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デジタルコンテンツを継続的なビジネスにデザインする方法論


現在クレイジータンクは、企業からデジタルコンテンツアドバイザーとして、企画立案からその実装に至るまでアドバイスを求められることが増えています。そのような状況の中で、デジタルコンテンツについて調査したり、店舗見学を行うと共通して感じることがあります。

それは多くのデジタルコンテンツが『デジタルで何かをすれば良い、ただ導入することが目的になっている』という事実です。

図にしてみると…

しかしこのような状況を批判したいわけではありません。

情報社会になって以降、どんどん新しい技術やサービスが開発され、自分たちの事業に最適な新しい技術やコンテンツの"利活用方法"が見つけにくい時代でもあるからです。

その結果、デジタルを深く理解している若手が上司や経営層に新規事業をプレゼンテーションする際、既視感のある提案や誰もが理解・想像できる提案、すぐにお金になると説明できるような案しか通らないのだろうと予測できます。
既視感のあるサービスはビジネス用語で言えばすでにレッドオーシャンなのです。

デジタルコンテンツは万能ではありません。世界を変える可能性はあっても、使い方を間違えれば誰にも価値のない存在になってしまうのです。

そこで私たちは常にこのような図を意識してデジタルコンテンツと向き合っています。

デジタル施策を検討する前に需要を作ろうとする試み


デジタルコンテンツを万能と考えず、まずは需要がどんなものであるかを理解しつつ、さらに"導入したいデジタルコンテンツを導入する前に、先にそのコンテンツ需要を作り出す"という施策を常に模索していきます。

需要を意識した、とあるデジタルコンテンツイベント


デジタルコンテンツ、という言葉の価値を改めて認識したのはTeamLabの猪子寿之さんが出演された情熱大陸を見て、その可能性を再定義できた時です。

『再定義』『改めて』と書いたのは、2006年から地域に眠っている歴史的価値や地域住民へのインタビューコンテンツなどをアーカイブ化したデータを映像化し、都市の中に上映するプロジェクト(神戸芸術工科大学・行政・企業による産学連携事業)「御前浜周辺整備計画」に企画・運営として参加するなど、15年以上前からデジタルコンテンツに関する知見を高めていたクレイジータンクメンバーがいたからです。
このプロジェクトは建築学会でも発表をしました。
(URL:https://cir.nii.ac.jp/crid/1572824502102527744)


国指定史跡の砲台への映像上映会
対岸のマンション風景と映像のコラージュ



このプロジェクトには500名以上の地域住民の方々にご参加いただき、この上映会が終了した後もプロジェクトは10年以上継続して運用していくこととなり、まちづくりという分野において成功例と呼べる活動となりました。

しかし、500名もの方々がイベントにご参加頂けたり、継続してプロジェクトが運用できたことには理由があります。


”有益性””利便性”を超えた『人間性』という手段


人にサービスを提供する時、例えばスーパーマーケットで言えばポイントカードなどは商品やお金に変えられる有益性、多くのアプリは利便性によってその価値が多くの人に伝わっていきます。

まだまだアプリが世間に浸透していない時代、携帯電話を広めるために携帯電話端末を駅などで無料で配ってからアプリなどのソフトウェアで儲けを出したビジネスモデルも有益性に紐づいた施策の一つです。

しかし、これだけ多くのサービスが増えたことで、人はどのアプリを選べば良いのか最適解が見つかりづらくなっています。

Amazon創設者ジェフリー・プレストン・ベゾスは「他のサービスよりも少しだけ差別化するだけでサービスは大きく成長する可能性を持つ」という言葉を残しているほど、多くのデジタルサービスやデジタルコンテンツが飽和状態となっています。

そのような中、デジタルコンテンツを導入したプロジェクト「御前浜周辺整備計画」はなぜ成功した事例となり得たのか。それは利便性や有益性を超えた「人間性」を大切にしたから他なりません。

この整備計画は浜辺の利用ルールやサイン計画を住民や利用者に伝えることが一番の目的で、それをただ伝えるだけでは誰にも浸透しなかったと言い切れます。クレイジータンクメンバーは少なくとも3年間、隔週でワークショップに参加、開催し、辛抱強く利用者と対話を続けました。

3年以上隔週で参加したワークショップの様子
利活用方法を考える藤浩志氏とのコラボレーションイベント
新しく作られたサイン計画看板


そして3年間深く関わりを持つことで、最後にはこう言われるようになったのです。

「君のためなら力になるよ」

この言葉はどんな利便性や有益性よりも伝達能力を上げ、価値伝達の力になります。マーケティングの世界では熱量を持った口コミという手法に近いのかもしれません。

今、多くの企業がSNSなどの影響力によって物やサービスの価値を伝える努力をしていますが、実はこの方法では一瞬の伝達力は得られても、常に変化が求められ、普遍的な継続力にはなりにくいと考えています。

人を大切にし続ける仕組みを作ることは、どんな素晴らしいサービスよりも価値があるはずです。


デジタルだからこそ「人を知る」重要性


現在、クレイジータンクは株式会社ユタカ産業様からご依頼を受け、デジタルサイネージを店舗に導入し、デジタルコンテンツをお客様に使っていただくための企画の相談を受けさせていただいております。

さらにユタカ産業様の記事にもある通り、社内でもデジタルサイネージがどう使われるのか、どのような施策が人を動かすのかなど、社内実験が続けられ、店舗を訪れたお客様にデジタルコンテンツを使ってもらうことの難しさを日々感じています。

ユタカ産業様のデジタルサイネージは、こうした実験の甲斐あって、企業様からもご好評をいただいています。この結果の根源的理由を考えた時、常に「人を知る」ことを大切にしているからだと考えています。

便利だから使ってもらえる、利益があるから話題になる、というだけの時代はもう過ぎ去り『人がどのようなことに興味があり、人がどのようなことに反応するのか』など、普遍的価値を理解することで、デジタルコンテンツはビジネスになり得るのだと考えています。


需要を作り、理解することから始める


「御前浜周辺整備計画」もそうですが、クレイジータンク式需要の作り方には色々な方法論がありますが、そのひとつをご紹介いたします。

最近、ある企業様からのご相談を受け、すぐにお仕事になることとは別に新しいコミュニティを創造し、どのようなご依頼にも展開できるビジネスモデルの基盤となる"需要の卵"を作りました。それが通称「FFマルシェ会」です。

FFマルシェとは兵庫県芦屋市にできたばかりのスーパーマーケットで、その利用者を集めたコミュニティを作ることで、定性データの取得や新しいサービスを開発をした際にスピード感を持って浸透させることができるシステムを構築しています。詳しくは以下の記事をご覧になってください。

新しいサービスを導入する前にこのようなコミュニティを作り出し、サービス導入時に素早く展開できる状態を作っておくことこそ、デジタルコンテンツ、デジタルサービスへの最初にやるべき施策なのだと考えています。

FFマルシェ会の様子


私たちは常に成功例となっているデジタルコンテンツ、デジタルサービスについて研究も進めています。最近では生活協同組合CO-OPが素晴らしいデジタルコンテンツ・デジタルサービスの提供に成功しています。このご紹介はまた別記事で書かせていただきます。

今後、デジタルコンテンツやデジタルに関わるビジネスは大きな需要を生み出すことは間違いありません。だからこそデジタルだけに頼り切らず、人を大切にし、人と人との関わりをアナログで創造することと、そしてそれらの価値をデジタルと組み合わせことが重要だと考えています。


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