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もう二度と行けない私の原風景

今日はマガジン「くじらの寝床」の更新です。

この時期になるといつも思い出す場所

3月11日。私の原風景を失った日です。
東日本大震災で、私の父親の実家があった宮城県石巻市渡波町は
津波で壊滅的な被害を受けました。

海からあまり離れていなかった祖父母の自宅も津波により全壊。
祖父母は家の2階に避難し助かりましたが
親戚が何名か津波や地震により亡くなりました。

祖父母の家があった地域は自宅の再建が難しくなり
祖父母は内陸部への転居を余儀なくされました。

今は復興も進みましたが、町の様子は様変わりしました。
祖父母の家があった場所は、今は駐車場になっています。

私を支えてくれた原風景

子どものころから都市部に住んでいた私にとって、
渡波町ののんびりとした雰囲気が大好きでした。

少し歩くか車を走らせれば砂浜に出ることができ、
海風と波の音を満喫することができました。貝拾い楽しかったな。

海水浴中に父が新鮮な蛤を見つけ、
帰って早速砂を抜いてお吸い物にして食べたこともあります。

海岸沿いには防潮林があって、少し中に入れば別世界。
陽の光が木の葉の間からきらきら輝くように差し込んで、
それはそれは美しく、幻想的な光景でした。

私が渡波町に行くと、祖父はいつも早く起きて海に出て、
釣ってきたばかりの魚を刺身にして朝ごはんに出してくれました。

私が好きな魚の名前は「ねう」だったかな?
もう二度と食べれない故郷の味。

二度と行けない場所。

もちろん心の中に原風景はあるわけで、
行こうと思えば心の中で思い浮かべることで疑似的に戻ることはできます。

でも私はもう一度、あの風景をこの目で見たい。

今は亡き父と共に高速道路を走り
潮風を感じながら祖父母の住んでいたあの場所、あの家へ帰りたい。

父も祖父もこの世を去り、
今あの場所に戻れたとしても、あの頃に戻ることはできない。
むしろ懐かしさよりも虚しさのほうが勝ってしまうかもしれない。

たとえそうであっても
私はもう一度、私の原風景に行きたいです。

#一度は行きたいあの場所

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