プロジェクトマネジメント入門➇「品質マネジメント」
弊社執行役員の細澤新太郎が、公開経営指導協会さまの会報誌にて連載させて頂いているプロジェクトマネジメント入門に関して、第8弾品質マネジメントについて掲載させて頂きます。
はじめに
コロナ対策、SDGs、DX、カーボンニュートラル、など、ビジネスにおいて時世に沿った課題/検討観点は、絶えず発生しており、これらへの対応/解決を目指す取り組み(プロジェクト)も多く発足しています。「プロジェクト」とは「特定の目的を達成するための、臨時組織による、有期性の活動」と定義されています。企業活動においては、中長期的な観点にて、「課題の解決」や「目指すべき状態の達成」のための取り組みと言い換えられます。
タイトルとなっている「プロジェクトマネジメント」は、いかにプロジェクトを正常着地させるか(Q(品質)、C(コスト)、D(納期)を計画内におさめるか)を主眼とした、プロジェクトの管理技法です。第8回の今回は「品質マネジメント」に関して掘り下げていきます。
品質マネジメント
プロジェクトというと、何かと納期や予算に意識が向いてしまいがちですが、何より品質がよくなければプロジェクトオーナーの満足は得られません。そもそも何を目指して開始したプロジェクトなのか、ターゲットとした課題の解消に寄与するものとなっているのか。そのために、プロジェクトのプロセスや成果物の品質を管理する活動が、品質マネジメントです。顧客の要求を満たす成果物を作成するために、その品質を管理する方針や計画を立て、パフォーマンスの検証を行うことにより、改善活動を行っていきます。
大きく、「計画」フェーズと「実行」フェーズに分割され、「計画」フェーズでは品質の定義を行い、その品質を達成するために適用される方針やプロセスなどについて検討し、「実行」フェーズでは、取りまとめたプロセスに応じた検査、それをもとにした分析や評価を行って、品質の低下や非効率的な作業を防ぎ、改善を行います。
〇計画
品質マネジメントの「計画」プロセスでは、次のような作業を実施します。
・プロジェクト方針や顧客ニーズ、品質リスクを総合的に判断して、成果物およびプロセスに対して担保すべき品質レベルを決定する
・決定した品質レベルに対して、マネジメント方法を決定する
単に「品質」と言っても非常にあいまいなもので、それぞれの立場や組織などによって捉え方は違います。まずは、目指す品質レベルが何かを明確にしましょう(定量的に表せるようであれば明示しておきましょう)。併せて、検査のプロセス(誰がどの頻度でどのように)を定義します。検査プロセスが効率的か、欠陥に気づきやすいか、実施した内容/結果が明確に保存されているか、など、後続の改善活動に有用なプロセス設計となっているかを確認します。
また、品質レベルを満たすために必要最低限のコストで検査が行われることも重要です。検査(テスト)は頻度/網羅性を追い求めすぎると、膨大な時間とコストがかかってしまうものです。限りあるリソースでプロジェクトの正常着地を目指す際に、どこまでの網羅性を担保すべきか、どのような頻度で実施すべきかの検討が重要になります。システム開発プロジェクトにおいては、効率性/正確性のために「テスト自動化ツール」を導入するのもひとつの手です。自動化のための、設計、設定、時にコーディングなどが必要ですが、影響がないことを確認するための広範囲での再テストをより短時間で遂行でき、生産性の向上に有効です。
〇実行
品質マネジメントの「実行」プロセスでは、次のような作業を実施します。
・計画で策定した品質基準に沿っているか、成果物およびプロセスをチェックする
※ QC7 つ道具などを活用する(パレート図、ヒストグラム、散布図、特性要因図、チェックシート、グラフ、管理図)
・必要に応じてプロセスの改善を行う
どれほど優秀な計画で忠実に実行したとしても、初めから 100 点の品質で成果物が作成されることはほぼありません。品質チェックをいかに合理的、効率的に実施し、不具合を洗い出せるかが重要です。また、製造した人による検査は「大丈夫であろう」という意識や、無意識下での前提条件を置いた上での検査になることがあるため、製造した人と検査する人を分けることで、作り手では気付かないミスを発見しやすくなります。
【column:不具合の出ないプロジェクトは無い!】
不具合は必ず発生するものです。大事なのは不具合を出さないことでなく、決められたテスト期間の中で、いかに効率的に不具合を改修していくかということです。
計画で決められた品質チェックを行い、障害が発生した時には、原因を究明したうえで改善できれば、それに越したことはありません。ただテスト期間が限られているなら、暫定対応を行って、プロジェクトを止めないようにすることも重要です。
原因究明に時間をかけすぎて、後続処理が止まったら元も子もありません。そして、要因の分析は、できるだけ次のアクションにつながるような分類づけを。例えば「詳細設計のタイミングで埋め込まれたバグらしい」と分類づけされれば、詳細設計書を重点的に見るというアクションにつながります。
また、スケジュールが切羽詰まってくるほどに、今後の不具合の発生確率を軽んじがちです。100件のテストのうち、50件行って、不具合が20件発生しているのに、「残り50件はあまり発生しないはずです」などと“祈り”とも“願望”とも言える気持ちから言い出すケースもなきにしもあらず。
50件のテストで不具合が20件出たら、後半も同じような確率で不具合が出るはず。後続が難しいロジックを対象としたテストであれば、不具合の発生はさらに高い確率になるでしょう。本来なら、時間がかかることを報告したうえで、人手を増やすとか、リリース時期を調整するなどの対策を行うべきところ。都合のよい“祈り”が通じることは、まずないのです。
【プロフィール】
◆名前:細澤新太郎
◆役職:執行役員
◆出身地:静岡県
◆趣味:ロードバイク、漫画、段ボール工作
◆座右の銘:「楽しむ」
◆社内部活動:ボードゲーム部
※ボードゲーム部は、ボードゲームが好きなメンバー 約 15 名が所属する社内部活動です。 社内のレクレーションルームに集まって、 ボードゲームを楽しんでします。 ボードゲームは論理力が試される場面があり、 その人の性格がよくわかります。
【略歴】 大学卒業後、倉庫管理システム(WMS)パッケージベンダーにて、海外事例も含め様々な案件に従事。2008 年、株式会社キューブアンドカンパニー入社。製造業、流通小売業、飲食、運輸業などの事業領域にて、組織戦略、現場改善、システム導入PM/PMOに従事。
【著書】『初めてのプロジェクトマネジメント 〜最短理解で最大成果!』
◆会社概要
企業名:株式会社キューブアンドカンパニー
本社所在地:東京都中央区東日本橋 2-7-1 FRONTIER 東日本橋 7F
代表者:代表取締役 荒内慎孝斗
創業:2007 年 3 月 12 日
事業内容:戦略コンサルティング/IT コンサルティング/業務コンサルティング/パブ リック・アフェアーズ支援/人材教育サービス/通信サービス/WEB サイト運営 等 ホームページ: https://cube-company.com/company/