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プロジェクトマネジメント入門⑨「調達マネジメント」

弊社執行役員の細澤新太郎が、公開経営指導協会さまの会報誌にて連載させて頂いているプロジェクトマネジメント入門に関して、第9弾調達マネジメントについて掲載させて頂きます。

はじめに
コロナ対策、SDGs、DX、カーボンニュートラル、など、ビジネスにおいて時世に沿った課題/検討観点は、絶えず発生しており、これらへの対応/解決を目指す取り組み(プロジェクト)も多く発足しています。「プロジェクト」とは「特定の目的を達成するための、臨時組織による、有期性の活動」と定義されています。企業活動においては、中長期的な観点にて、「課題の解決」や「目指すべき状態の達成」のための取り組みと言い換えられます。
タイトルとなっている「プロジェクトマネジメント」は、いかにプロジェクトを正常着地させるか(Q(品質)、C(コスト)、D(納期)を計画内におさめるか)を主眼とした、プロジェクトの管理技法です。第9回の今回は「調達マネジメント」に関して掘り下げていきます。
 
調達マネジメント
「調達」とは、一般に“必要なものを調えて届けること”を言います。プロジェクトにおいては、外部業者からサービスや製品などを調達することで、この調達に関わる一連の活動を管理するのが調達マネジメントです。調達の対象は作業から技術、知識、製品、機器ほか多岐にわたります。
大きく、「計画」フェーズと「実行」フェーズに分割され、「計画」フェーズでは調達範囲の精査(何がいつ頃どのくらい必要か)、調達プロセスの検討などを実施し、「実行」フェーズでは、取りまとめたプロセスに応じた調達の実施、調達後の契約履行状態のチェックなどを行います。
 
〇計画
調達マネジメントの「計画」プロセスでは、次のような作業を実施します。
・プロジェクトの遂行に必要となる調達項目を洗い出す(何が必要か、いつ必要か、どのくらい必要か)
・調達をスムーズに行うために、選定の方法や契約の方法を予め決めておく
プロジェクトの納期及び求められる品質を考慮した際に、必要に応じて外部への依頼(調達)という判断が行われます。コストも勘案した上で、何が、いつ、どのくらい必要か、に関して精査を行います。作業に関しては、内製(調達をせずに内部で実施する)により知見が内部に貯まる、という観点も存在します。
なるべく早い段階から、調達する内容を具体化する作業に取りかかる必要があります。外部企業に対して調達を実行する場合に、複数社からの見積もりを取得し、品質や価格の妥当性を評価してから調達を行うケースが多くあります。適正に評価するために、外部企業の提案リードタイムも考慮して余裕をもった調達スケジュールを計画するようにしましょう。

※調達範囲定義の例


〇実行
調達マネジメントの「実行」プロセスでは、次のような作業を実施します。
・計画で定義したステップで調達を実施する
・調達後は契約通りの内容 / パフォーマンスが提供されているかを確認する
選定を行うために、調達に関する情報を提供したり、必要があれば、入札説明会を開催したりすることもあります。入札に関しては、あくまでも平等を期すため、特定の業者に有利な扱いをするようなことは避ける必要があります。業者から提案を得るための提案依頼書(RFP)を配布し、得られた提案を評価して業者を選定します。提案依頼書(RFP)提示に際しては、適切な提案がいただける内容になっているか、以下観点などでのチェックを行いましょう。
‐ 要望の must(必ず実現したい)と want(できれば実現したい)を分ける。
‐ 諸元データを提示する(現状の平均、最大、今後想定される平均/最大)
‐ 非機能要件(性能、可用性、セキュリティ、拡張性など)を明確にする。
ベンダ選定においては、提示要件に対しての合致度のみでなく、様々な観点からの評価が必要となります。提案いただいた内容を「誰が」中心となって進めていくのか(ベンダのリーダー/窓口)という情報の把握も重要です。提案時のみスキルが高い人が来ることもあるので、要チェックです。
 

※ベンダ評価シートの例


 
【column:提案依頼書(RFP)を作らないといけないけれど……】
調達には欠かせない提案依頼書(RFP)。提案を依頼するにあたり、現在の業務/システム内容、今回実現したいことなどを開示するための資料です。これをもとに、ベンダなどが見積もりをして提案を行います。
ところで、この提案依頼書(RFP)が必要となって、いざ作成しなければ……という時、自分の会社の現状把握が思いのほか時間がかかるものです。業務一覧、業務フロー、システム全体図、など現状の業務/システムを取りまとめたドキュメントが存在しない/更新されていない、という状態はよく聞きます。現状整理がどの程度の深度で実施できているか、により、提案依頼書(RFP)の作成期間が大きく変わります。時に、1年かけて作らないといけないようなケースもあります。現状を伝えきれていない状況で提案を受けても、後で必ずしわ寄せが来ます。日常的に「現状の整理」を心がけておくとよいでしょう。