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マーティが1955年に旅立っていった日は僕にとっても初めて1955年へ旅立った日になった。

1985年10月26日

最近TwitterやInstagram、もしくはYouTubeなどでバックトゥザフューチャーが改めて取り沙汰されているのを見た人はいるだろうか。

一度見たことがあったり、そもそも見たことがない人からしたらなんでこの時期に35年も前に公開された映画が話題になっているかわからないだろう。

逆に今の一文を見て、35周年記念だからかと気づいた人は勘が良い。だがそれだけでは不十分で、この10月に話題になっていることに理由があるのだ。

それが見出しの日付。

バックトゥザフューチャーはアメリカ・ヒルバレーに住む青年マーティが1955年にタイムトラベルするところから始まる。そのマーティがタイムトラベルをした日こそ、1985年の10月26日だった。

だからこの記事を書いている今日(10月26日)に多くの劇場でバックトゥザフューチャーが再放映されたということになったわけだ。

似非バックトゥザフューチャー好き

自分は似非映画好きだと思った人にはバックトゥザフューチャーが好きだと言ってきた。

なんで似非映画好きにはバックトゥザフューチャーが好きだと言うのかはこの記事を見て欲しい。

簡単に言えば、インターステラーよりバックトゥザフューチャーの方が認知度が高く、かつ面白いことを知っている人間が多いからこそ、似非映画好きにはバックトゥザフューチャーが好きだと、私は自己紹介する。

上の記事で紹介しているインターステラーとバックトゥザフューチャー、この二つを並べてどっちが好きかと言われたら三日三晩悩む自信があるが、再放映されるから見に行こうと、映画館嫌いの私の重い腰を上げることが出来るのはバックトゥザフューチャーだろう。

何よりUSJからバックトゥザフューチャー・ザライドが無くなった時は、絶望のはざまを彷徨い、無くなった事実を受け入れたくないがために、十数年ミニオンパークには近づかなかったくらいだ。

それだけバックトゥザフューチャーを好きだと語る自分は言ってしまえば似非バックトゥザフューチャー好きだった。

なぜなら一度とて、バックトゥザフューチャーを劇場で見たことがなかったからだ。

なんでそんなに好きなのに劇場で見なかったか。それは私の生年が1990年代後半だからだ。

わかるだろうか。マーティが1955年にタイムトラベルしたのは1985年で、映画の公開日も1985年。

そう、バックトゥザフューチャーは私が生まれる十数年前に既に放映してしまった映画だった。

それでも私はDVDやブルーレイ、サブスクをふんだんに利用して今までに1~3を通しで30回以上は見てきている。一年に一回以上バックトゥザフューチャーは見ているということだ。

でも私は大画面で、映画館の音響で、バックトゥザフューチャーを見ることはなかった。

それが来る2021年10月26日の今日。私の似非バックトゥザフューチャー好きは正式なバックトゥザフューチャー好きへと昇華された。

私がバックトゥザフューチャーを好きな理由

なんでその映画が好きなの? と聞かれて皆はなんて答えるだろうか。

俳優が好き。ストーリーが好き。監督が好き。メインテーマが、エンディングテーマが。上げればキリがないだろう。

その中で私がバックトゥザフューチャーを好きな理由は、恐らく遺伝子レベルに刻み込まれているからだとしか言いようがない。

ここにきて何を言っているんだと思うかもしれないが、映画を見ていて気付くことが私には沢山あった。

私は小学生の頃からダウンベストを着るのが好きだった。晩秋と晩冬くらいにしか着る機会のないダウンベストを、秋には今か今かと着られるタイミングを見計らい、春先にはまだ着ていられるだろうとチキンレースさながら汗と戦った。

世の中にはありとあらゆるアウターがあるというのになぜこれほどまでにダウンベストに執着するのかがわからなかったが、バックトゥザフューチャーを改めて見直したからこそわかる。

子供の頃から私のヒーローはずっとマイケル・J・フォックス扮するマーティ・マクフライだった。

そしてバックトゥザフューチャーで彼のトレードマークとなっているのがブラウンのダウンベスト。私の中である種のサブリミナルのような効果が働いているのかもしれない。

そんなことかよ、と文句を言いたくなるかもしれないので、もう一つ。

私は40~50年代のアメリカンミュージックを好んで聞く。探しても出てこないような人たちの曲を車で聞いては、同年代の同乗者に文句を言われる始末だった。

高校生の終わりくらいから今までそんな音楽遍歴を刻んでいた自分にとって、特に好きなアーティストがいた。

彼女たちの名前は「The Chordettes」。

代表曲として、皆が知っている曲を上げるとするとロリポップだろうか。

そして彼女たちの曲で一番好きな曲がMr.sandmanだ。

この絶妙なコーラスから紡ぎ出されるメロディーは懐かしさと共に今の音楽にはない新しさのようなものを感じさせてくれる。

何を隠そうこの曲は1955年にタイムトラベルしたマーティが物語のキーになる時計台前の広場に訪れた際にBGMとして使用されているのだ。

何の切っ掛けかYouTubeで見た40~50年代の曲に馴染みを感じたのはバックトゥザフューチャーが切っ掛けであったことに気付いた時は、凄まじい衝撃を覚えた。

今回はこの二つを挙げたが、私の趣味になっているものの多くのルーツはバックトゥザフューチャーにある。

それほどまでに私の人生に影響を与えたバックトゥザフューチャーを劇場で見ることが出来た今日は素晴らしい一日だった。

バックトゥザフューチャーが素晴らしい映画であることの証明

2021年10月26日。この日は思いの外、多くの人間を動かしていた。同年代にバックトゥザフューチャーと言って、反応を示す人は少ない。

再上映されるから見に行こうと誘っても行くと答えた人間は誰一人としていなかった――もちろん私の人望もあるかもしれないが。

だからこそ私はそこまで多くの人間が劇場に足を運ぶことはないだろうと思っていた。たとえ訪れたとしても私の両親くらいの年齢の夫婦とかが、昔を懐かしみにくるのだろうなと。

しかしその予想は大きく外れた。

2019年1月、世界の常識は大きく変化したはずだった。全く知らない人間が自らのパーソナルスペースを犯すことが本当の禁忌とされ、レストランの座席は全て一つ開け、電車の満員具合は変わらなかったが、見知らぬ他人が近くにいることのおかしさが露見した時代だった。

だからこそこの映画館はそのパンデミックが起きたという事実を鈍らせるほどに人が集まっていた。

本来映画館の最前列は、その映画の見にくさから敬遠されがちであるのだが、その座席すらもほぼ埋まる始末。

緊急事態宣言が解除されたとしてもこのような状況が戻って来ることに、私自身は喜びを覚えていた。

バックトゥザフューチャーは1955年にタイムトラベルする映画だが、あの所狭しと劇場を埋め、皆で一つの映画を共有するあの瞬間は、確かに幸福な時間で、まるでパンデミック前にタイムトラベルしたようだった。

恐らく5年後に再度バックトゥザフューチャーは再上映されるだろう。いやされないかもしれない。

でもまた大画面で、大音響でバックトゥザフューチャーを見ることの出来る機会があれば、それ以上の喜びはないだろう。

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