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スーパーマーケットのインフラ化はもう一つの愛される資本主義(ビジネス)を創造する


スーパーマーケットをインフラ化、もしくはインフラが持つ責任をビジネス的価値に付与することが可能なのか。そしてその施策はスーパーマーケットやその関連会社にとってどんな価値を生むのか。クレイジータンクは独自に調査を開始しました。

スーパーマーケットをインフラ化


1.スーパーマーケット×非常食


非常食、と聞くとどんな物をイメージするでしょうか。缶詰や乾パン、近年は缶詰に入ったパンなども売られています。しかし多くに場合それらは言葉の通り「非常時の食べ物」であり、美味しさや食べることへの豊かさを追求する物ではありません。長く保存できる物やそのままでも食べられる物、栄養素としても最低限必要な食べ物が主流です。

しかし、スーパーマーケットに長年通っていると、多様な商品の中に「これは非常食になり得る」素晴らしい商品が売られていることがあります。

例えばTOKYU STOREで売られている「永谷園エー・ラベル温めなくても美味しいカレー」。このカレーは美味しいだけでなく、5年の賞味期限、さらに210gの内容量、そして卵と小麦不使用でアレルギーを持つ人でも食べることができます。決して「保存食」として売られてはいませんが、アレルギー持ちの子どものために、災害時の保存食として大量買いし、ストックしているクレイジータンクメンバーもいます。

永谷園エー・ラベル温めなくても美味しいカレー

スーパーマーケットLIFEに売られている「トンボつけもの袋」も災害時に活用できます。大きな地震があると電気が止まり、冷蔵庫も使えなくなります。そんな時に野菜を漬物に変えることで、そのまま保存するよりも長く保管ができ、さらには塩分も体に取り入れ易くなります。

トンボつけもの袋

このように普段は災害用としては売られていなくても、見方によっては災害時に便利な商品をいくつも発見することができるのです。スーパーマーケットを別の視点から見ることで、食べることを楽しみながら災害を乗り切ることも可能にします。


2.インフラ化は未来のスーパーマーケットビジネスの常識となる


インフラ化がビジネスになる、と聞くと疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、スーパーマーケットは本来流通の拠点であり、ビジネスが成立しなければ存在すらできないサービスです。ボランティアのような活動は聞こえは良いですが、実際には持続可能な活動にはなり得ません。

今回のような「防災に関する役割をスーパーマーケットが担う」、と説明すると多くのスーパーマーケット関係者の方は「ビジネスになり得るのか」という疑問が生まれると考えています。しかし実際はむしろこの活動が今のスーパーマーケットを救うのだと考えています。

前回の記事でもご紹介した地域に根差したスーパーマーケット(山梨県北杜市ひまわり市場など)の他に、生活協同組合コープのビジネスモデルがまさにその最たるものです。

スーパーマーケットに導入される新しいサービスがお客様にグロースするかどうかは、便利さやお得さだけではなかなか浸透しないと考えています。店側の売り上げなど資本主義的な欲求とお客様側の欲求の互換性が悪いことが大きな要因です。


浸透しにくい新しいサービスのイメージ

生活協同組合コープのようにお客様からのご意見、定性データを長年に渡って取り続けているスーパーマーケットは、流通の拠点としてだけでなく、災害や生命保険、ネットスーパーも成功をおさめ、特にアプリなどに対してネガティブな印象を持っている人が多いお年寄りであっても使いこなしています。この結果を生み出した大きな要因は、お客様を資本主義的に大切にするだけはなく、人としても大切にする「人を想う」心から生まれるビジネスモデルの構築があったからだと考えています。現に、コープのネットスーパーで購入した野菜が腐っていた場合、電話一本ですぐに交換しに家まで届けてくれます。さらにアプリ推進方法にも「なるほど!」と思わされる施策が講じられています。

これからより高齢化社会やネットスーパーの台頭が叫ばれる昨今において、生活協同組合コープの「街のインフラ」としての機能は、どんなに世界が替わろうとも愛される存在として、安定したビジネスモデルを継続するのだと感じさせられます。

良い商品が置いているから利用する世界から、インフラとしての機能を持つからこそ「愛されるビジネスモデル」になると確信しています。

インフラ的価値に新しいサービスを溶け込ませることができる


3.インフラ化は「伝える」を可能にする


インフラ化はスーパーマーケットの仕事を増やすのではなく、合理的なビジネスに展開することも可能です。

例えば、近年TicktockなどSNSを広告として活用しているスーパーマーケットがほとんどですが、本当の意味で商品や生産者の姿を伝えられているスーパーマーケットは存在するでしょうか。皆無だと思います。

スーパーマーケットに並ぶ商品の中にも「私が作りました」と顔写真と一緒に書かれたシールが貼られた野菜などを目にすることがあります。しかし、それは私たち消費者に伝えているのではなく、見せてるだけの状態になってしまっています。

一方で、インフラ化に成功しているスーパーマーケットは、例えば防災訓練を通して商品の価値を口頭で伝えたり、消費者の思いをダイレクトにお客様に伝えることが可能です。生活協同組合コープでは災害時の料理教室を開くなどの活動をしていて、その際にコープの商品を紹介しています。
https://www.pak2.com/taberutaisetu/no358.html

商品が安い、といった価値だけでなく、本当の意味でお客様に価値があることをしっかり伝えるマーケティング手段になる一つが「スーパーマーケットのインフラ化」だと考えています。

4.インフラ化が本当に可能なのかを当事者に聞いてみる


私たちクレイジータンクは、兵庫県芦屋市でオープンしたばかりのスーパーマーケット「FFマルシェ」をテーマにしたワークショップを開催し、災害とスーパーマーケットについても聞き取り調査を行いました。



FFマルシェは新規オープンしたばかりということもあり、まだ色々なサービス改善を行っている状態でもあることから、利用者の皆様から多くのご意見を伺うことができました。そしてFFマルシェは阪神・淡路大震災の時に高速道路が倒れた場所から数キロに位置することから、大震災経験者の皆様から生の声を聞くこともできました。


参加者全員が阪神・淡路大震災経験者
スーパーマーケットで売られている非常食にもなる商品の紹介
スーパーマーケットで売られている非常食にもなる商品の紹介


このワークショップの時に生活協同組合コープの活動のお話が出てくるなど、リアルな声は定量データを超えた価値を感じさせられました。


このワークショップは継続して行われることが決定し、仮ではありますが「FFマルシェ会」と名付けられ、これからもスーパーマーケットの価値向上に努めていきたいと考えています。FFマルシェ会で得られた知見や知識は、全国のスーパーマーケットにも価値あるデータとして展開していきます。

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