音楽もエコも、制約があるほうが面白い。BREIMENが考える“50年後に残るもの”
今、音楽業界ではインターネットの発展により隆盛を極めるサブスク配信が主流となりつつありますが、音楽が溢れ流されていく時代に、彼らが考える「50年後にも残る音楽」を作る方法とは。
曲作りへのこだわりを伺っているうちに、思いがけないエコへのヒントを頂きました。
音楽も生活も、「制約」が新たな面白さを生む
ーー今、音楽好きのあいだで話題沸騰中のBREIMENのみなさんですが、普段の生活で環境問題について考えることはありますか?
いけだゆうたさん:
無駄遣いはしないようにしていますね。
我々は仕事の現場で、ペットボトルの飲み物をもらうことが多いんです。
メンバーたちはみんな自分のペットボトルに名前を書かないから、結局誰のかわからなくなっちゃって、以前は大量に残った飲み物を処分していたのですが…。
まあ、僕はちゃんと名前を書いているんですけどね。
高木祥太さん:
おい、自分だけいい顔するなよ(笑)。
いけだゆうたさん:
まあまあ(笑)。
そういうのはもったいないから、なるべくメンバー同士で言い合って、名前を書くようにしています。
サトウカツシロさん:
無駄をなくすって話だと、僕がよくごはんの食べ残しをするから、「もったない」って言って、Kannoが食べてくれるよね。
So Kannoさん:
彼が残す分を考えて、自分の分をよそってるんですよ…(笑)。
高木祥太さん:
でも、そもそも音楽ってすごく電気を使うから、環境問題と相性が悪いと思うんですよ。だから、無駄遣いをしないのはもちろん、僕たちミュージシャンにしかできないことを探していかないとな、って。
たとえば、「ステージのエネルギーを全て太陽光でまかなう『THE SOLAR BUDOKAN』のステージに立つことも、そのひとつだと感じますね。
ーーそれでいくと、高木さんは作曲をするとき、生活音からインスピレーションを得ることがあると聞きました。同じように、自然の音から曲作りのアイデアが浮かぶことはありますか?
高木祥太さん:
ありますよ。特に2022年7月に出したアルバム『FICTION』は、映画をテーマにしていたので、自然音や環境音を楽器で擬似的に作りました。
ーー『FICTION』のなかの1曲『あんたがたどこさ』の制作では、高木さんが車のアクセルを踏んだ音からインスピレーションを受けて、サビに雅楽器である笙(しょう)の音を入れたいと考えたとか。
林さんにサックスを使って笙の音を再現してもらったと知って驚きました。
ジョージ林さん:
『FICTION』の制作では、いろいろな制約を設けて曲を作ることにこだわったのですが、笙の音をサックスで再現するというのも、制約の1つでした。
笙を誰かに吹いてもらって、そのまま音を入れることもできるけど、それって時間とお金さえかければ誰にでもできることですよね。
なんでも手に入るこの時代に、自分たちで考えて音を再現したり、難しくても時間をかけてでもやることが面白さに繋がるんだと思います。
もしかすると、そういう考え方がある意味、エコに繋がるのかなって。
ーーたしかに、簡単に手に入るものじゃなく、難しいから面白いってあるかも。
高木祥太さん:
エコでも音楽でも1番大事なのは、アイデアだと思うんですよ。制約がない完全な自由な状態よりも、あえて制約があるほうがアイデアが出やすい。
ーーなるほど。ちなみに、そのアイデアが枯渇したときは、どうするんですか?
高木祥太さん:
とにかく、遊びますね。
『FICTION』を制作するときは、みんなで合宿したんですけど、どんなに考えても何も出てこないってなったら…。
いけだゆうたさん:
一旦、離れる。
高木祥太さん:
そう。離れるのが大事。
サトウカツシロさん:
でも、本当に枯渇してる状態ってちょうど今だよね。
全部振り絞ってアルバムが完成して、無事リリースされてから、この2ヶ月間は1曲もできてません(笑)。
ーーええっ!それって大丈夫なんですか?
高木祥太さん:
だから、今はアイデアを湧かせるために遊んでます。曲はできていないけど、ライブに出ることでアイデアが潤ってきてる感じはするかも。
録音した音楽の良さもあるけど、ライブでは俺らが演奏して、お客さんに聞いてもらうっていう、音楽の1番原点的なやりとりに立ち返れる。
アルバムを出してからも、実際にツアーで生で聞いてもらってお客さんの反応を受け取ったときに、ようやくアルバムが完成した感じがするんですよ。
サブスクとかCDじゃ、文字の反応は見れても、お客さんのリアルな表情は見れないですからね。
大量生産・大量消費の時代に、50年残る音楽を作るには
ーー今はモノやコンテンツなどあらゆるものが、大量生産・大量消費の時代だと思います。
音楽もインターネット上で配信されることによって、どんどん消費されて流れていってしまう気がするのですが…。
高木祥太さん:
僕も同じことを思ってました。
Spotifyの機能に、1ヶ月間の平均リスナー数を表示する「月間リスナー」というのがあるんですけど、やっぱり曲もリリースした月だけ数字が上がるけど、その後どんどん減ってっちゃうんですよね。それを見てると、本当に悔しくなって。
しょうがないとは思うんですよ。でも、しょうがないって諦めるだけじゃなくて、たくさんのものが流されていく時代で絶対的に残るものを作りたいと思ってます。
80年後でも、BREIMENのファーストアルバムを聞いてる人がいてほしい。…あれ、80年後って、俺ら何歳?
