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社会的インパクト投資レポート<番外編vol.6>:貧困削減とジェンダー平等の関係

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。

※1 当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら( https://crowdcredit.jp/about/social-investment )もあわせてご参照ください。

今回は番外編第6弾になります。ここでは、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs)にある17のゴールのうち、深いつながりのある「1 貧困をなくそう」と「5 ジェンダー平等を実現しよう」の関係性につきまして、ご紹介していきます。

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極度の貧困につきまして

「貧困」という言葉をお聞きになって、皆様はどのような状態を思い浮かべるでしょうか。世界銀行は貧困人口を測るための一つの指標として、国際貧困ラインを定めています。この指標によると、1日に1.90米ドル(約203円、1米ドル=107円換算)未満で生活する方たちを極度の貧困層としており、世界全体の貧困層の数を計測可能なものとしています。

SDGsの前身であるミレニアム開発目標(MDGs)当時は、1日に1.25米ドル(約134円、1米ドル=107円換算)未満で生活する方々を極度の貧困層としておりましたが、国際社会はこのMDGsの達成期限である2015年までに、極度の貧困層の総人口に占める割合を大幅に低下させてきました。下の図をご覧いただくと、この割合が1990年に総人口の約36%だったのが、2015年には約10%まで低下したことが分かります。

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これは、MDGsが策定された2000年当時、多くの貧困層を抱えていた中国やインド、ブラジルなどの新興国の一部が、その後に急速な経済成長を遂げたことにより、世界全体の貧困人口の削減に大きく貢献したためと考えられています。経済成長を通じて貧困を削減するアプローチは功を奏したといえます。

しかしながら、それでもまだ2015年当時では、世界人口の約10人に1人は極度の貧困状態に陥っています。とくにサハラ砂漠以南のアフリカ地域(サブサハラ・アフリカ地域)においては、世界全体の貧困人口の割合を大きく上回る水準(2015年時点で約42%)に止まっています。

MDGsで浮き彫りになった課題~欠けていた「相対的貧困」の視点~

ただ、MDGsにつきましては、そもそも国を単位とした総人口に占める極度の貧困層の割合を低下させることへの課題意識に偏りすぎた感があります。日本の外務省の発行する『2015年版 国際協力白書』の中では、MDGsで積み残された課題として、経済成長を遂げた新興国における国内の経済格差の増大が取り上げられています。つまり、国内における男女や収入、地域の違いによる経済格差の存在が浮き彫りになったのです。

この国内における経済格差の増大は近年、新興国に止まらず、日米欧といった先進国においても注目度が高まっています。最近は各メディア媒体を通じて、その国の一般的な生活水準等と比べ経済的に困窮した状態を指す、「相対的貧困」をいう言葉を目にする機会が多くなったかと思います。こうした相対的貧困の方々は、先ほどの極度の貧困層と比して顕在化しにくいという難点を抱えています。しかし、生活に支障があり、将来に対する不安が大きく、物心ともに安定しないという深刻性を無視することはできません。

貧困とジェンダー問題の根深い関係性

この相対的貧困の中で、「女性の貧困」は日本でも度々議論がなされています。下にある男女の賃金格差を示す”Gender wage gap”をご覧いただくと、日本と韓国の数値が他国と比して相対的に高いことが分かります。

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日本と韓国の2国は、下の「女性の年齢階級別労働力率の推移」をご覧いただくと、欧米諸国では見られない20代後半~30代にかけての数字の落ち込みによるM字カーブが特徴的です。

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従前からの「男性は仕事、女性は家庭」というステレオタイプの意識は徐々に薄れているものの、実際には子育てをしながら就労する社会環境が十分には整っておらず、結果的に女性が家庭を優先せざるを得ず、「非正規雇用」のキャリアを選択するケースが多いようです。男性の非正規雇用の割合は2014年において平均約22.6%ですが、女性は平均約55.6%に上ります。日本ではこうした性別役割分担意識や雇用形態の違いからジェンダーギャップが大きくなっていると考えられます。

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ジェンダーの問題は、経済的な問題だけに止まりません。たとえば、平成30年3月公表の内閣府男女共同参画局が実施した「男女間における暴力に関する調査」によると、女性の約3人に1人、男性の約5人に1人は、配偶者から暴力などの被害を受けたことがあり、女性の約7人に1人は何度も被害を受けているようです。また、被害を受けたことのある人のうち7人に1人は命の危険を感じるような事態に遭遇しています。

配偶者からかどうかにかかわらず、男性からの女性に対する暴力は残念ながら少なくありません。152ヵ国のうち、アフリカ大陸を中心に29ヵ国の女性の50%以上が、男性からの暴力を仕方ないと考えています。これが女性の20%以上となると、実に79ヵ国に上ります。

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また、女性の社会的地位がまだまだ確立しているとは言い難い例として、国別の女性の議員割合や大企業における女性役員の割合の低さが挙げられます。

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統計からは見えない、数字以外の側面からも、ジェンダーの問題を捉えることができます。たとえば、新興国で子育てと仕事の両立のために起業した女性が、融資を受けられないケースは珍しくありません。先進国においても、クレジットカード発行時に付与される信用力が男女で大きく異なってしまったケースや、人材採用で用いていたアルゴリズムに性差別が潜んでいたケースがあります。

このように、ジェンダーの問題は新興国か先進国かを問わず、各所で様々なかたちで起こっており、これは相対的貧困とも根深く絡み合い繋がっています。これを解きほぐし、ジェンダー問題の解消と貧困の削減をあらゆる手を尽くして、同時一体に行っていくことこそが肝要といえるのです。

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