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社会的インパクト投資レポートvol.9:「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド」シリーズ

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは、当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて、定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。

※1 当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら( https://crowdcredit.jp/about/social-investment )もあわせてご参照ください。

今回は本編第9弾として、昨年(2020年)12月より販売を開始しております「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド」シリーズ(※2)についてお伝えいたします。本ファンドシリーズは、ペルー共和国の首都リマと同国南部の都市アレキパにおいて、主に女性事業主向けにマイクロファイナンス(※3)事業を行うCOOPERATIVA DE AHORRO Y CRÉDITO KORI(以下「KORI社」といいます)への融資を対象とするものです。

※2 本ファンドシリーズ販売開始にあたってのプレスリリースはこちら
https://crowdcredit.jp/info/detail/info-1364/ )をご覧ください。また、現在募集中のファンドについてはこちら( https://platform.crowdcredit.jp/fund/ )をご確認ください。

※3 マイクロファイナンスとは、主に新興国の貧困に陥っている方向けに小口の融資や保険などを提供することで、そうした方々の経済的自立を支援するサービスのことです。以下もあわせてご参照ください。

1.  「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド」シリーズの社会的インパクトの概要

近年の社会的リターンに関する世界的な取り組みとして、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」があります。SDGsでは、持続可能な世界を実現するために17の分野で目標を定めています。

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本ファンドシリーズは、主に女性事業主へ焦点を当ててマイクロファイナンス事業を展開するKORI社を実質的な貸付先(海外資金需要者)とするものであり、17の目標のうち主に「1. 貧困をなくそう」および「5. ジェンダー平等を実現しよう」を目指しています。

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以下では、本ファンドシリーズがどのようにこれらの目標の達成に貢献しているかについてご説明いたします。

2. ペルー共和国の経済状況

本ファンドシリーズの実質的な貸付先(海外資金需要者)であるKORI社は、南米のペルー共和国でマイクロファイナンス事業を展開する貯蓄信用協同組合です。ペルーと聞くと、インカ帝国の遺跡マチュピチュやナスカの地上絵を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。フジモリ元大統領に代表されるように、日系人が多く日本との結び付きが強い国というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

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ペルーは南米大陸の西部に位置し、中南米諸国のなかでは6番目の経済規模を有する国です。近年は周辺国と比べても安定した経済成長を実現してきましたが、国の発展度合いを示す指標の一つである一人当たりGDPは中南米諸国のなかでも中堅程度であり、まだまだ発展の余地のある新興国ともいえます。特に「貧困の削減」は、ペルー政府の長年の課題の一つでもあります。月収が概ね日本円にして1万円を割り込む貧困層の割合は、経済成長が続くなかで減少傾向にあるものの、2019年時点でも国民の約2割の人たちが貧困ラインを下回る生活を強いられています。

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3. ペルー共和国の貯蓄信用協同組合およびKORI社の動向

新興国における貧困削減のハードルとして挙げられるものの一つが、金融サービスへの限られたアクセスです。そのような状況をビジネスチャンスと捉え、世界各国では貧困層に小口の融資などを提供するマイクロファイナンス機関が存在感を増しています。

ペルーも例外ではなく、貯蓄信用協同組合などが所得水準の低い人たちに対して金融サービスを提供しています。ペルーの金融セクターにおけるメインプレーヤーは商業銀行ですが、商業銀行での口座開設や借入といった金融サービスを受けられない方たちを対象に、貯蓄信用協同組合などは預金サービスや小口融資を提供し、業界規模を拡大してきました。

業界全体が拡大するなかで、KORI社も資産規模を拡大してきた貯蓄信用協同組合の一つです。2013年2月にペルー南部の都市アレキパで設立されたKORI社は、事業展開地域こそ首都リマとアレキパに限られているものの、女性事業主に対する金融サービス提供という他の組合にはない独自色を打ち出し、順調に業界地位を上げてきました。

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4.  KORI社の事業内容と社会的インパクト

(1)KORI社の事業内容

KORI社は、ペルー銀行保険年金基金監督庁(SBS)の監督下で事業を行う貯蓄信用協同組合です。ミッションとして、「公的な金融機関として金融包摂(金融サービスへのアクセスが限られる個人や法人に資金を届けること)にフォーカスし、効率性をもって人々の生活の持続的な成長を追求する」というものを掲げています。

KORI社の業態が貯蓄信用協同組合であることから、顧客の多くは同社の組合員です。2020年末時点で約14万人の組合員を有し、組合員から預金を募るとともに、これらの資金を借入ニーズのある組合員に融資することで事業を運営しています。融資を受けている組合員は約5万7,000人いますが、このうち95%に当たる約5万4,000人が女性事業主であり、この顧客基盤こそがKORI社の最大の特徴です。

