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童話「盲聾の星」第五話

さて、ラムダは他星との衝突を繰り返すうちに、どのようにして星が増えるのかをやっと知りました。そうです、星と星が衝突して躰が欠けた分だけ、新たな星が生まれるのでした。両親が仲間づくりの方法を言えなかった理由が、少しわかったような気がしました。

ラムダがはじめて周りを見渡しますと、どうでしょう、夜空に星は増えたけれど、そのどれもが傷ついた姿をしております。ある者は生まれながらにして腕がもげており、またある者は顔に痛々しい痣があります。これは、自分がほしかった仲間たちと呼んでよいものでしょうか。星が増殖するためには、ただ星同士が衝突して破片を出せばよいのでしょうか、否、それでは空が傷だらけになる一方ではありませんか。

そうとわかったラムダは、自分が恥ずかしくなりました。このままでは、お姫様に顔向けできません。居ても立っても居られず、今までにぶつかってきた星たちのもとを一軒一軒まわって彼らの傷を撫で、乱暴を詫びました。

「痛い思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした」

と、謝ることができる者は稀ですから、星たちはラムダを許しました。どんなに優しいこころでも、孤独に乗っ取られると凶暴化する可能性は誰にだってある。星たちはそれを知っておりました。また、中には、

「いいえ、それでもわたしを生んでくださったのはあなたですから」

 と頭を下げる星もありました。

それからというもの、ラムダは、他の星と力を合わせて増殖するときには、できるかぎり優しく丁寧に接するように心掛けました。多くの破片が飛び散らない分、効率は悪いけれど――つまり、多産ではないけれど――それでももう、他者にむやみに痛い思いをさせたくはありませんでした。

お姫様も安心しました。懐かしさと新鮮さの両方を胸に抱いて、夜空を眺めるのでした。

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