2019年振り返りサムネ

株式投資型クラウドファンディング 2019年市場総括

皆さんこんにちは。
最近は寒さもひどくなり、インフルエンザも流行っているので皆さんもお体にはお気を付けください。(尤もインフルエンザでも普段と変わらず作業をする方も多いかも知れませんが…)

さて、前回は株式投資型クラウドファンディング業務を行っている運営会社について、現在までの市場全体の流れや各運営会社の概要についてお伝え致しました。VCからの調達の場合、担当キャピタリストが誰かが非常に重要と言われるように、株式投資型クラウドファンディングに関しても同じことが言えるかもしれません。各運営会社をより深く知ることが起業家にとっても非常に重要となるでしょう。
日本に株式投資型クラウドファンディングを -ECF市場の創出に挑む事業者たち 概要編-

今回は、昨年2019年の国内株式投資型クラウドファンディング市場の振り返りです。サービスが実際に開始されてから3年目を迎えた株式投資型クラウドファンディングですが、市場の成長はどのようになっているのでしょうか。

過去3年の推移と2019年の実績振り返り

年間実績の動向

三か年推移

上記の図表のように、総調達額、募集案件数、案件成約率、平均調達額の4項目すべてにおいて昨年を下回る結果となり、業界にとって厳しい一年であったことは間違いありません。サービスが開始して3年目を向かえた中でEXIT実績が1件ということもあり、サービス開始当初から投資を行っている投資家や一回当たりの投資額が大きい投資家の、投資余力の低下が影響していると考えられますね。
とはいえ、EXITまでには長い期間が必要となることは自明の理ですし、投資家全体の投資余力の拡大は喫緊の課題と言えるかもしれません。


事業者別調達額比較

次に、事業者別調達額を2017年より振り返ってみたいと思います。
2017年 事業者別調達額比較

2017年実績

2018年 事業者別調達額比較

2018年実績


2019年 事業者別調達額比較

2019年実績


FUNDINNO、エメラダ・エクイティは2018年が最も多くなっており、2019年はGoAngelを含む3社とも大幅に減少してしまっています。
その一方で、上記3社がサービスを開始した2017年以降で初めて、新たなプレイヤーとしてUnicornがサービスを開始しました。
また、年々FUNDINNOの調達額が市場全体に占める割合が高くなっています。一見、FUNDINNOの凄さが露わになったように思われますが、調達額で見た場合昨年の実績を下回っており、まだまだ気が抜けない状況であるでしょう。

2019年の市場振り返り

前回も少しお伝えしたように、昨年は株式投資型クラウドファンディング市場にとって転機となり得る出来事もいくつかありましたので、大きなものをいくつか振り返りたいと思います。

・Unicorn第1号案件の募集開始
7月22日にUnicornの第1号案件であるスポットツアー社の募集が開始されました。募集は約5分で目標金額を達成し、約13分で上限募集額に到達しキャンセル待ち状態になるほどの人気でした。一方で、メール送信障害によって申込者に誤ったメールが送られる問題もあり、一部では不安の声も上がっていました。
また、今年の1月14日から行われたオリーブ技研社募集においても、開始時刻以前から申し込みができてしまう障害が発生し、不安の声はさらに高まることとなりました。
・FUNDINNOを通じて調達を行った漢方生薬研究所社による、日本初のEXIT事例
7月にFUNDINNOの発行者として初めて、あるファンドと一部の株主との間で相対取引を実行。エンジェル投資家の保有する1株500円の株式に対し、750円での買い付けが行われました。
結果として1.5倍のEXIT事例となり、株式投資型クラウドファンディングの投資家へ初の“還元”が実現しました。
・FUNDINNO型新株予約権の実装
9月22日に開始されたPicUApp社の募集より、FUNDINNO型新株予約権が実装されました。株式投資型クラウドファンディングによる調達において、頻繁に論点として上がるのが「不特定多数の株主が増加する」ことでした。(厳密には、株主が増加することによる「反社が混じる可能性」「株主管理の事務負担が増加」「株主同意が煩雑になる」「株主による経営関与」などが論点となっています。)

一方で、新株予約権による調達は投資家が株主ではなく新株予約権者となるので、株主に求められる株主総会(及び議決権行使)や株主同意が必要ではなくなります。(FUNDINNO型新株予約権の場合、一部株主と同様の対応が求められるものもあります。)

