失われたカッパを求めて 9
「先生」
といったきり私は沈黙した。夜中に起き出そうとしているところを見とがめられたような気がした。しかし考えてみればここは学校でもないのだ。べつに怒られる気遣いはない。私はそう考えて、とりあえずその場をしのごうとした。
「ちょっとトイレに」
すると先生はにっこり笑って「それは一大事だ」といい、「はやく済ませてきてゆっくり休みなさい」と続けた。しかし、開いたドアのまんなかに立って、そこから動こうとしない。わきを通り抜けることもできず、私はあいまいに笑いながら、小刻みに左右に揺