ぽえ村 春太郎

ぽえ村から来ました春太郎と申します。 ぽえ村の情報発信をするため、no+eに参加させて…

ぽえ村 春太郎

ぽえ村から来ました春太郎と申します。 ぽえ村の情報発信をするため、no+eに参加させていただくことと相成りました。 ステキな村でございます。 いつ訪ねていただいても、きっとみなさま楽しんでいただけるものと信じております。 140字という制限がございます。 詳しい場所はまた本文で。

最近の記事

星の夜

私のこの舟は 運命づけられている いかなるドラマにも遭遇することなく (難破することさえなく) 電子のさざなみにいつまでもゆられて どこへも辿り着かないことを 私は指先を器用にあやつり ちいさな伝書鳩を折りだした あなたのさびしい視線のうちで あたたかい巣でも作りはしないかと望んで 安らぎを求める人がいれば 興奮を求める人もいる 私はあなたと交歓を求める ともに歌うために 聖なる夜を 私とは無縁の星々が飾る 終わりのないもののために 舟がゆっくりと しかも絶えず揺れている

    • きぬぎぬのひろごり

      ぐっと重みが増したかと思うと 直後、ざわめきが肌に感じられた それは一瞬でどこまでも遠く伝わっていって 空間のはてしないひろごりを暗示していた そんなことがあるだろうか 音もない 光もないところの はるかなひろごりを 肌に伝わるざわめきだけで感じとるなどということが ほんとうにこのざわめきは信じられないほど遠いところまで伝播しているのか だけど 肌は たしかに はるばるとした空間がひとしなみにざわめいていると信じている 盲目で 聾唖の 肌 ざわめきのなかでともによろこび ふる

      • 漱石夏目金之助と、虫歯の関係

        私の歯が虫歯だという 歯医者だとみずからを称するこの女がいう 私の歯が虫歯だと 无syiバ、无syiバ、です、という 私の歯が虫歯であることが真実だとして これを受け入れるとして すると 私はすぐさまこんな難問にぶちあたる 私の歯が虫歯なのはたいへんけっこうであるが ひるがえって虫にとってみれば その住処であるところの歯は だれあらぬ虫自身のものではないのか してみるとこの歯は私のものであると同時に 虫のものでもあるということになる この女は私のものであり かつ他者のものであ

        • けれんぶくるかかいんじ

          けれんぶくるかかいんじ ぺこころっぽん、んぬっく んなっく、なっく、んがんぐ ぺっつととろがん、があくるおん ぬたけれんかかいんじをいうぇ ろころこふぇでんて りろろろりろろろ じゃすがっと、んがんぐ がおくりえ、う゛ぃう゛ぃいんだり けれんぶくるかかいんじ すふるせせごうん んぬっく、せせごいふぉん しゃずかっと、えでれととん ぶくくぶくきふぃぬ ふぃねれどんふぃじ むじゅむじゅんそすんた きざこきざこよきざこぶち けれんぶくるかかいんじ…… けれんぶくるかかいんじ

          【ポエ村へのいざない】春太郎と共にレンガをつみかさねることが吉、と出ています。

          もちろんレンガといっても レンガのことではありません テオティワカンの大いなる遺跡をつくりあげた 日干しレンガのことではありません ガーデナー御用達の焼成レンガのことでもありません 成人してからはあまり聞くことのない漢字の部首のレンガのことでもなおさらありません いうまでもなくレンガとは レンガのことに他なりません ことば、と、ことば、 とがぶつかりあう劇場としての かつ伝統芸能としての レンガ ことば、と、ことば、が出逢ってしまうことで ふしぎな chemistry

          【ポエ村へのいざない】春太郎と共にレンガをつみかさねることが吉、と出ています。

          記憶の迷宮

          あ! のりこんだ電車のドアが閉まった瞬間 忘れものに気がついた えらいことをしてしまったものだ 次の停車駅で降りて引き返すのでは とてもじゃないが時間が足りない 忘れてはならないと思って わざわざ机のうえにおいておいたのに 私は置きっぱなしにされている忘れ物の 立派なマホガニーの机のうえにある姿を想像して はたと首をかしげた 我が家にそんな立派なマホガニー材の机などないはずだ しかしいくら思い出しても それはやっぱりマホガニーの机のうえにあった 私はそんなはずはないと思っ

          はぐれテングザルのビジネス

          虫や木の実といった かんたんな食事を終えたテングザルたちは おたがいの毛づくろいをしたり ノミをとったり 木の枝でつつきあったりして それぞれ楽しくすごしていた いつものとおりの jungle の昼下がり 群れからすこし離れたこところに若いテングザル一人 ごろんと横たわってつまらなさそうに肘枕 これもいつもの jungle の光景 (このとき 見えもしないし、聴こえもしない そんなずっと遠くの方で にんげんどもが 『やりがい』 を感じながら 満足げに 生き物を大量に殺して

          はぐれテングザルのビジネス

          河童の痔の治し方

          痔疾に苦しんで 近所にすむ無職の河童が どうにかしてくれと 冷や汗かきつつ駆け込んできて おれは雨粒の数をよむので必死だ 地下道からむくりとはいだしてくる電車 おおきな頭にうちつける結晶質の雨粒 くるしみあぐねて うつぶせに耳を両手でひっかきひっかき 嗚呼 嗚呼 いやだ いやだ いっそのこと、 とおれの玄関で なげやりなことをいう河童だ コップの水がゆっくり融解していく 地球大のアイロン台で ものほしげな木曜日のしわをのばす 痔疾によっていためつけられた肛門の 助けて