(2)KORI社の顧客基盤

KORI社が事業を展開する首都リマと南部アレキパはそれぞれペルー第一、第二の都市ですが、これらの都市には生活水準の向上を求めて内陸部から移住してきた人たちも多く、そのなかには、満足な教育を受ける機会がなかったために言語に制限があるなどして個人商売に従事している方たちもいます。そのような方たちは、事業規模が小さいことや収入が不安定であること、信用履歴がないことなどを背景に大手の商業銀行のサービスを受けることが難しい状況にあります。ここにビジネスチャンスを見出したのがKORI社です。

同社の顧客基盤をもう少し詳しく見ていきましょう。KORI社は個人商売に従事している方たちのなかでも女性向けに絞っていますが、融資を受ける女性事業主の99%が貧困層に属しています。また78%が独身、うち40%がシングルマザーで、平均2名の扶養家族を養っています。平均年齢は39歳前後です。彼女たちの事業は軽食販売店やオンライン小売事業者、ブティック、理髪店など多岐にわたっています。まさにペルーの人たちの生活に根差した事業に対して金融サービスを提供していることが窺えます。

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(3)KORI社の事業がもたらす社会的インパクト

では、実際にKORI社がどのような社会的インパクトをもたらしているかを見ていきましょう。

①金融サービスへのアクセス向上⇒女性事業主の所得水準向上

最大の社会的インパクトが、KORI社もミッションとして掲げているファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)、すなわち従来型の金融サービスへのアクセスが限られる方たちにも資金を届け、生活水準の向上に寄与するというものです。KORI社は、女性の事業主に対して一人当たり数万円~最大15万円程度の融資を提供しています。女性の事業主はこれらの資金を事業拡大に活用しています。一例として、軽食販売店の場合では最新の調理器具を購入して販売量を増やす、衣料品店の場合ではミシンを購入して生産の効率化を達成するといったものが挙げられます。このようにKORI社の融資が事業の運転資金として活用され、彼女たちの収入増に貢献しています。

2020年末時点で、KORI社の融資を受ける女性事業主は約5万4,000人いますが、同社はこの顧客基盤を数年内に10万人以上へと倍増させる事業計画を立てています。本ファンドシリーズは、KORI社の金融包摂というミッションを通じてペルーの女性事業主の所得水準向上に貢献することを目指しています。

②貯蓄・預金の文化の浸透

「商業銀行が相手にしない女性事業主をターゲットとする」と聞くと、KORI社の事業モデルはリスクが高いという印象を受ける方もいらっしゃるかもしれません。KORI社の融資先が商業銀行のものよりも貸し倒れリスクが高いことは事実です。一方で、女性事業主を13人~50人のグループに束ねて相互に連帯保証をしてもらい融資の回収率を向上させる、融資の際にはその10%の金額を担保として預金してもらうといった施策も講じており、信用リスクの低減に努めています。

とくに後者については、単に担保を取ってリスクを低減させるだけでなく、預金が女性事業主の資産形成に役立つことを浸透させていくという金融教育の側面も有しています。KORI社の預金サービスだけを受けている人たちも含めると、同社の組合員は全体で約14万人いますが、これらの組合員に貯蓄・預金の必要性を訴え資産形成につなげるとう社会的インパクトも期待されています。

③信用履歴の生成

上記よりも長期的なインパクトとして、女性事業主の信用履歴の生成が挙げられます。KORI社は、女性事業主への融資によって収益を上げると同時に、彼女たちがいずれは商業銀行の融資サービスを受けられるよう支援することも目指しています。KORI社の融資を遅滞なく返済し、十分な信用履歴が蓄積されれば、彼女たちは商業銀行からより低金利でより多額の融資を受けることが可能になります。

KORI社にとっては顧客が商業銀行に流れることにもなりますが、彼女たちの信用履歴の生成がさらなる所得水準の向上、事業の安定につながり、これらが同社のミッションにマッチすることからこのような支援も行っています。

5. 結び

ここまでで、「ペルー女性事業主向け協同組合支援ファンド」シリーズの実質的な貸付先(海外資金需要者)の事業を通じた社会的インパクトについてご説明しました。当社では、引き続き本ファンドシリーズを通じて、KORI社およびKORI社の主要顧客であるペルーの女性事業主の活動を支援してまいります。投資家の皆様におかれましては、変わらぬご愛顧のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。
クラウドクレジット株式会社
第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第2809号

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