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エンタメ日記② トラウマも隕石も、ぶっ壊す!?〜映画「ドント・ルック・アップ」をみて〜

Netflixにて視聴
ドント・ルック・アップ(2021)

ドント・ルック・アップ(2021)
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ
監督:アダム・マッケイ(「マネー・ショート(ビッグ・ショット)」、「ブックスマート」(制作)、)
★2022アカデミー賞ノミネート作品

◆過去のトラウマをぶっ壊してくれた映画

今回ご紹介する映画【ドント・ルック・アップ】は、アカデミー賞候補だそうだ。要素だけみると、超個人的私のトラウマの要素がてんこ盛り。あのレオ様主演で、且つ隕石もの!?怖い。。でも夫も観たがっているし、仕方なく観るか。。と言うところ。
…え?どういう意味?まずは、私のしょうもないトラウマからご説明したい。

◆レオ様のせい?「全米が泣いた」恐怖症になった理由

映画は話題作になればなるほど観るのが億劫である。
話題作とは「全米が泣いた!」的CMをやけに流していると、テーマ曲だけを先に覚えてしまったりするあれである。さらに「アカデミー賞を受賞するかもよ」的な折り紙がついた瞬間にさらにハードルが上がり、視聴を避けがちである。それはなぜか?
やたらと期待して、がっかりしたくないのだ。
私のこの面倒な思考グセはきっと、過去の2つの経験が悪さをしている。

今からウン10年前、お小遣いで映画館に行けるようになった中学生頃。主題歌も含めて「大ヒット」と叫ばれていた2大作品といえば、①タイタニック②アルマゲドンであった。
もちろんその2作品とも、映画館へ友人たちと観に行った。しかし映画館を出た後のファーストフード店での同級生との会話が、なんとも憂鬱で非常に辛かった想い出がある。
そう、【泣けなかった(楽しめなかった)】のである。

今では笑い話、でもその頃は切実。
放課後教室の後ろで、「私こないだ映画で感動して泣いた〜」と言えることが何かしらのステータスだったのだ。しかし人の感情は複雑でなのである。
タイタニックは大人になって再試聴し今では大好きだけど、「友達に恥ずかしくないように私も泣かなくては」「てゆうかこの船いつ沈むの?」なんて思いながら観る大人の恋愛&パニック映画は地獄。
ましてやアルマゲドンについては、子供ながらにもキョトンとするような設定やキャラクター作りの雑さに感情移入が全くできない上に、「さあ、ここで泣いてください!」というお金をかけたしらじらしい演出にほとほと冷めてしまったのであった。これが私の2大トラウマである。
それ以来、全米が泣いた!恐怖症の私。記憶の中には色鮮やかに
【隕石から地球を救うおっさん軍団】とかつての見目麗しい【レオ様】がそれぞれのテーマソングをバックにどーんと座っていたのであった。

◆ありがとう、レオ様…!映画って面白いよおぉ

ドント・ルックバックは、【隕石から地球を救うおっさん軍団の話】でも、【レオ様美しいラブシーン】を見られる映画でもなかった。そして大げさに言えば、私のくだらない過去のトラウマをぶち壊してくれた映画とも言える。
かっこいいオープニングシーンから、感情移入できるか?なんていう緊張を解いてくれたし、ずっと笑えて、泣く必要もない。(←そもそも泣く必要ってなにそれ)終始もしかしたら起こるかもしれない?と思わせる上手く時代を切り取った愛あるコメディ作品となっている。

それにしても…かつての見目麗しかった『レオ様』が、このようないでたちで、どこかにいそうなオジサンを演じていることが、まずスゴイ。
家庭も世間体も取り繕いながら、不器用そうに見えて変に小器用で、絶妙にダサくない。「私が嫁でも、この人は許してしまうな…」と思わせる。この雰囲気はなんだろうか。おーいあの時の私よ。想像していたかい?

取り乱すケイト(ジェニファー・ローレンス)に対して、絶妙に気配を消して立ち回るレオ様

◆全ての立場も、ちゃんと笑い飛ばす誠実さ

『巨大彗星(すいせい)が地球に衝突する可能性を必死に訴える2人の天文学者。だが、情報が氾濫する世界では、誰ひとりとしてその警告に耳を貸そうとせず...。』

そんなシリアスになりかねないのが本映画テーマなのだが、この作品の最もステキなところは、コメディであることそのもの。だから最後までとことん悲劇にならない。
完璧な人間は一人も出てこないし、強者も弱者もひっくるめて、全部を笑い飛ばしながら、状況のヤバさをある意味誠実に伝えていくところ。
主人公2人「隕石を発見してしまった」側も、メディアに求めるポップさ/明るさを演じ続けるTV側の演者も、どちらにも落ち度があり、滑稽である。
それでこそ本当の人間であり社会だ、という感じがして愛せる。

TVの前のわたしのような一市民は「隕石、は?あるわけないじゃん」となってしまいかねないし(かつてアルマゲドンを観ながら、感情が冷めたように)どんな情報も、伝える人を選ぶというのは、国関係なく、社会でも家族間でも良くある、世の常なのだよなあとも思う。
実際、急に画面に現れた鼻ピアスの女性科学者が、地球が滅亡するとカンカンに怒っていたら多分私だって怖がる。

そのくらい、どの国でも、メディアというものは、演出込みで切り売りしているものだ。そして派手な商売の人間は浮気をするし、政治家のオジサンは失言を言うんだなあ。

◆「事実に基づく…かもしれない」と言う言葉に込められたこととは

私は社会派は苦手であるので、難しい批評はできない。
でもこの映画は、そんな苦手意識がある人にこそ、しっかりと届く
愛のこもったコメディだなあとすごく思った。
Netflixの「事実に基づく…かもしれない」と言うこの映画への宣伝文句は、とても巧妙だなと思う。
コロナでの世界の混乱に始まり、多かれ少なかれ、この映画に似通った現象は今も起っていることだ。温暖化は進む一方で今後どんな自然災害があるともわからないし、隕石が落ちる可能性だってゼロではない。
どれも笑えないことだが、この映画は笑わせてくれる。そこにある意味での誠実さを感じる。

オープニングから端端に感じる映像デザインのおしゃれさ。
エンディングのアニメーションで感じる各キャラクターへの愛情。
最後の最後のオチも含めて最高…!なので
ぜひ隅々まで楽しんで観て観ていただければと思う。

・結局、誰が一番幸せ?
自分だったらどうする?
・あのキャラクター、あの人に似ているよね

観終わったあとは、食卓を囲みながら、そんな話に花が咲くかもしれない。
最後の晩餐は、私、なにを食べようかなあ。


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