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味噌汁とご飯とドイツ人

ドイツ人同僚の女性
「私は食に興味があってね。外国の人が何を食べているのか、よくドキュメンタリー番組を見るんだ。この前は日本の朝食についてのドキュメンタリー番組を見たよ。そしたら、日本人は朝から本格的にスープを飲むのよね!ミソスープっていう名前の

以前ドイツで働いていた頃、ドイツ人の同僚(女性、40代半ば)がこう言いながら話しかけてきた。

食文化って、洋の東西が違えば常識が大きく違ってくる。でも世の中の情報化が進展して、違う食文化の情報を入手するのも容易になったから、そういった違う食文化について興味を持つ人たちも増えるわけで。。。

ドイツ人同僚
「ドイツ人は昼か夜しかスープは飲まないんだけど、日本人は朝から本格的にミソスープを飲むのよね!

そしてミソスープの作り方は・・・、まず海でツナを捕ってくる。そのツナの身を一握りのサイズのバー状に切り分けて、太陽に干すと、木みたいにカチカチになる。そのバーを刃物のついた道具でスライスすると、ペラペラの薄い紙の切れ端みたいなものがたくさん出来上がる。それらを沸騰したお湯の中に放り込むと、素晴らしいスープの味が出てくるんでしょ。

でも秘密はそれだけじゃない。シイタケっていうマッシュルームの一種を入れたりする。しかも、そのシイタケも、太陽に干すことによってミラクルな栄養素が生まれるって。すごい知恵が詰まっているのよね。

それだけでもすごいスープなのに、さらにミソっていう発酵食品を加える。発酵食品って、体にいいのよね。ワオ!なんてすばらしい食文化なの!」

僕はそれを聞きながら、なるほど、味噌汁を外国人の視点から説明するとこうなるのか・・・と、自国の文化を外から見た表現に、すっかり感じっていた。


「そ、そのとおり。よく知ってるねー」

ドイツ人同僚
「でも、私にとって違和感があるのが、ミソスープみたいにしょっぱいものを朝から食べたり飲んだりって、ありえないわ。朝食はだいたい、パンに甘いマーマレードやジャムをつけたり、ジュースを飲んだり、甘いフルーツを食べたり。まあたしかに塩分も採るけどね。例えば卵に塩をかけたり、チーズやハムを食べたり。でもガッツリとしょっぱいものを食べるなんて、抵抗あるわ」

ということらしい。

少し補足すると、ドイツでも朝食に甘いものをたくさん食べる地域もあれば、または甘いものは程々にしてチーズやハムやパンをメインにする地域もあったりと、地域によって違っている。この同僚が生まれ育った地方は、比較的イタリアに近い地方。朝食は甘いもの、と相場が決まっているイタリアの影響を受けているのだろうか。

ただ一つ確かなのは、日本の場合は周囲が海に囲われていて、ヨーロッパに比べると塩の入手が遥かに容易。その一方で、過去の日本は甘味料の入手がそれほど容易ではなかった。だから、やはり日本は伝統的に言えば甘い食事よりは、塩味の料理を食べるのがメインの食文化なんだろうと思う。

お米が苦手なドイツ人

あと、これは何人かのドイツ人から言われたけど、朝食としてごはん(お米)を食べることに抵抗があるらしい。昼や夜ならいいけれど、朝からお米は「そもそも心理的に受け付けないから勘弁」って。

むかし、3人のドイツ人が目の前にいる状況で「朝からお米を食べられる?」って質問したことがあった。

そしたら3人とも一斉にイヤな表情しながら、首を横に振り始めた。マンガみたいな光景だった。

この理由はよく分からないけれど、ある日本人の友人が言っていたことが的を得ていると思う。

日本人の友人
「一般的に、アジア人はいわゆる白人の人たちと比べて、体質的にアルコールを消化する酵素が少ないからお酒に弱いって言われてますよね。でも逆にお米について言えば、白人はお米を消化する酵素が少ないから、お米を食べるとお腹にもたれるらしいです」

って。この説が正しいような気がするなぁ。

だって逆に考えてみると、日本人で朝からビールを飲もうという気分になる人はそんなに多くはないけれど、ドイツ人は朝からビールも平気な人が多いから。そう考えると、彼ら/彼女らのお米に対する感覚も理解できる気がする。

ドイツ人の子どもが、おいしくお米を食べる方法

といったように、洋の東西で食文化の違いや人の体質の違いはあるだろう。

けれども、若い世代の人たちは、世界中の情報に日常的に触れることが当然として育ってきた。若い彼ら/彼女らにとっては、外国の食べ物を日常的に食べるのも、ごく普通のことになってきている。

ドイツ人の友人の娘さん(当時10歳くらい)もそんな世代。僕自身も何度も会ったことがあって、よく知っているBちゃん。

ドイツ人の友人
「うちの娘のBは、お米が大好きだよ。インドや東南アジアの乾いた細長いお米じゃなくって、日本のモチモチしたお米をよく食べる。

彼女がお米を食べるときはね、炊いたお米をスープ皿に入れる。その上からミルクをタップリかけて、その上に四角にカットしたマンゴーを置いて。それをスプーンで食べる。

これってたぶん、日本人からみたら違和感ある食べ方でしょ。だって、マンゴーって東南アジアの食べ物だからね。でも、Bはこの食べ方が一番好きなんだ」

これを読まれた皆さんは、この食べ方をどう感じたでしょうか。

僕はこれを聞いた当時、お米もいろんな食べ方がされるもんだなぁ、フリーダムな発想だなぁ、と驚いた。

でもこの記事を書きながら、今になって思ったのが・・・、この食べ物って要は、日本のお茶漬けをドイツ人的な世界観に落とし込んだものなのかも。

何を言っているかというと・・・、お米だけを食べ続けるのはおいしくないから、何か少し味のついた身近な飲み物をかける。それが日本だとお茶で、ドイツでそれに相当するのがミルク。

となると次に、少しパンチの効いた味を足したくなって、何かをトッピングとして載せる。それが日本では塩味の梅干しであり、ドイツでは甘味のマンゴー。

なんだ、結局Bちゃんが好んで食べていたものは「ドイツ人的に解釈したお茶漬け」だったのか、と腑に落ちた。

そういう意味では、日本人もドイツ人も全く同じことをするもんなんだ、と思った。そして「人って生まれ育った環境によって世界観が全然違うけれども、でも人としての根本的なところは理解可能で自分と似たようなところがある」って思える感覚がまた強くなった。

ということで、お米にミルクをかけてマンゴーを載せて食べるBちゃんから人生の真理(?)を教えてもらって感謝やな。ありがとう。

なお、この視点のヒントになった僕の過去の記事はこちらです。(→ドイツ人的に解釈したラーメン)

by 世界の人に聞いてみた

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