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書評タイムズ#1「オリンピック・マネー 誰も知らない東京五輪の裏側(後藤逸郎 著/文春新書)」

これから読んだ著書に関し、知識の整理がてら書評をまとめていきます。よければお付き合いください!

五輪史上初の延期・無観客開催となった今夏の東京オリンピック。日本人選手の活躍で盛り上がっていたようですが、スペインでは時差もあってかさほど話題にならず。

開催に至るまでのゴタゴタやコロナパンデミック、そして直前のスキャンダルに不安を抱き、嫌気がさした方もいたことでしょう。僕自身、そんなたちです。

個人的にオリンピックに対してはこんな疑念がずっとありました;

アマチュアの大会?プロあかんの?金メダルでもNo.1ちゃうってこと?
NPOってお金こんな儲けられんの?
アスリートファーストや国民のため言うとるけど絶対嘘やん(呆れ)

著者はこういった疑念に対し以下の項目に触れ、弱い立場である我々国民の立場から切り込んで答えてくれています。

① 五輪の歴史とお金の動き
② IOCのガバナンス・関連NPO(企業)
③ 東京五輪招致に至る日本の政治家と企業のきな臭い関係性


特に③は著者の気合がひしひしと伝わります。各機関や関係者にインタビューを敢行。機密資料も手に入れ、森元総理とその周辺の強引な新国立競技場をめぐる神宮外苑開発プロジェクトの真実に迫っています。

ここからは僕自身の見解や想いを少しばかり、

五輪は貴族のもの、順位を競うことは優先事項ではない

そもそもオリンピックは貴族がスポーツを嗜むためのものだということを知り合点がいった。労働者階級から生まれたプロスポーツとは一線を引く。市民のプロスポーツとして発展してきたサッカーが五輪に本格参入しないのはこういう背景があるんですね。

それに運動能力高いやつに、嗜む程度の貴族は太刀打ちできない(昔は体育教師も参加不可)。近代五輪創設者のフランスの教育学者クーベルタン男爵、名前でわかるように貴族です。参加することに意義があるんです。

一部の権力を持った上級国民や大企業が儲けるため

絶対的なIOC憲章を盾に丸め込まれる日本政府。銀ぶらするバッハさんを誰も注意できない。そりゃそうよ、IOCの役員は世界を牛耳ってきた権力者たちなんだもん。

そしてそこに莫大なお金を支払うTOPと呼ばれるトップスポンサーの大企業達。現在はT○YOTA、パナ○ニックといった日本の企業もパートナーで300〜500億円を10〜15年の契約でIOCに支払っています(推測)

また放映権や開発事業プロジェクトに関わる電○や三○不動産に伊藤○商事など、五輪に乗じて大金を得る。夏季大会は猛暑でも北半球のお金がある開催地で8月に実施する理由もそこですね…。まぁ、IOCはアスリートや観客ではなくスポンサー、政府や企業も国民やお客ではなくIOCの顔色見るわね。

政治や戦争とは切り離せない

1936年ベルリン大会ではナチスドイツが聖火リレーや映像作成を生み出し巧みに政治利用して戦争に突入、1960〜80年代の五輪では黒人差別や冷戦など政治絡みの衝突でボイコットする国が続出。

今回に限らず政治や戦争と五輪に問題はつきものなんですね。なんせクーベルタンが近代オリンピックを始めたのは、19世紀戦争で疲弊しきった欧州諸国をスポーツの力で救いたいということがきっかけですから。

まとめ

アスリートの努力やパフォーマンス、それを支えてきた方達の献身。競技を純粋に楽しむ観客。そこに悪者はいません。

また、IOCがスポーツの普及に努め、開催都市の発展に貢献し、男女格差の是正・多様性の寛容といった社会的メッセージの伝播の役割を担っているのも事実でしょう。

しかし、IOCやその利権にあやかる企業の過度な商業主義への不信感が彼らの思う以上に顕著になっているのではないでしょうか。開催都市候補が国民投票による相次ぐ辞退を表明。2024と28の夏季開催都市を24年の唯一の候補地だった2カ国、パリとLAに無理矢理決めてしまう事態に(そこまでして金欲しいか)。倍率1倍(笑)マクドナルドのようにTOP撤退する企業があっても、Airbnbのように新たに乗っかる企業がまた現れるからなんですね…

著者には、東京五輪誘致の際、また延期から実施に至るまで日本で五輪実施の是非を問う国民投票を実施していない(or できない)経緯にもう少し突っ込んで欲しかった。ー終わりー

(おまけのぼやき)

いくら見た目が綺麗でも清廉潔白で汚れのないアイドルがこの世に存在しないのと同じように、オリンピックもアスリートの努力と栄光の表層の下にはドロドロした汚いもんがあると捉えるとだいぶスッキリします。

汚いもの臭いものがあるとバレバレなのに蓋をしようとするからモヤっとする。情報社会では○○時間テレビのように感動ポルノに騙される人も減ってきてるし、IOC、関連企業、政府は見せたくない部分をどう誠実に伝えるかが大切なんじゃないでしょうか?弱い立場である国民に本気で向き合わないとそろそろ痛い目見まっせと。

今回は書評+オリンピックに対する僕なりの見解を述べてきました。募るモヤモヤがあり長くなりましたが、次回からはもう少し短くします。

読んで頂き、ありがとうございました!

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