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地域が抱える食の課題をロボットで解決する

静岡銀行 常務執行役員 滝 和彦氏 ×
コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー・沢登 哲也

コネクテッドロボティクスでは、静岡県の食産業の抱える課題の解決に繋がるロボットの開発を進めようとしています。静岡銀行と山梨中央銀行との包括業務提携「静岡・山梨アライアンス」の一環で取り組んでおられた「ベンチャーデット」はそれをバックアップするものになるはずです。

今回、静岡銀行 常務執行役員・滝 和彦氏(以降、静岡銀行・滝氏)に融資の背景を伺いつつ、コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー・沢登 哲也(以降、CR・沢登)との対談を通じて、地域の発展を願う両社が今後どのようなことを実現しようとしているのかを伺いました。
※対談はオンラインにて行われました。

地域にはベンチャー企業の力が必要
―静岡銀行さんは地域に根ざした様々な取り組みをされていらっしゃいますが、現在はベンチャー企業への支援にも力を入れていると伺いました。

静岡銀行・滝氏:はい、ベンチャー企業様とのお取引を充実させようということで、おととしの2021年6月に、東京を基幹とするプロジェクトチームを発足させました。それからまもなく2年経ちますが、ベンチャー企業様やベンチャーキャピタルの方々との広範なネットワーク作りに注力をしてまいりまして、今では一つの部門として本腰を据えて取り組んでおります。
これまで累計150件ほどのベンチャー企業様からご相談受けまして、36件・52億円という融資の実行に結び付いています。当行の中でもお付き合いのなかったベンチャー企業様とのお取引が実現しまして、非常にエポックメイキングな取り組みになっているのではないかと思いますね。

静岡銀行 常務執行役員 滝 和彦(たき・かずひこ)氏

―これまでもベンチャー企業とのお付き合いなどはあったかと思いますが、2021年以降、どのように変わったのでしょうか。

静岡銀行・滝氏:おっしゃるようにベンチャー企業とのお付き合いや出資といったようなことは従前から行っておりました。これまでとは違うのは、単に出資という形でのお付き合いだけではなく、融資という形でのお取引を始めているということです。今回CRさんとのお取り組みも、新しく始まった融資制度を活用しております。具体的には、山梨中央銀行さんと行っている「静岡・山梨アライアンス」によるものです。

静岡県も山梨県も農業を中心とした第一次産業がとても多いものですから、山梨中央銀行さんとは、同じような悩みを抱えておられる取引先に対して垣根を越えてコラボレーションすることで何かソリューションを展開できないか。そうした話を以前から行っておりました。そこで2020年にアライアンスを組みまして、ベンチャー企業に対する協調支援をさせていただいています。

― 山梨中央銀行さんとのお取り組みにということですが、CRの沢登さんは静岡にも山梨にもご縁がありますよね。

CR・沢登:そうですね。山梨は私の出身地ですし、静岡は私自身が浜松市で6年間働いていたことがあります。静岡にいた頃の経験が、ある意味私がロボティクスに関わる転機になっていますので、静岡からスタートしたような気持ちでいます。我々は今シリーズBの段階で、特に資本業務提携に力を入れています。食産業を革新したいという思いを持った大手企業と組んで、食産業の自動化・付加価値の向上に取り組んでいるところです。中でも食品工場に注力しておりまして、昨年3月に、惣菜の盛り付けロボット・Delibot™(デリボット)をリリースしました。食品分野においてこれまでは繊細な生鮮食品や多品種の惣菜などを機械が扱うのは非常に難しかったんですね。そこで、我々がそうした部分に対応できる汎用性のあるロボットを提供することでお役立てできるのではないかと。どんどん食品工場へ導入して、日本の食産業・食文化を高めていきたいなと考えております。

そうした中で、今回のような静岡銀行さん・山梨中央銀行さんをはじめとする金融機関による長期融資は、我々にとっても非常に心強いものです。2025年末のIPOを目指しておりますので、そこに向けて日本全国にロボットの普及を進めていきたいと考えています。

コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー 沢登哲也(さわのぼりてつや) 
東京大学 工学部計数工学科卒業、京都大学大学院 情報学研究科修了。MIT発ベンチャー企業でロボットコントローラ開発責任者を経て、2011年に独立。 2014年にコネクテッドロボティクス株式会社を創業。 2017年4月より食産業をロボティクスで革新する研究開発事業をスタート。 

労働力不足の地域企業にインパクトを起こす

―今回の静岡銀行さんからの融資は非常に大事なタイミングだったわけですね。そもそも静岡銀行さんとCRさんはどのような出会いから始まったのでしょうか。

CR・沢登:我々は2022年の始めに、あおぞら企業投資さんからベンチャーデットという長期の融資を受けました。その頃、静岡銀行さんと山梨中央銀行さんも同様の取り組みをされるという話を聞きまして、私にとっては思い入れのある静岡県と生まれ故郷である山梨県ということで非常に親和性を感じて、コンタクトを取らせていただきました。

