ぽえ村 春太郎

ぽえ村から来ました春太郎と申します。 ぽえ村の情報発信をするため、no+eに参加させて…

ぽえ村 春太郎

ぽえ村から来ました春太郎と申します。 ぽえ村の情報発信をするため、no+eに参加させていただくことと相成りました。 ステキな村でございます。 いつ訪ねていただいても、きっとみなさま楽しんでいただけるものと信じております。 140字という制限がございます。 詳しい場所はまた本文で。

最近の記事

ちいさな砂漠、塔の一生

いたましいほどの緊張をたたえて、そこに円柱が垂直に屹立している その垂直ぶりたるや、並大抵ではない すこぶるつきの垂直で、実際よりもほそく見えてしまうほどだった そんな緊張感をまとって塔が一基、どこかの砂漠のどこかで 熱波にゆがむ大気をつらぬき、まばゆい太陽を反射しつつ ただ細くひとすじ、今にもなかほどからポッキリ 折れそうなようすで、しかし垂直に ぐるりをすっかりケイ素に囲繞され、塔は一基きりだったが 天までとどく数字の1のかたちをして、めげずにかわいた光を発していたし

    • 【ライフハック】ヘビの編み目をくぐりぬけてカレーパンが落下してきたとき、あなたがするべきたったひとつのこと

      幸いなるかな 町中を等間隔にならぶ無人塔と 無人塔とのあいだを 格子状にいれちがうヘビで編まれた、 迷える衆生を救わずにはいない包囲網をまぬがれて 幸いなるかな 銀河の果てから飛来した カレーパン それはひゅーんとあっけなく わたしのもとへ ちょうど、腹減ったなあと声にだしていたわたしの その口元へスポン、と わたしはしめしめと思いながらも (ここで油断してはならない) あたまのハットをふかくかぶりなおし 左右交互に点滅するヘビどもの目から隠れつつ いそいでカレーパンをや

      • 月曜日の愚痴、あるいは惑星たちのとうめいな循環

        べつにそこがいいと申し出たわけじゃない たまたまそういう順番になっただけのこと みんなと同じところで、ぐーるぐる、とぐろ巻いてたら あ、じゃあ、きみはそこね、って感じで ぽんと置かれただけ たぶんこの場所に意味はない となりもここも、ずっとあっちの方も いくらでも入れ替えていいと思う だけど一回決まってしまったから なんとなくみんなそうしているだけ みんなはいいけどさ それぞれにいい場所だから、ひとにも好かれるし あなたの場所もいい場所だよ、なんて いってくれるけど、じゃ

        • 『生産性の高い人が絶対に取り入れている五つの習慣』

          というようなタイトルの本ばかりをタケシは手に取って読んでいた。 書店の「ビジネス」とか「自己啓発」と書かれた表札の書棚から、 すっと抜き取ってパラリパラリとめくり、二度三度うなずいて、 まさかこんなウマイ話はあるまいが、全部が嘘でもあるまい なんてなことをかんがえながら、一冊、一冊、また一冊、 どんどん読むうち、なるほど、たしかに生産性とやら いくらか、向上しているようではあり、スムースに つつがなく業務の済む日も徐々に増えていって やあこれは助かったぞと思っていたのだが、

        ちいさな砂漠、塔の一生

          脱走ビーバーがついにあんなものをつくってしまうなんて

          ビーバーの喜八はその日もむっくり起きあがって いつものようにのそのそ家を出た あくびをしながら表をあるいていく (道すがらおしっこなどもしながら) でもこの日、喜八はいつものダムの現場につながる曲がり角を、ふいっと反対に折れていった だいぶ日ざしがあたたかくなってきたころで 気持ちがよかったからかもしれない (ビーバーはべつに働かなくてもいいのだ。ただダムをつくるのが楽しくて、またおおぜいでやるのが楽しいから、みんなでしごとだしごとだ、といっているだけなのだ) 梅のかおり

