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『アオナツライン』感想

 どうもです。

 今回は、2019年3月29日に戯画より発売された『アオナツライン』の感想になります。今月は『バルドスカイ』に続いて、戯画連チャンです(笑)

 ムービーからも音楽からも青春感が溢れ出ておりますね。OP曲「アオナツライン」はKOTOKOさん!いつも通り素晴らしいですわ。作曲はえびかれー伯爵さんで、今作の音楽全般を担当してくださいました。他作品で聴いた事もあり、また新しい楽曲を聴けて嬉しかったです。

 今作、発売当初から気になってはいたんですが、色々あって完全にタイミングを逃していました(笑) サントラ付の初回版は手に入りづらくなっていくし…。そんな中、昨年サントラ新品をフリマサイトで購入し、通常版を買い、積みゲーやる余裕がある今やっとプレイに至った感じです。まじで中古でも然程値が落ちていないので、パッケージで手に入れたい方はお早めの購入をオススメします。なお、PS4とPSVITA版もあり、近々Switchでも発売されるみたいです。

 では、攻略した順番に感想書いていきます。ヒロインは3人です。そこまでメッセージ性が強い作品では無かったですが、そこも軽く触れるつもりです。こっからネタバレ全開なんで自己責任でお願い致します。



1.椎野 ことね(しいの ことね)

 第一印象でも、最後まで終わった今でも、彼女が一番好きです。純粋に可愛い。笑うと更に可愛い。文学少女だった所為か、2人きりの時は乙女っぽくもなるし、大事にしたい想いから独占欲っぽいのも出てて良かった。
 小悪魔系と言われる女性にはなるんだろうけど、そんなのはどーでも良くて。嫌味っぽい態度もわかってやってるから彼女は。跳ね返ってきたら自業自得なんです。でも、それと同じ位、日頃の行いに責任や感謝の気持ちを忘れない辺りが凄い好感が持てる娘でした。だからこそ、彼女は自身と向き合った時には真剣になりすぎてしまう娘でもあって。無駄だったんじゃないか、上手くいくんだろうかと、不安が募ってしまうから、状況や相手に選択を合わせていく。
 そんな自分から逃げる事を止めて、ありのままの自分を自分が受け入れるまでの物語だった様に思います。勿論、学園デビュー前の自分も含めて。そのキッカケが夢であり、それを4人がサポートする形で、ことねもそれを吸収して話が運ばれていったのも綺麗でした。途中、海希の台詞が印象に残っていたので、ここで記しておきます(メッセージ性にも繋がりそう)。

「時間を無駄にするっていうのは、立ち止まってることにだけ使うんだよ」
「立ち止まる……ですか?」
「うん、歩き続けてれば、無駄じゃないと思うんだ。
……その道がどこへ向かっていてもね」
「その道が間違ってたら、どうします?」
「前に進む限り、目的地には近づいてるはずだよ?
それとも、コトちゃんは、後ろ向きに歩いてるつもりかな?」

『アオナツライン』

 ことねはモデル業ではなく、歌を通して自分の強さを認める形になり、最後は気持ちが外に向く様になっていたのも良かったと思います。内面が解決してないと、外側まで絶対に滲み出ないので。そう云った意味では笑顔もありのままの素敵な笑顔になって本当に良かったです。ラスト、挿入歌への繋ぎも完璧でした。



2.仲手川 結(なかてがわ ゆい)

