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2019年4月の記事一覧

売れない花束

売れない花束を抱え
死ぬ事にした夜に
良いざまだなと
誰かの声が聞こえた
幻聴だろうが
別に構わないさ
自分の為だけに行う
此れが最後の仕事
報酬は一切入らない
何時も通りだろう
指を鳴らして消えちまう
跡形すら残らずに

イエローモンキー

人と同じ事が出来ない僕は
居場所が無いんだファーザー
地面を這い蹲りその姿を
踏み付けられては笑われる
そんな夜を繰り返し過ぎ
僕は少しずつ発狂して逝く
懐かしい蛍が舞う川を
もう一度見たいなファーザー
貴方が僕の味方で居てくれた
幼き日々には還れないね

ロンド

罪無き迷い子が彷徨う
戦場で壊れた世界に
天使達は舞い降りて
金色のラッパを鳴らす
蠢く者は全て集められ
震える手を繋ぎ跪く
塩の柱に変わる無実の子に
止まらない慈悲が降り注ぐ
全てを白く染め上げて
輪廻を止める為に呼ばれた
天使達は役目を終える

モシン・ナガン

静寂の中に潜む赤羊
街を警戒しながら歩く猟犬
闇に抱かれ命令を待つ狼
羊は狩られなければいけない
そう教わり生きながらえた
正しいか間違いかの疑問さえ
抱く事は決して許されず
狼の午後は過ぎて逝く
廃道の中で十字を切る赤羊
結末は破滅だと知りながら
己の信仰に従い突き進む
乾いた音を立てるモシン・ナガンに
胸を貫かれ見上げた空は
子供の頃に教え込まれた
終末の世界に何処か似て居た
赤羊を殲滅し尽く

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悪魔と踊れ

疲れ切った顔を隠せず
ネオンの明りに照らされて
呼び止める客引きが
夜の淵を深く染めたよ
何処かで狂いそうな
ニートの叫び声さえも
誰も気にはしないのさ
皆は悪魔と踊るのに夢中で
欲望を札束で買い占める
他人なんか如何でも良いんだ
こんなにも楽しいのだから
さあ今日も悪魔と踊れ
自分が誰か分からなく為るまで

遠ざかる愛しき日々よ

確かに美しい筈の今日
それは音も無く崩れ
振り返る事すら叶わない
私達は確かに生きて
艶やかに咲けただろうか
遠ざかる愛しき日々よ
思い出に残る位なら
跡形も無く消えてくれ
明日を迎える絶望を
少し和らげて生きる為に

花火師

ベルトに差した拳銃を
隠さない花火師
ゆらりと揺れて消えて逝くだけ
五月雨が降る街に潜んで
誰かの命を弾いた後は
自分も誰かに弾かれる
僅かな記憶に写り込んだ
父と母と優しい姉が
さんざめいて薄れる刹那
命がばっと燃えて途切れた

零れ落ちない何かを

激しい後悔に苛まれる不良
羽は有るのに飛べない天使
何処で間違ったのかを
気に掛けてばかりで
今を生きようとはしない
零れ落ちない何かを
その掌に隠し通せたのなら
変われたと信じては
明日も同じ真実を探す
戻れないと気付いて居ても

壊れそうなブーツで

黒かった筈のブーツが色褪せて
爪先の鉄芯は剥き出しの儘
ソールも溝が無くなって
今にも千切れて壊れそうだ
変わり映えのしない街を
まだこのブーツで歩けるのさ
だからあの娘を迎えに行こう
何時もの単車に火を入れたなら
美しいブーツが壊れてしまっても
彼女は素敵ねと微笑んでくれるから

その悲しみに用がある

感傷的な言葉を並べるな
退屈で気が狂いそうだ
巷に溢れ返る誰かの言葉は
もう聞き飽きたんだ
その悲しみに用がある
俺にはもう分からないから
泣き喚いて跪こうが
俺が痛い訳じゃないのさ
その絶望を見せてくれ
口先じゃなく本当の形を
人の姿を保てるのなら
きっと綺麗な筈だろうよ

ラスト・デイズ

生まれ変わりを信じて
生きて来たんじゃないんだ
唯少し太陽が眩しくて
時に貴方を見失ったよ
終わらない日々は無く
止まらない物も無い
此れで最後でも良いと
素直に言えたなら何かが
変わったのだろうか
俺だけに教えてくれないか
砕けない本当の事を
そうすればもう少し
まともに為れると思うから
俺だけに聞かせてくれないか
色褪せない本物の歌を
そうしたらあと少し
生きていける筈だから

花吹雪

海辺を歩く人為らず者
聖書の上に置かれた遺体
ライターを投げ燃やす過去
忘れられない事は何れ
失くしてしまうのだから
嘆かないで愛しい人よ
貴方の事さえ思い出から
通り抜けて散り醒める
欲望に背中を押され
舞い狂う花吹雪の中
生まれた事を後悔しても
余りにも全てが遅過ぎて
観客の居ない喜劇は終わり
優しい悲劇が幕を閉じた

赤紙マリー

禁制品のビスケットは
赤い紙に包まれて
あの娘の手には届かない
悪人が買い占めて
成り金に売られるから
素敵な色だけでも
眺めて見たいけど
異国の戦場へ狩られ
俺達は消えて逝く
赤い紙切れを渡されて

何処かで壊れる音がした

製鉄所で鍛造されたインゴット
淡々と回る機械仕掛けのコンベア
グリスまみれの作業服を纏い
消耗品の犬達は摩耗して倒れる
何処かで壊れる音が聞こえた
其れは機械かそれとも心か
どちらでも替えは用意されて
直ぐに補充され月日は廻り
悲鳴を上げる前に捨てられるのさ