          脱走ビーバーがついにあんなものをつくってしまうなんて

          セラピスト事変

          そのいくさは三重県での、弱小セラピスト同士の小さな ごくささいな、いさかいから始まった いまとなってそのできごとを記憶しているものはおるまい 私は後世のひとびとのため、ここに語ろうと思う 彼らはたがいに互いをセラピストだと知っていたわけではない すなわち職務遂行上の軋轢だったり客の取り合いが問題になったわけではない セラパー(セラピストに教えを請うひとびと)のために 二人はお伊勢さんにお参りする、という動画を撮っていた 平和な一日 暖かい、おだやかな昼下がり 善意に満ちた

          セラピスト事変

          朝の風景、於静岡県

          朝の空気がレースのカーテンをゆらす 窓のそばのフローリングから、テーブルまでのびた網目状の光が 干渉縞をふくざつに変容させながら ゆっくり呼吸する 飛翔体化する予感にはりさけそうな 子一声 まれびとのように 跡を濁さず部屋を斜行した あとには、レディオからかすかな音に変換された 韃靼人の踊り ふるぼけた美術館の収蔵庫みたような色調で しずけさの深度を測っている NAn + De + yaneN !! 声もなく ことばだけが かぎりなく希薄な ことばだけが ちょっと同

          朝の風景、於静岡県

          ネットポルノ中毒ということにされたマルボ族のひとびと

          アマゾン流域にすむマルボ族というひとびとがいた その村にある日、ネット環境が整備された あのイーロン・マスクが運営する会社の スターリンクというステキな名前のシステムでもって すると、それまで外界と断絶された生活をしていたマルボ族のひとびと たちまちワールド・ワイド・ウェッブにからめとられて 怠惰になり、 友達づきあい、近所づきあいが減り、 一日中モバイルにむかってかがみ込むばかりで、 あろうことかネットポルノ中毒にまでなってしまった と、いうフェイクニュースが世界中を巡り

          ネットポルノ中毒ということにされたマルボ族のひとびと

          あじさいの花が小さな空色の虫だったら

          霧雨の小道を犬を装備して歩いていた ちょっといくとすぐに曲がり角だ そのたびに鼻先を角のところに近づけていく 接線の角度を求めた教室の静けさで こんな日は影ができない 塀も、犬も、人間も すべてが濡れてじんわりと発光している おーい、おーい 現場の作業員の呼びかわす声、遠くで すると手元にちょっと負荷がかかって 犬が走りだしたか 人間が歩くのをやめたか 犬はおかまいなし 人間もおかまいなし 雨も、コインパーキングの車たちも、不意の闖入者に鼻先をおしつけられた あじさいの花

          あじさいの花が小さな空色の虫だったら

          アカシアの殺し屋

          泣きながら死ぬか 戦って死ぬかしかない 殺し屋はそういうことばで私の罪悪感を拭い去ろうとした 黒い冷たさのかたまりをベルトに差し込んで殺し屋は立ち上がった 持ち手のところが毛の生えた桃色の下腹をやわらかく押し上げていた 内蔵を冷やしはしないか 風もないのに、アカシアの花が動物の尾のようにわずかに弾んでいた 黄色い粉体のかたまり 自転車が横を通っていくと 磯のなまぐさい風がここまで来ていたことに気づいた 私は公園の便所で用足しをすませ からっぽの内蔵に直接ほそい足が生えた気

          アカシアの殺し屋

          イギリス商店の思い出

          ちょっとした買い物をするとき、妻はイギリス商店にいく 品揃えがよいわけでもなし、安いわけでもなし ちょっと洒落てるといえば洒落てるものの ごおごおおお、 通勤電車がすぐそばを通っていくものだから 声のちいさい店主がレジ越しに値段を告げるのもまるで聞こえない そんな イギリス商店へ おかあさんも行っていたから、ね 妻はまるで、神様のお定めになった自然法則が、そうなっているのだから仕方ないのだ というふうな言い方で イギリス商店通いを正当化するのだ 金だっていくらでもあるわけじ

          イギリス商店の思い出