 転校してきた生粋のお嬢様。最後まで印象は変わらず、逞しい娘だなと。欲望に素直で一生懸命になれる。興味と自信に満ち溢れ、常に自然な振る舞いを魅せてくれたのは安心感がありました。グループにこーゆー娘が1人いると雰囲気的にホント安心すると云いますか。でも、女性としては隙だらけで、オマケに抜けてる処もあるギャップが可愛らしかったなと思います。そのくせ、包容力があるのは彼女の一番の武器でしょう(笑)
 そんな性格なので、達観に向ける想いとして口にした、「私の生き方を変えてくれた」や「いつもあなたのそばにいます」に一切邪念とかが無いのが余りに心強かった。初めて出逢った日から、追いかけてくる位ですからね。イイ神経してると云うか、言葉を選ばないなら図太い(笑) その間、大事に大事に育てられた想いに邪念があるはずないんよ。純度100%。
 そんな想いに達観も応え、この先も2人で大事にしていくには…と答えを照らし合わせ、決意を固めていく物語だったと思います。ラストシーンも少し不意打ちを食らったと云うか、彼女が大好きな恋愛映画の様な夢に描いたラストで素敵でした。もう有り余る勢いで、あんな純粋無垢な想いをぶつけられたら堪らんのよ。幸せのお裾分けをありがとう。
 あと、音島フェスのくだりは、凄い雰囲気良かったですし、これぞみんなで成し遂げる夏休み!って感じがあって好きでした。急に「allegretto~そらときみ~」とか云う神曲流れてきて変な声出たし。こーゆーファンサービスはとても良いと思います。戯画が好きになりました(笑)



3.向坂 海希(こうさか みき)

 幼馴染ヒロイン。いつも溌剌としてて人との関係を大切にする娘でした。もう少し深掘りすると、人との距離感を柔軟に調整できる娘。それがポジティブに働く時もあれば、苦しめられる時もあったんだな。って云うのが幼い頃の物語を経て感じる事ができました。時に行き過ぎた気遣いは自分を苦しめていく。そこは本当に不器用で、臆病になるのもしゃーないなと。達観とギクシャクしてる時なんかは見てるこっちも苦しくなりました。
 でも、やっぱり彼女は言葉にする力はあるので、"苦しい"とそのまま表に出す事で助けを借りられたのは、この夏の出逢いがもたらしてくれたモノだったと思います。元々、お姉さんに甘えてたっぽいので、その代わりと云うとアレですが、ことねと結はその役を担ってくれました。女の子同士でしか相談できない悩みもありますし。
 そして、諦める理由や好きになる資格とかは考えるのを止めて、自身の気持ちと、その先にいる達観と向き合う事ができて何よりでしたね。長い間一緒にいすぎて、有耶無耶になってたかもしれない気持ちに触れる。2人が大人に近づいたからこそ、変わっていなかった気持ちの真意に気付ける様になった。その辺りも強調されていた様にも思います。待たせてしまった事には変わりないかもしれないけど、その時間は無駄では無かったと肯定する様な運びはこの√が一番際立っていました。海希も海希だし、達観も達観で良くない処があって。でも、それ含めて辿ってきた道と"好き"を確かめて。遅れてしまった時間を取り戻していこうと、過去ではなく"今"に目を向ける。以上、ここまでが海希√の物語だったかなと思います。

 んで、こっから親友である千尋も交えた話をしていきます。彼はどーせ理解されないとすぐ結論を出す、諦めが早いタイプでした。両親の離婚の件が背景にはあって。海希と達観がくっ付いて欲しいとは思ってるけど、言葉にしたり、働きかけをしたりはしてこなかったので、それをバスケ復帰と云う形で魅せてくれて良かったです。こっそりとやってるのがイケメン(笑)
 そして、ラスト海辺で3人揃って涙を流してしまう場面。やっぱりここが今作のピークでした。千尋が泣いた瞬間にもうダメだった…一番泣かない奴が泣いたら、つられて泣いてしまうんよ。音楽も泣きを後押ししてくれました。千尋は勘違いしていると、3人で過ごした3年間は無駄では無かったと、ここでも海希が言葉にしてくれましたね。"終り"と云うモノはやっぱり悲しい。でも、終りがないと始められない。この夏の終りを忘れない為に、涙を流す3人の姿はプレイヤーにとっても記憶に強く残るモノでした。



4.受け取ったメッセージ

 メッセージ性が特段強い作品では無かったと思いますが、タイトルだけでなく作中でも何度も出てきた"線(ライン)"に触れない訳にもいかないなと思い、軽くまとめてみます。