          河童の痔の治し方

          あの日、空港で私の見聞きしたすべて

          私は空港の待合で、ラップトップを開いて簡単な仕事をすませていた おおきなはきだしのガラス窓から手入れされた中庭の見える席である この地方特有のおおきな だいだいいろのはな をたっぷりつけた木が等間隔にならんでいて そのあいだをこどもがふたり 縫うように追いかけあっていた こどもの感じているだろう あたたかい日のぬくもりさえ感じられた こどもの走っていく方向に ベンチが置いてあって そこにウンタバッガの老夫婦が腰かけていた さぞ身分のある方なのだろう にこやかに談笑する様子は

          あの日、空港で私の見聞きしたすべて

          悠久の朝の奇跡

          枕からおじさんが這い出してきた そのとき私はちょうど横向きに寝ていたので 頬をかすめてくちびるに触れそうな距離をおじさんが通過していったことになる 私の肉体は反射的にはねあがり 私は無意識のうちにパジャマの袖で鼻のあたりを何回もぬぐっていた 皮脂の不快な臭いがした それは粘膜にすみやかに浸透したらしく 不快なよどみはいつまでも鼻腔にとどまった おじさんはえらそうな顔をして枕元にすわりこんでいた じつに不快な顔である じつに不快なのだから ぶんなぐってやってもいいのだが 眠

          悠久の朝の奇跡

          実験室の風景

          大柄なイタリア人がピッツァ生地を頭上でぐるぐると回転させている 行列なしてぐるりをとりかこむロボットの観衆たちに 笑顔をふりまきつつ ロボットたちは正確に五回拍手して (バン、バン、カン、バン、カン) イタリア人のひっくりかえしたコック帽に2ユーロ硬貨を投入する (チリン) 完成間近の軌道エレベータの話題で町中はそわそわしていた ピッツァ職人の息子も自転車こいであちこち駆け回り噂の収集に余念がない 今日(っていってもどこの今日なのかはわからないけど) 軌道エレベータの反対側

          夏の停止線

          南の海からよく熱せられた 大気がまともに流れ込んできて 私は息を吸い込むこともできないから どうにか涼しいところはないかと仰向きになって 一瞬間をぬすんで息を出し入れしたとき 小鳥が中空でとどまっていることに気づいた ひろげた和紙のような羽を 夏の重量にはりつめさせて あたりをみると木々もそよぎかける寸前で どれもピタリと静止していた 視界の限り陰影のひとつも見当たらなかった 夏の日には こういう瞬間が必ずある 充実と疲労とがバランスする点 生の絶頂が腐敗そのものであるよ

          誰にでも事情はある。誰にでも。

          条件は悪くないですけど、このマンションは出ますね と、さすがにマガオのオジサンにそういわれては 背筋に冷たい震えがきたけど 契約書の賃料の欄をみて 背に腹は代えられぬと引っ越すことに決めた 果たせるかな あれは初日から出た というより今にして思えば出ていたのだ、と思う ガタガタと音がして、トラックでも通ったか わりと新しい建築だから家鳴りでもしたか うとうと ベッドの半睡半醒のなかで、そんなふうにやりすごした のんきなものである ファーストインプレッションが関係性を決める

          誰にでも事情はある。誰にでも。

          道草日記

          私は道草をくう 歩いている途中ではたとくう 小腹が空いたときにくう 大腹が空いたときにはガツガツとくう ちょっと口寂しいときもくう 口のなかが草のにおいで充満して そこだけが360度草原になったような気がする ひろびろとした草原に風がふく そんな草原を私は口のなかに含んでいる 口中の草原で私はねそべったり 走り回ったりする 世にサラダというものあり このサラダを食わず道草をくう私を 巷間、狂と呼ぶ 土に生えた草の どれを食うかで血眼になり 草をくう快活な喜びを忘れて 他者

          できるだけ仕事は喫茶店でやるべき五つの理由。あるいはネコの飛行。

          入った瞬間、はじめてなのに懐かしい感じがした 時間の薄膜が何層にもつみかさなって深い艶をおびた椅子や、テーブル ビロード生地のカーテンは、その隙間からわずかに光を導き入れつつ、劇場の廃墟の緞帳のように、かぎりなく深い静けさを守っていた 昔からずっと存在は知っていたけど、なんとなく入ったことがなかった喫茶店 なんとなく非現実的な雰囲気さえ感じていた店構え 砂糖壺から、銀のさじ一つまで、何一つ見たことがないのに懐かしかった 私は案内された椅子にこしかけて珈琲を待った すると、自

          できるだけ仕事は喫茶店でやるべき五つの理由。あるいはネコの飛行。

          流れもち奇譚

          ずうっとむこうからレーンのうえを鏡もちが流れてくる ここまでくると、レーンが二股にわかれて 鏡もちは右と左とに温和しくわかれていく そして二筋になったレーンはまたずうっとむこうまで流れていく あたしはこのふりわけ作業を任されているチームの一員だ チームは全部で三名 あたし、ワニの安川さん、カブトムシ(無口なので名前を知らない) 自分でいうのもなんだけど、あたしたち、悪くないチームだと思う 大きなミスはしたことないし、なかよく仕事もできている 言い合いになったり、肩にわざと