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ドタバタ米国留学記 #7 いろんなトラブル

念願叶って24歳でロサンゼルスの語学学校へ留学するものの、出発したその日から「ろくに準備もせず出国してしまったことを大いに後悔する」っていう、先が思いやられる衝撃のはじまりからの、英語まみれの授業、寮での生活、クセのある人々など、たった16週間に起きたおもしろエピソードをたっぷりと綴ります。

50ドル案件

学校の授業と、寮の生活と、友人関係と、で手がいっぱいな中、忘れちゃいけないあの事もなんとかしないといけないので、どうしたもんかと考えていました。
一緒に行った子たちとも話すんですけど、「泣き寝入りするしかないのかな」的な雰囲気があるので、「それはダメだ」とワタシが行動を起こす感じになりましてね。
ボロリムジンの運転手に金を巻き上げられたあの件について、友達に話したところ「それは事務局に言った方がいい」「僕が一緒に行くから」と、なんの準備もなく事務局へと連れて行かれました。
(あの運転手は、ジョンだかボブだか、そういうわかりやすい名前だった気がするんですけど思い出せないので、ここでは「詐欺師」としておきます)

学校の事務局は、教育や関連活動に必要な事務作業及び生徒からの問い合わせに対応する業務を行なっています。
スタッフは2〜3人いて、そのうちの1人が入口のデスクに待機 (常駐) しているので、何かあれば学生はそこへ行くらしいんですね。
で、そこへワタシを連れて行ってくれたのは、アルゼンチン人の「パブロ」。
その時いた事務局のスタッフは、金髪で青い瞳のとても感じの良い女性でした。

英語がカタコトなので、知っている単語を並べる状態で「詐欺師」の話をしたんですが、案の定、全然伝わりません。
ワタシが伝えたいのは、「お金を二重に支払ったのはなぜか?」「返金して欲しい」っていう、要因と希望の2つだけなんですけど、状況がややこしすぎて簡単な単語だけじゃ説明できないんですよ。
パブロにはカタコトなりに話したものの、たぶん、ちゃんとは伝わっていない。
でも、「お金を返して欲しいんだ」ってことは理解してくれていて、ワタシの替わりにスタッフに話をしてくれました。

パブロ「彼女がトラブルに合った。お金のことだから、ちゃんと対応して欲しい」(たぶんこう言っている)
スタッフ「What happened ?」
で、2人でワタシを見る。

だから、説明できないんだってば。
説明ができない、ってことも説明できず、思いついたフレーズが ↓
「アイ ウォント トゥ ミート ザ ドライバー.  アイ ウッド ライク ユー トゥ コンタクト ヒム」(詐欺師に会いたいから彼に連絡してください)
これは伝わったようで「 OK.  I'll tell him. 」みたいなことは言われ、事務局を後にしました。

大事なことを何ひとつ伝えられない、言葉の壁。
落胆具合がだいぶひどかったんでしょうね、ワタシ。
パブロは「連絡するって言ってるから、待ってみよう」と、ワタシの両肩に手をのせて慰めてくれました。

とにかく、それからほぼ毎日、事務局へ行っては「彼に連絡は取れましたか?」と聞きました。
「まだ彼とは連絡が取れないの。もう少し待ってね。連絡が取れたら必ず伝えるわ」(たぶんこう言っている)
3週間経っても、ずっとこんな感じ。
たまにスタッフが変わると話をイチから説明しないといけないので、金髪の彼女がいる時だけ尋ねていたんですけど、「まだよ」と簡単にあしらわれるようになってきたんです。

ん〜〜〜〜〜〜。
これはどうしたもんか。
本当に連絡が取れないのか、めんどくさがられているだけなのか。
どっちだ?
ワタシの印象では、後者。
表情からして、そんな感じ。

パブロも心配してくれていて、事務局へ一緒に行ってくれることが何度かあったんですけど、その時は超笑顔なんですよ、その金髪女。
「まだなのよ〜〜 笑笑」みたいな。

ちなみにパブロは、「君、石膏像になってない?」と突っ込みたくなるくらいの、テルマエロマエ風な顔立ちです。
毛量多めで、ヒゲが濃い。
彼女のタイプなんですかね。

それはどうでもいいんですけど、ちゃんと連絡してんのか?って感じなので、もう一人の黒人女性のスタッフさんに話をして、彼と連絡を取りたい旨を伝えました。

それでも、いつまでたっても、「まだよ」の返答しかなく先が見えない状態で、同じ目に合った女性は短期プランを終え日本に帰ることになりましてね。
彼女は事務局には相談しておらず、ワタシがなんとかなればそこに便乗しようかと思っていたようです。
男性の方はまだ寮にいたんですけど、彼もしかり「俺のこともついでに言っといてもらえませんか?」と、ワタシが交渉しているのを知ってお願いしてきたので「それは自分でやらないと」と断りました。
ここはアメリカです。ワタシが彼のことを言ったとしても「なぜ本人が来ないの?自身のトラブルは自分で解決すべきよ」と言われるのがオチですから。
数人で声をあげていればもう少しなんとかなっていたかもしれない、と今更ながらに思いますけど、こればっかりは仕方がないですね。
この状態で1ヶ月、2ヶ月と過ぎて行くことになります。

