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音楽と命

読書の秋ということで、
今日はたまたま行ったカフェで
たまたま目に入った本を1冊まるまる読み切ったので
感想文を書いてみます🍂

本を1冊読んだのはいつぶりだろう。
もしかしたら数年できていなかったことかもしれない。

ちなみに今回坂本龍一さんの本ということで惹かれました。
音楽は生命とどんな風に因果があると坂本さんが考えているのか。
また音楽を作るにあたってどんな在り方で制作をされているのか、
非常に興味が湧いたんですよね。

音楽と生命というタイトルだったので
まさか宇宙の話や星座の話が出てくるとは思いませんでした。
そして宇宙の捉え方や表現の仕方もとても独創的だったのが印象的。

でも人間の脳は、そのノイズの中の目ぼしい点、
つまりシグナルを結んで、星座を検出するわけで、
それが科学の営みだということです。

本来ノイズである以前の中から
ある種のロゴスを切り取ってくるという意味では
非常に人工的な営みであるとも言えますね。

音楽と生命より

坂本龍一さんと対談されているのは
福岡伸一さんという生物学者の方なのだけど、これはその方の意見。

ここでいうノイズっていうのは
毎日秒単位で起こる様々な出来事、
その出来事を通じて1秒以下の単位で変化していく感情や思考、
そういう目で見える現実と
目に見えない自分が認識できてない全ての世界は
自分自身が捉えない限り無限の「点」の集まりだと思うから
ノイズと表現されてるのかなと感じた。

出来事も、感情も、思考も、それから行う選択も、
もはや全てを認識することは不可能なくらい
膨大で高速に変化して移り変わっていっているところに
私たちは自分の経験や備わっている本能や記憶から
「これはこう!」と認識することでやっとリアルに捉えることができている。

これを聞いて数年前の自分だったら
「へぇ〜!!」くらいにしか思えなかったと思うんだけど
今の私は「本当そう!」っていう手応えがあるということは
相当細かく現実世界を観測できていることがわかる。

それよりも感動したのが
福岡さんがこの点と点を繋ぐ作業を
「星座を検出する」という表現をされていたことで、
これはそもそも自分が生きているメカニズムが
宇宙にあって、さらに自分は人間以外の可能性を認識できていないと
出てこない表現の仕方だと感じて、感動した。

「星座を検出する」っていうことは
自分には自分のオリジナル宇宙が展開していて
その宇宙を起点に自分の生命の営みが行われているということ。

実際の宇宙もたくさんの星が生まれては消えて、
星座ですら私たちが認識しているものだけではなくて
常に新しいものが生まれては消えている。

よくある〇〇座っていうのもきっとっていうか
ほぼ100%宇宙の数%でしかなくて
実際はもう既にないかもしれないし、
本当はそういう形をしていないかもしれないからこそ、
その枠に囚われることなく
自分の目の前の出来事から自分オリジナルの星を紡ぐ。
おそらくそういう風に現実世界や生きることを捉えられているんじゃないかと思うと震える。

そもそも、起こる出来事を「星」と表すセンスが
シンプルに素晴らしいし、言葉選びが美しすぎる。

どうしても感情が不安定になったり
ネガティブに捉えてしまうような出来事は起こる。
それは人が生きる上で重要なエネルギーとするために
起こることであるけど、その渦中はやっぱり苦しい。

でもそういう時、
「この出来事は今新しい星座の制作過程なのか」
って思えるだけでも
クリエイターの私からするとほんの少しワクワクできる。

抽象度はとても高い例え方だから
当たり前に一般受けはしないと思うけど、
その言葉選びの美学を感じるだけでも心が救われる。

あとは「ロゴス」(論理、言葉)と
「ピュシス」(自然)について語り合われていたのだけど、
改めて言語化の重要性と、言語化の呪縛について考えさせられた。

私は毎日日記を1ページつけていて
いつもマインドや心の整理をするのに言語化するのを大切にしているのだけど
この本を読んで、言語化することだけが重要ではないことに気づいた。

言語化はとても人工的な行動。
もちろん不確定で認識できていない心の様子や思考の整理に
言語化はとても重要であるし、
現状を把握して前に進むためには必ず必要になってくる作業。

だけど、それだけに偏ると
結局自分が知っている言語の範囲内でしか
自分を認識することができないので
言葉のブラッシュアップが起こらない限り
今の自分から変化していくことはない。

だからこそ、ピュシス(自然)的な
音楽やアートや運動や物作りなど
言語以外で自分を表現できる力は開花させておくと
自分の表現の幅がより広がると感じた。

私は情報を入れすぎると
頭の中がどんどん騒がしくなって
文章にすることが多いけど、
そういうのを言葉にできない場合があるので
イラストを描いたり物作りにそのフラストレーションを当てるようにしているのかととても納得した。

私にとって絵を描くことは自分に深く潜っていくこと。
ゾーンに入って集中力が格段に増して
時間の概念から解放されて気づいたら数時間ということが起こる。

このゾーンに入っている間は本当に気持ちがいい。
スピリットと体が100%シンクロして
ここに音楽を聴きながらになると希望や勇気や情熱みたいな
「ぐわっ」と体の底から湧き上がるような
エネルギーの動きと共に絵を描き上げることができる。

そういう絵はやっぱりすごい存在感を持って出来上がる。
言語だけでは伝えられないことも、
ピュシス(自然)の力は迫力だけで伝えることができるので
こういう感性を同時に育むことは
今後の人生をより豊かにしていくと改めて思った。

坂本龍一さんは今年の3月に亡くなっている。
本人が出演するコンサートなどには行けなかったけど
今回この本を読んだことで
以前久石譲さんのコンサートに行ったことを思い出した。

まだお互いに生きているうちに
またリアルで聴きに行きたいと思う。

歳を取ったら養老先生みたいに
昆虫を追いかけたり
動物を研究したり
植物を観察したりして
楽しみたいなと思う。

まだ30代なのにもう80歳くらいのことに対して
ワクワクしているのも変な話だけど
自分の本質はやっぱり「生き物」に在るということが
再確認できた素晴らしく有意義な時間を過ごせた本でした。



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