 "線"は人生を可視化したモノであり、過去・現在・未来と云う時間的な意味合いを持つモノだったのかなと。それぞれの物語を通して、線がどうなったかを簡潔にまとめると以下の通り。

 ことねは、他人の”線”ではなく、自分の”線”を歩める様になりました。
 結は、逢いたかった”線”の隣で、自分の”線”を歩める様になりました。
 海希達3人は、結ばれた”円(輪)”が解かれ、”線”へと形を変えました。

 特筆すべきはやはり海希達。3人だけは線ではなく円でした。ちょっと無理矢理ですが、円は無限遠から見て点とする事もできます。ずっと点と云う"今"を過ごしてきた3人。でも、夏の終りを以て、ずっと続けばいいのにとも願った居心地の良い"今"ではなく、3人は過去と未来も踏まえた"今"を捉えられる様になりました。"線"へと形を変えたから。線になって初めて、「過去は無駄では無かった」辺りのメッセージがより一層響くのかなと思います。そして、TRUEでも語られた「未来は誰にもわからない」これは、だからこそ「今を生きろよ」と素直に受け取りました。
 線で繋がっている以上は、立ち止まらない限りは無駄ではないし、その時はそう感じたとしても未来で無駄じゃなかったと感じるかもしれない。もっと言えば無駄にしない様にだってできる。その為の"今"だと。そうやって、一歩先の未来もわからない中で、"今"の目の前のことを全力で頑張る(頑張った)姿を、"青春"と呼んで良いんだと思います。
 なので、今作は雰囲気的な”青春”に浸らせるだけでなく、"青春"を通して上記の真っ直ぐなメッセージ性があったのかなと思います。

 以上、何か少しでも感じ取って頂けたり、考えのヒントになっていたりしたら幸いです。最後にメッセージ性のヒントにもなった「Blue, Summertime Blue.」の好きな歌詞添えておきます。間違いなく名曲。

Blue, Summertime Blue.
いつか忘れてしまうから
未来の前にある 確かな今日を
僕らは歩いて
Blue, Summertime Blue.

「Blue, Summertime Blue.」(作詞作曲編曲:えびかれー伯爵 歌:紫咲ほたる)



5.さいごに

 まとめになります。

 一切捻った事をしない純粋な名作でした。眩しすぎないゆったりとした夏の雰囲気も、仲の良さが出てるフランクな会話も、本当に心地が良かったです。夏の終りって云う終着点を無視する勢いの、駆け抜ける様な空気感が作品の隅々まである感じもとても好みでした。エンディング後を考えなくて済む位には爽快感があって、それに相応しい余韻も素晴らしかった。キャラソン曲が本当に良い仕事をしてました。また、メインである海希√では本当に素敵な青春物語を見せて貰って感謝しかありません。

 イラストはうみこ先生、以前から好きだったのもあり、大満足です。やっぱ可愛いらしいですね。動きもあるし。あとはデフォルメ感とリアル感のバランス、それが抜群に良くて好きです。成人向けイラストは初めて見たんですけど、意外といけるなと。エッチシーン、3人ともエロ可愛いかった。
 ただ一点、背景もかなり良かったので、立ち絵が近すぎる場面は双方にとっても少し勿体無かった気がします。

 音楽はえびかれー伯爵さん、ボーカル曲は印象に残る様に、劇伴は雰囲気を彩る様に機能してくれていたと思います。やはりピアノは強い。ひたすらに心地良かった。曲によってはリラクゼーション効果あるまである(笑) 特に好きなのは「BLUE」「SUMMERTIME BLUE」「光源」です。ボーカル曲は甲乙付け難いんですが、「Blue, Summertime Blue.」はぶっちぎりで好き。クリア後も無限リピートしてました(笑)

 とゆーことで、感想は以上になります。
もっと早くにプレイすれば良かった!!!と思う位には良かったです。ガッツリとしたシナリオゲーばっかやってたので、こーゆー青春モノもやっぱり好きだなと改めて思えました。改めて制作に関わった皆さん、本当にありがとうございました。戯画作品はまたプレイすると思います!

 ではまた!



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