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モルドバの厳しい生活事情 ~モルドバで聞いてみた①

久しぶりに「旅先で聞いた話」シリーズを書いてみる。

今回は、欧州最貧国と言われるモルドバを2018年に一人旅して、現地の人から聞いた話について。これから何回かに分けて書いてみる。この当時はドイツに住んでいたので、ドイツからの旅。お近くのベラルーシと一緒に回った(ベラルーシで聞いた話は投稿済み)。

この旅行では、会社のPCを持って携帯電話を握りしめて、ちょくちょく仕事しながらの旅。いま考えると、これをワーケーションっていうのかな。

旅の目的はいつもと同じで、現地の人がどんなことを考えながら、どんな生活をしているのかについて話を聞くこと

で、実際に現地でモルドバ人たちから話を聞いてみると・・・、何度も何度も「この国には希望がない」と聞かされた。そういった辛い状況の中で文句を言いながらも、モルドバの人々はなんとか生活を続けていた。そんな話を書いてきます。

どこやねん、モルドバって?

と思う人も多いはず。モルドバはソ連から1991年に独立した国で、ウクライナとルーマニアに挟まれた場所に位置する。って言われても、「だから、それがどこやねーん」って感じかも。いわゆるヨーロッパの中で東の端(右端)のあたりの場所と言った方がわかり易いかな。

ちなみに、リゾートで有名なモルジブと混同されがちだけど、関係はない。

この国に行きたいと思った理由は、この国と人についてイメージが湧かなかったから、自分の中の白地図を埋めたかったことが一つ目。

二つ目は、「モルドバでは生活が苦しくて、2世帯のうち1世帯は誰かが国外へ出稼ぎに行って働いている」という話を聞いて、実際にどんな国なのか、住んでいる人に話を聞いてみたくなった

実際に現地で話を聞いてみると、その国外出稼ぎの話は事実らしい。みなさん、いかに自国で生きていくことが経済的に厳しいか、熱く語ってくれた

さて、それでは、旅で聞いた話を始めよう。

厳しい暮らし向き

モルドバ人女性(1)
「首都のキシナウで一般的な仕事に就いていた場合、月給はだいたい24,000円くらいが相場(*現地通貨を円貨に換算して書いてます)。それに対して支出は、ワンルームのアパートの月額賃料が、給料の半分くらい。つまり12,000円程度。光熱費や水道代が月6,000円くらい。となると、一ヵ月あたり残りの6,000円で生活しなくちゃならない。

つまり、一日あたり200円でしょ。たった200円ぽっちだと、パンを買ったら、それで使い切ってしまうよ。着る服も買わないといけないし、どうやって生活しろっていうのか。

だから、例えば実家が田舎で農業をしていたら、実家から食べ物を送ってもらって食費を浮かしたり。または、いくつかの仕事を掛け持ちして、収入を増やしてみたり。

でもね、結局は長期的に生活が成り立たないから、どこかのタイミングで国外へ出て出稼ぎして、一旦お金を貯めたりしないと、とても生きていけないんだ」

この話をしてくれた人は、僕が泊まっていたホテルの受付の女性。夜中の仕事がない時間を見計らって話しかけて、2時間くらい話し込んで、色々と教えて貰った。

で、その彼女は、夜勤の時間も含めて少なくとも連続18時間は受付に立っていた。更に掛け持ちで他の仕事もしているんだったら、大変だ。

この話に限らず次々と衝撃的な話が出てきて、なんとも言葉を失った。


「厳しい状況の中で、一般的にモルドバ人が人生で大切にしているものはなに?」

モルドバ人女性(1)
みんな生き残ることだけで精一杯。それ以上の余裕はないねー。若い人たちを見ていると、この国がどうあるべきかなんて何も考えてないよ。ただ条件の良い仕事、つまり少しでもたくさんのお金が稼げる仕事を求めて、次々に転職を繰り返しているだけに見える」


「となると、社会主義のソ連時代の方が良かったのかな?」

モルドバ人女性(1)
「ソ連時代の心を未だに引きずっている人は多いねぇ。特に50才以上の人たちは。その当時の方がまだ暮らし向きが良かった。でも、もうソ連はないし、今から新たに社会主義国家を建国することもないからね。だから昔を懐かしんでも仕方ない。

とにかく、この国には未来がない。希望もない。それ以外の適切な言葉がない。ごめんね色々と気が滅入るような話ばっかりして。自分には、こうやって感情豊かに喋ることくらいしか取り柄がないから」

不公正な社会

また、こういった国にありがちな、汚職や特権階級の存在など不公正な社会に関する話をしてくれる人もいた。

高齢のモルドバ人女性(2)
「モルドバ人は、ごく一部の金持ちは大金を持っていて、その他の大半の人たちは本当に貧乏人。街を歩くと分かるでしょ、中にはポルシェをはじめドイツ製の良い車を乗り回している人たちもいて、そういう人たちはどこかから裏金が回ってきている。でも大半の人たちは少ない給料で働いていて、老後も大した年金が貰えない。でも、暖房費は高いし、服も生活費も高い。ごく一部の特権階級の人たちの陰で、大半の人たちは苦しんでいる」

あと、モルドバ人の国民性についても聞いてみた。

モルドバ人はどんな国民性?

モルドバ人女性(3)
「まあ、親切な人たちってあたりかなあ。でも都市部の人たちと田舎の人たちでだいぶ違っている。田舎はストレートな人たちが多い。そして家族を養うことだけが頭の中を占めていたり。都市の人たちについては、仕事仕事で精いっぱいかな。あとは真面目な人が多い。でも、真面目な若者ほど、この国の将来を憂いて未来に絶望しているよ」


「モルドバ人の人生の優先順位は?」

モルドバ人女性(3)
「やっぱり家族だね。でも、結局は家族を養うために、仕事が第一優先になってしまっている。

ところが、そうやって一生懸命働いても、こんな少ない給料でどうやって生活していいのか途方に暮れてしまう。そして、本当に大変なのは年金生活の人たち。例えばうちの祖父は田舎で生活しているんだけど、年金は月額4,000円。一軒家に住んでるから、冬場は暖房費だけで月に15,000円くらいかかる(注:ヨーロッパの寒い地方は、一般的にボイラーを使って家全体を温めるから、冬には高額な暖房費用がかかる)。

当然その収支では生きていけないでしょ。だから、子どもたちが年金暮らしの親を金銭的に支援したりしている。

こんな暮らし向きだから、国民はみんなこの国に全く希望を感じていない。みんな気が滅入っている」


「ソ連から独立してから、ずっとそんな状況が続いているの?」

モルドバ人女性(3)
「いやいや、これでも今はまだ恵まれているんだよ。私が生まれた1992年当時はね、ソ連から独立した直後でひどかった。市場経済へ移行して経済が大混乱していた時期で、食べるものが全然なかった。

例えば私の母親は、朝4時や5時から配給の行列に並んでいたって。そうやって並んでも、貰えるのは僅かミルク一杯だけ私の母親は、そうやって私をなんとか育てたんだって、何度も何度も聞かされた」

ということで、独立した直後は今以上に大変な生活を強いられた様子だった。


こうやってどこかの国を旅行して、「人生で大事にしているもの」とか「国民性」について聞いてみると、だいたいその国の中では同じような話に行きつく。モルドバの場合は、最後は必ず厳しい暮らし向きの話に収れんしていった。


ではまた次回、別のテーマでモルドバ人から聞いた話について書きます。

by 世界の人に聞いてみた

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