感じる距離感」を保つようにするか、または仕事とプライベートの距離が近くても柔軟にその時々の状況を楽しむことができれば良いのだろう、と思った。

by 世界の人に聞いてみた

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