変化していく「日常」

 今、外を歩けば、道にはほとんど、ひとがいない。ヴァレッタはマルタの首都で、働くひと以外にも、観光客が多いところだ。街の目抜き通りであるリパブリック・ストリートも、普段はひとの往来がとてもあるところで、雑踏と会話が活気を演出している。でも今は、いざ歩けば、人間よりも鳩と猫に出会すことの方が多いのではないか。

 ここマルタはイタリアの惨状を横目に、完全なるロックダウンには至っていない。他のヨーロッパ諸国に比べると、マルタで巷を賑わせてるヤツが出るのは比較的、遅く、今のところ、幸にして爆発的には広がっていない。ちょうど今日、100人を超したくらいだと思う。店はほとんどシャッターをおろし、レストランやカフェもデリバリーとテイクアウェイのみの営業が許可されている。ヴァレッタではカフェは4つほど店を開けているが、レストランに至ってはほとんどが門を閉ざしている。

 道行く人々はヴァレッタで働く政府や銀行関係、あるいは建設作業員がおもである。いつも裁判所前の広場にたむろしている近所のじじたちもいない。もちろん、聖ヨハネ大聖堂への入場を待つ列もない。

 「日常」が刻々と変化しつつあるのは明白だ。先の見えない、暗闇に居るようだ。人々が待ちわびるものは、おそらく、ついこないだまでの「当たり前」であろう。ゴドーでなければ良いのだが。

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