そのため、理論上は株主が増加することによる問題は解決されます。しかしその一方で、投資家からすれば株主ではない分権利が弱くなってしまうため、募集が集まりにくくなる可能性は考えられます。

株式と新株予約権による調達については今後のnoteで詳細を書いていきます。
・ユニバーサルバンクによるエメラダ・エクイティの事業譲受
8月には、エメラダ社が行っていたエメラダ・エクイティがユニバーサルバンク社に事業譲渡されました。これにより、ユニバーサルバンク社は日本クラウドキャピタル社に続いて国内2社目の普通株式と新株予約権型を扱う業者となりました。
上記の発表が行われたプレスリリースでは、昨年9月のサービス開始が予定されていたため、計画よりも遅れてしまっている状況となっております。新たなプレイヤーとして株式投資型クラウドファンディング市場を活性化させることが期待されます。
・FUNDINNOによる、事業計画策定ツール「FUNDOOR」のリリース
10月17日よりリリースされた「FUNDOOR」は、事業計画や資本政策、資金調達に必要な流れや資料作成をサポートしてくれるツールです。財務三表を5分で作成できる、IPOまでの株主構成を一元管理し株式分割やストックオプションの計画も容易にシミュレーションできる(FUNDOORサービスページより)など、起業家にとっては難しく、また煩雑でもあった作業を簡易化してくれるツールになります。
これにより、日本クラウドキャピタルはFUNDOORユーザーへの、FUNIDINNO利用のアプローチが可能となり、よりリーチを増やしやすくなるでしょう。今年の案件数の増加に期待が高まります。
・CAMPFIRE社によるDANベンチャーキャピタル社の株式取得
11月にはクラウドファンディング大手のCAMPFIRE社がDANベンチャーキャピタル社の株式を取得したことによって、株式投資型クラウドファンディング市場に参入を果たしました。CAMPFIRE社はこれまでにも購入型、寄付型、融資型クラウドファンディングも展開しており、今回の参入には株式投資型への期待度の高さが露わになっています。クラウドファンディングにおいて圧倒的な知名度と顧客基盤を抱えるCAMPFIRE社の参入によって、株式投資型クラウドファンディング市場がどのように変わるのか。CAMPFIREグループとしての新たなGoAngelの動向に注目です。
・GEMSEEの登録受付開始
金融大手SBIグループのSBI CapitalBase社が準備を進めているGAMSEEが投資家登録を開始しました。こちらも圧倒的な知名度と顧客基盤を持つ大手の参入ということで、サービスの開始に期待が高まります。
・ZUU社とユニコーン社による資本業務提携
12月にはZUU社がユニコーン社の株式を取得し、資本業務提携を締結したことによって株式投資型クラウドファンディング市場に参入しました。2019年10月に融資型を運営する株式会社COOL SERVICE及び株式会社COOLをグループに加えて融資型市場に参入を果たしたばかりの同社がですが、続いて株式型にも参入を果たし、フィンテック・プラットフォーム事業者として更なる拡大に臨んでいることが分かります。

今年は業界に様々な動きがありましたが、その中でも特に目立ったのが、大手資本による参入ではないでしょうか。CAMPFIRE、SBI、ZUUに加え、現在準備中のイークラウド社にも大和系グループ会社の資本が入っており、株式投資型クラウドファンディング市場への期待の高まりが感じられます。
昨年はこれらが大きく動くことはありませんでしたが、エンジェル税制の適用要件が変わる今年はこれら新規プレイヤーを中心に業界全体が大きく変わることが期待されます。FUNDINNOだけではなく様々なサービスが出てくることで、業界全体の認知が上がり、また良い競争環境が生まれるでしょう。

最後に

2019年は、数字だけで見れば市場は縮小しているのではないかとも見て取れますが、その実態は非常に多くの動きがありました。昨年の株式投資型クラウドファンディング市場は嵐の前の静けさのように感じています。
今年は株式投資型クラウドファンディングが生まれ変わる年であるかもしれません。
「2020年=ECF元年」となることを期待しつつ動向を見守り、またそれに寄与できるような情報発信を行っていきたいと思います。
まだまだ情報がクローズドな業界ですので、少しでも多くの起業家、投資家、その他スタートアップに関心のある方々に情報発信をしていきたいと思います。

最後までご覧頂きありがとうございました。
また次回の投稿をお待ちください!

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