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「イギリスの百田尚樹」ポジションに収まりつつあるJ・K・ローリング

(本記事は全文無料で読めます。記事末尾参照)

本日は東京プライドパレードの開催日ですが、空気を読まない情報をお届けします。(記事中敬称略)

先月、「ハリーポッター」シリーズの作者として有名なイギリスの作家、J・K・ローリングが以下のようなツイートをしました。

ローリングの公式Twitterより(ファローのツイートは削除済み。アーカイブはこちら

ローリングが「ビッグラブトゥーユー」とツイートしているのは、キャロライン・ファローという女性。
彼女のツイートを簡単に翻訳すると、自分の18歳になる娘が「非常識なトランスジェンダー活動家に影響されていた」ことで悲しい気持ちになり、「活動家に対するローリングの勇気ある戦い」に感動した! とのこと。

ローリングの「勇気ある戦い」の軌跡をご存じない方は、以下の記事がよくまとまっていますのでご参照ください。

このツイートだけなら、今までの行いと比較して、そんなに批判されるようなものでないのでは? と思われるかもしれません。

しかし実際には、このファローの正体が大問題で、なんと中絶に反対するキリスト教極右活動家なのでした。(プロフィールサイト

Wikipediaの解説によれば、CitizenGoは2013年に結成された草の根保守主義グループで、世界50か国で「キリスト教の大義を擁護」し、同性結婚に反対する人々や、中絶および安楽死反対運動を擁護しているとのこと。

キリスト教徒でない日本在住民には、少々ニュアンスの伝わりにくい部分があると思うのですが、現在の世界的な反トランスジェンダー運動は、キリスト教保守主義と密接に関わっていて、欧米での長年にわたる宗教保守派対LGBT権利活動家のバトルの延長線上にあります。当然、ローリングもそういう人たちに人気があるわけです。

Twitterより、ファンが作った(重要)ローリングを称える画像。ツイート削除済み

このような運動は、欧米諸国では「反ジェンダー運動」として知られており、大雑把な定義ではありますが、「保守的なカトリック教徒が軽蔑するすべてのこと」に反対するものと大まかに規定されています。

日本語で「ナントカジェンダリズム反対」「トランスカルト」「ジェンダーイデオロギー」「セックスイズリアル」とか言ってる人たちがいますが、大体は(知ってか知らずか)反ジェンダー運動のジャーゴンに影響を受けた人たちです。

ブラジル・サンパウロにて、著名なフェミニズム哲学者であるジュディス・バトラーを批判する反ジェンダー活動家の人々。

上の画像のプラカードには「地獄へ墜ちろ」「小児性愛者」と書かれていますが、LGBTQの人々(註:バトラー自身も当事者)を「ロリコン」「ペド」と誹謗するのも反ジェンダー活動家の常套手段です。保守的な彼らにとって、活動家は「子どもに性的なことを教えようとしている」と見えるため、こういうレトリックが広く受け入れられています。

欧州議会によると、こうした運動が世界中で広がった背景には「特定の外国」からの「偽情報キャンペーン」が背景にあったとか。LGBTQの人々を弾圧するために偽情報を流す国!? 一体どんな国なのでしょうか!?

しかしプーチン氏は、「多くの西側諸国で(中略)ロシアと関連するものすべてが、徐々に差別の対象になっている」と、証拠を示さずに主張した。
「ロシアの作家や本を禁止し始めている。ちまたに言う『キャンセル・カルチャー』が、文字通り文化の否定となっている」
プーチン氏はその後、トランスジェンダーをめぐる発言で批判を受けているローリング氏を擁護。
「世界中で何百万部も売り上げた本の作家であるJ・K・ローリング氏は、いわゆる『ジェンダーの自由』支持者のお気に召されなかったがために、キャンセルされている」と述べた。

記事本文より

地元でロシア正教からの篤い支持を受けるプーチンは、彼らの機嫌を取るために様々な暗躍をしていると噂されていて、ローリングへの擁護もそうした狙いがあったと思われます。

日本では「トランスジェンダーについて常識的なことを言っただけなのに誹謗された」と擁護されることも多いローリングですが、こんな運動に乗っかってしまっているので、トランス以外についてもどんどん言い訳がきかない行為を繰り返しています。

先月後半には、同性愛嫌悪のために殺害されたイギリスの医師に関する調査のために、地元当局がLGBTQの象徴であるレインボーカラーなどを使用した捜査キャンペーンを実施したことについて、嘲笑的なツイートをしたことで広く非難されました。

Twitterユーザーからは、サウスウェールズ警察が「美徳の象徴」としてのパトカーを無駄にしていると非難するコメントが相次ぎ、反LGBTQのネット荒らしが殺到しました。
荒らしに対し、警察はこう反論しました。「地域社会を支援することは"バーチャルな"宣伝ではないし、そうすることに何の謝罪もすべきでない」。
警察のこの単純なタイプミス(virtue(美徳)とバーチャルの打ち間違い)は、JKローリングを含む、さらなる嘲笑を引き起こしてしまいました。

記事本文より(拙訳)

実際のローリングのツイートがこちら。わざわざハッシュタグまで使用しています。

警察の捜査の是非は別として、そもそも殺人事件をネタにする感覚自体が信じがたいものですが、LGBTQネタで広く「笑い」を取ろうとするのは、どこかでも見た行動です。

ローリングがいつから「百田尚樹化」し始めたかは定かでありませんが、昔からその兆候はあったという指摘も出てきています。

J・K・ローリングについては、日本では未だにファンも多く、またどんな思想の持ち主であろうと「作品と作者は関係ない」という主張も根強いです。

しかし、認識すべきなのは、彼女の主張が既にただの極右と変わらないということであり、「リベラルなフェミニスト」だったローリングはもうどこにもおらず、差別主義者とパーティーをするのが現在の彼女だという事実でしょう。

日本でもロシアを擁護する自称「左翼」が現れてきて問題になっていますが、「自称と自認は違う」という「常識」をよく知るべきだと思います。

追記:海外極右とメディアの関係について解説するnoteを新たに書きました。

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