静岡銀行・滝氏:最初はプロジェクトチームの担当者から、「CRさんとぜひ関係構築したい」という話がありまして、その後、沢登さんとお会いしました。CRさんの小金井市のオフィスに訪問させていただいたのですが、想定していた時間をだいぶオーバーするほど話が盛り上がりましたね。沢登さんのお話があまりにも魅力的でしたので。
CR・沢登:ありがとうございます。

静岡銀行・滝氏:これは日本全国で言えることだと思いますが、飲食店やスーパー、食品工場などは慢性的な労働力不足に苛まれている現状です。我々のホームタウンである静岡県というのは、海にも面していますし山も近くて農産物も豊富です。そのため食品関連の工場やスーパーなどがたくさんあるのですが、いずれも労働力不足に悩んでおられる。特に従業員の方の高齢化問題というのは避けて通れない状況になっています。また、規模が大きいところばかりではありませんので、大規模な機械導入にも躊躇してしまう。そうしたジレンマに陥っている取引先が非常に多いものですから、CRさんには、単にご融資をさせていただくだけでなく、ぜひとも困っている企業をサポートいただきたいというところもあり、今回の話に至った経緯があります。

ー取引先にとってもプラスになると思われたのですね?

静岡銀行・滝氏:静岡県は第一次産業だけではなく、自動車・オートバイをはじめとする製造業の分野でも有数の県です。ですので工業製品の製造分野といったところにおいては、ロボティクス分野の企業様とはお取り引きをしてまいりました。一方で、今回のような食品加工といったところはこれまでにはなく、そうした意味でも非常に新鮮ですし、可能性を感じております。

CR・沢登:そう言っていただけて嬉しいですね。

地域企業とベンチャー企業で相乗効果を生む

―CRさんは現在「食産業の自動化」に力を入れていらっしゃり、日本全体に広げていくということですが、どうしたら地域でも導入が進むのでしょうか。

CR・沢登:先ほど申し上げたように、まずは我々が汎用性のあるロボットをしっかり提供できるようになる、というのがあります。たとえば様々な食材の盛り付けができたり、検品できたり、蓋を閉めたりなど、食品製造の過程で必要な動きを一貫して行えるようになるということですね。

加えて、小規模の企業様でも導入しやすいようにファイナンスモデルにもイノベーションを起こしていくことが重要だと考えています。つまり新しいビジネスモデルでロボットを提供していくこと。既に外食では行っていますが、いわゆるこれまでのような減価償却で設備を導入していただくのではなく、月額や年額で利用できるようなスキームを構築する必要があります。そうした両面で提供していくことが重要ではないかと。

―思い入れのある地域で、そうした革新的な取り組みが実現できるのは感慨深いですね。

CR・沢登:そうですね。これはたまたまなんですが、冒頭でお話しした惣菜の盛り付けロボットは、静岡県にあるマックスバリュ東海さんが最初に導入いただいたというご縁もあります。私にとってゆかりの深いこの静岡県でこのような取り組みができていることも非常に嬉しいですし、今回、静岡銀行さんとのご縁を大切に、静岡をもっともっと盛り上げることに私も貢献できるよう頑張っていきたいですね。

以前、浜松市で働いていた頃に感じたのは、自動車・バイク・楽器など、この地域にはイノベーションを起こし得る技術や人が集積しているということ。そうした中で互いに刺激し合うことで、相乗効果を生んでいけるんじゃないかなと思います。

静岡銀行・滝氏:そう言っていただけると、同じ静岡の人間として涙が出るほど嬉しいですね。ベンチャー企業様へのご融資の拠点として普段は東京におりますが、頭の片隅には必ずホームタウンである静岡のお取引先に何か生かせないか、という発想は常々考えているところです。
CRさんはそういう意味でもまさにフィットする会社さんだと考えております。また、静岡の会社にプラスになるという視点だけではなく、これから販路拡大をしていくCRさんのような志あるベンチャー企業の方にとっても、協業の候補として静岡県内の会社を紹介することでWin-Win の関係になれると思っております。ですので、ぜひ今以上に関係性を深めていきたいなと考えています。
たとえば、静岡銀行では静岡県と共催して「TECH BEAT Shizuoka」という催し物を企画しておりますが、こういったところにも出ていただくなど、どんどん繋がりを広げていっていただけたらと思います。

CR・沢登:ありがとうございます。静岡県にどんどん還元していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

―今後まずまずご縁が広がりそうですね。ありがとうございました。

クレジット)
協力:静岡銀行:https://www.shizuokabank.co.jp/
提供:コネクテッドロボティクス株式会社:https://connected-robotics.com/本記事は2023年2月の取材をもとにしています。