危機管理意識の差

アメリカでの生活は、(大きな買い物以外は) ほぼキャッシュなので、現金がなくなった時は ATM でおろさないといけません。
日本のキャッシュコーナーは、衝立ついたてがあったりコーナーそのものが小部屋になっていたりして防犯カメラも設置されていますが、アメリカは道端にちょこんとあったりするんです、ATM が。
信じられないですけど。
ATM 周辺にはガードも何もないので、利用する際は安全のために必ず誰かと行って、後ろにいてもらうようにします。
利用する時間帯はもちろん昼間ですけど、周りに誰もいない時でもこれは毎回緊張しましたね。
最初はおろし方がわからなくて戸惑いました。画面に出る文字の意味がわからなくて、何度もやり直したりして。
ってな具合に、画面にガッツリ意識が向いちゃってるので背後に誰か来ても気づきません。
危験ですよ、すごく。
見た目チンチクリンの東洋人なんて、ちょろいに決まってますからね。
どこから見られているかもわからないですし、一度にたくさん引き出すことはせず、手数料がかかっても少額づつおろしていました。

現地で銀行口座を開いちゃおうか、とも思ったんです。そこに送金してもらえば引出し手数料はかからないので。
けど、ワタシは9月には日本に帰るし、今後アメリカに住むかどうかもわからないので、結局作りませんでしたけどね。

ATM の使い方については後に来る日本人の若者に話をするんですけど、忠告を全く聞かずに「暗くなってから1人で ATM に行って現金引き出して振り返ったら、数人立っていてナイフでおどされた」とか言うんですから。
人の話聞いてんのか?
無事だったのをラッキーと思え、って感じですよ。
危機感が薄いというか、自ら危険をまねく行為をしておいて「恐い目に合った」なんていうんでしょうね、日本に帰ってから。

日本の学校が夏休みの時期 (8月) には、1週間だけの短期留学をする大学生がしこたま来たんですけど、とある女子大生が「これからダウンタウンへ遊びに行く」っていうんですね。
週末の、午後の話です。
「夕方以降は危ないから行かない方がいい。地元の人も外へは出ない時間帯だよ」と助言したんですが「大丈夫です。友達も一緒なので」と出かけていきました。
どうなっても知らんよ。
そうは思うものの気になるもんでして、週明けに学校に来た彼女の姿を見てとりあえず安心し、「大丈夫だった?」と声をかけました。
すると「すごく怖かったです〜。怪しい人がいっぱいいるし、行った先も変なパーティーで。でもダイジョブでした〜」

全然ダイジョブじゃね〜し。
それって、マリ◯ァナパーティーじゃね?
夕方のダウンタウンは、売人がウロウロしてんのよ。
よく無事だったわ。

これだから、「平和ボケ」って言われるんです。
こういうは結構いまして、留学という名のバカンスで来るので勉強する気なんて全くないわけですよ。
小綺麗な格好をしてブランドバッグをプラプラぶら下げ、「せっかく来たんだし」って感じで遊びに一生懸命、「自分は大丈夫」と思ってる人たちが大半でした。

ホント、危ない。

こういう日本人の姿に、他国の留学生たちは驚いていましたよ、ものすごく。
「死にたいのか?」と。
そりゃそうだ。
「ブラジルでは、道を渡るのさえ命がけだ」って言ってましたもん。
車が猛スピードで走りまくっているので、歩行者は渡れないんですって。
「事件事故は日常茶飯事だから、自分の身は自分で守らないといけない」っていう国に住んでいる人からしたら、日本はどんな国なんだ?って思うわけですよ。
日本の生活意識のまま来て、こっちのことを知り切らないうちに帰っちゃうので無理もありませんけど。

いろんな国の人のいろんなエピソードを聞かないまま帰国なんて、本当にもったいないですね。
ワタシの留学経験は、25年経った今でも忘れることはありません。
当時は写真も撮っていませんし、手元に残っているのは手のひらサイズのノートだけ。

授業のメモなんかに使っていたノート数ページを元にこのエッセイを書いているんですけど、全ての記憶はワタシの頭の中に記録しているので、できるだけ思い出しておもしろエピソードを綴っていきます。


つづく・・・


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