見出し画像

資料づくりに役立つ“語る“視点、“語られる“視点

こんにちは。コンテンツストラテジストの小田恭子です。
私は日々、組織のコミュニケーション活動全般に関わりながら、読み手の行動変容を促すためのコンテンツを企画・編集しています。
今回は、私がコンテンツをつくるにあたって心がけている「人にコンテンツを届けるために必要な視点」が、さまざまなお仕事でもお役立ていただけることを願い、お話ししていきたいと思います。

自分ごととして“語る”ことが、人を惹きつける

普段、コンテンツをつくることに向き合っていると、どうしても「この企画は届けたい内容ならではの良さ、ならではの“らしさ”が表現できているのだろうか?」「本当にこの企画は、情報を求める人に、広く深く届く内容になっているのだろうか?」と半信半疑になる瞬間が訪れます。
企画や編集を経てうみだしたコンテンツには、必ずしも1つの明確な正解が存在するわけではなく、無限の切り取り方が存在するのです。
例えば、業種や職種を問わず、どんなプレゼンテーション資料をつくるにしても、プレゼンを行う人が誰か、プレゼンを聞く人が誰かによって、その資料の流れや資料に含まれる要素は異なりますよね。その無限の切り取り方の中から、ベストな解を見い出すために、私は次の2つの視点を忘れないようにしています。
プレゼンテーション資料をつくることを例にして説明しますと……

①ストーリーをつくる

  • 今回提案する内容によって、社会や組織、顧客に対して、どんな変化をもたらすことができるのか、背景からプロセス、ゴールまでを一連のストーリーとして語ることで、聞き手側が実現される未来をより具体的にイメージすることができます。
    なぜ実行する必要があるのか、実行するとどんなメリットがあるのか、どういったプロセスを経て実現させるのか、その物語をナレーションしていくイメージですね。

②ストーリーに想いをのせる

  • また、プレゼンテーター側が、物語の作り手として、今回の提案を通じて成し遂げたいことが何なのか、なぜ実現したいと思ったのか、個人としての強い意志を発信することで、その熱や体温が聞き手に伝わり、聞き手とより真摯でポジティブなコミュニケーションを行うことが可能です。
    ある程度の主観をもったプレゼンテーションが、その人が提案する意義、“らしさ”をうみだす秘訣になるでしょう。

いずれの場合も、情報の提供側と受け手側の双方が、自分ごととして主体性を持った”語る”コンテンツをつくることが、人を惹きつけるためには重要です。

多様な立場から“語られる”ように、人に伝える

では、そのプレゼン内容をより深く、より広く人に届けるためには、どのような視点が必要になるかというと、私は「多様な立場からその物語がどう語られるか」、制作の途中段階から具体的に想像してみることだと考えています。
具体的に説明しますと、

  • [プレゼンを行う人の視点]この内容を実際にプレゼンするとき、特にどこに注力して、どこをポイントにして説明するだろうか?

  • [プレゼンを受ける人の視点]その説明を受けた決裁者が求める定量的な成果は何だろうか?ほかに評価する要素、懸念になる要素はあるだろうか?

  • [上申時の視点]この提案を行う目的や提案した結果を、自分や顧客が上司に対して報告するとき、どこをポイントにして伝えるだろうか?不足事項はないだろうか?

  • [社会の視点]この提案が実現されて社会に浸透した場合、顧客やユーザーはそのメリットやデメリットをどう感じ、どのように他者にレコメンドするだろうか?

などなど、提案に関わりうる多様なひとびとからの視点で、資料を客観的に見ていきます。
この提案がドキュメンタリー番組や新聞記事で取り上げられる場合、どの場面や要素が切り取られて報道されるだろうか? なんていう壮大な妄想でも構いません……! 提案がプレスリリースとして発信される場合、どうレポートされるかという視点でもよいでしょう。
そうすることによって、

  • 提案する意義

  • 提案の具体的なゴールや成果

  • 提案がもたらす社会や組織、ユーザーへの価値

  • 提案を実現するために巻き込むべき人や実行するプロセス

  • 提案のコンセプトとなる、核や山場

がより明確に浮かびあがり、プレゼン内容の強度や質を向上させることができます。
プレゼンを聞いた人が、どこを疑問に感じるかな? どこを決め手と感じてもらえるかな? と、この情報をもとに、さらにその先へ「語られる未来」について想像する力を最大限に発揮し、磨き上げていきましょう。

語る、語られることで高まる情報の価値

これらの考え方は、プレゼンテーションの資料づくりだけでなく、他者と何かしらのコミュニケーションが伴うどんなビジネスにおいても汎用することが可能です。
日常の業務においてチャットツールやメール文をつくるときにも、自らが伝えたいことは何なのか、情報の受け手側はどう感じ、それらをさらに他者に伝達する際にどう伝えるのか。想像力をもって考えながら、言葉や目的と向き合うことからスタートしてみると、自分と他者との関係性をより深め、実現したい未来を具体化することに近づけるでしょう。

自分が自分以外の外側に向けて投げかけたメッセージが、多様な人のもとに届き、さらなる付加価値をもったものへと昇華されるとき、つくる喜び、届ける楽しさを心の底から感じることができます。
他者を慮ってどのような言葉を紡ぐべきか、さまざまな立場の人たちと真摯に考え続けることで、多くのみなさんがより豊かな情報生活を送ることをお手伝いできたらなと思っています。