いけだゆうたさん:
111歳。
サトウカツシロさん:
俺ら、もう、死んじゃってるよ(笑)。
高木祥太さん:
80年後は盛ったとしても、せめて50年後。
そのときに残ってる音楽って、結構すごいと思うんすよ。たとえ世代が変わっても、「この曲、お母さんから聞いたから知ってる」って言ってもらえるような音楽を作りたいですね。
ーーどうしたら、「残る音楽」を作れると思いますか?
ジョージ林さん:
音楽以外にもファストファッションとかファストフードとか、大量消費されるもののほうが、とっつきやすさはあると思うんです。でも、本当に残るのはいいものだけだったりする。
その違いは、「こだわり」にあると思うんですよね。時代の流れをすぐに取り入れて作ったり、マネをしたりするのは、言ってしまえば誰にでもできること。
「流行に流されない」って聞くと堅苦しい感じがするけど、「自分は何を目指したい」「何が欲しい」とか、そういうこだわりを持って進んでいくことで、最終的に残る価値が作れるんじゃないかな。
高木祥太さん:
どんぐらい強い意志を持って作れるかってことだよね。
ジョージ林さん:
そうそう。「強い意志」とか言うと、山にこもってる陶芸家みたいなイメージになるかもだけど、自分としてはもっとカジュアルなイメージなんだよ。
流行りを否定するつもりはないし、取り込んでいきたいけど、それよりも「自分がどうしたいか」が大事なんだと思う。
高木祥太さん:
こだわりって話でいうと、俺らはライブで同期を使わないんですよ。
※同期:事前に録音、打ち込みしておいた音、フレーズを鳴らしながらバンド等で演奏をすること
同期を使ったライブでも素晴らしいものがあるから、同期自体を否定するわけじゃないんだけど、俺らは生演奏にめちゃくちゃこだわっていて。
ーーどうしてですか?
高木祥太さん:
ライブの面白さが変わってくるんです。もちろん、同期を使ったほうが安全だし、スタッフさんも合わせやすいとは思います。
でも、たとえ予想外のトラブルがあっても生演奏だったら対応できるし、トラブルすら面白くできる。
世の中はどんどん便利になっていて、同期もその便利な道具のうちの1つだと思います。でも、便利なものがいいかどうかって、結局この時代の価値観ってだけじゃないですか。
「時代が勝手に決めてる、便利とされるもの、いいとされるものに抗いたい」っていう気持ちがつねにあるんですよ。それが、俺らのこだわりかも。
「No offense」がBREIMENの合言葉
ーーBREIMENの曲は、個性的でユーモアを感じるのに、不思議な安定感がありますよね。
実際にお話を聞いていると、みなさんはお互いをとても信頼し合っているんだと感じます。
一人ひとりが異彩を放つBREIMENが、メンバー同士でぶつかることなく、曲作りに集中できる秘訣はなんですか?
ジョージ林さん:
僕たちは「No offense」っていう概念を大切にしているんです。
ーー「No offense」は、直訳すると「攻撃しない」という意味ですね。
ジョージ林さん:
こうやって5人で顔を合わせて何かやっていくと、意見のすれ違いとか、ちょっとした方向性の違いが出てくるんですよ。
意見が食い違ったときに、それを黙っているんじゃなくて、お互いのズレを認識するためにちゃんと「違うんじゃない?」と言うことが大切だと思っていて。
でも、日本社会で生きてると、そういう反対意見を言うのが難しかったりするじゃないですか。
たしかに…。
ジョージ林さん:
ただ意見をすり合わせたいだけなのに、自分が否定されているんじゃないかと思っちゃう人も多いと思うんです。
だから、僕たちは反論するときでも「No offense」を念頭に置くことで、その人自身を否定してるわけじゃないっていう前提で、議論ができているんだと思います。
高木祥太さん:
曲作りの方向性で揉めそうになっても、「とりあえず、どのアイデアも全部1回試してみようか」ってなるよね。だから、揉めない。
いけだゆうたさん:
俺は「No offense」が、みんなにちょっとずつ芽生えていったらいいなと思うよ。
ーーそうなったら、世界が平和になりそうですね。
高木祥太さん:
考え方の違う人と共存していくための道を探していかないと、みんなで生きていくのは難しいから。共存する方法をバンド内で実験しているバンドです。
サトウカツシロさん:
つまり、治験バンドです。
みなさん:
いや、治験バンドって(笑)。
ーーみなさんが楽しそうに音楽をやられている理由がちょっとわかった気がします…!
高木祥太さん:
楽しくないと音楽やってる意味がないと思うんで、楽しくなくなったらやめます。
でも、それは逆説的に言えば、楽しくできるようにしないといけないってこと。だから、遊び心はこれからも大事にしていきたいですね。
きっと工夫していかないと面白くなくなっちゃうので、音楽づくりもこれまでのやり方にとらわれるんじゃなくて、新しい方法を考えて、アイデアを出しつづけるのが、強いて言えば俺らが努力するべきことなんだと思います。
なので、今後もがんばって遊んでいきたいな。
(取材・執筆=目次ほたる(@kosyo0821)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)/撮影=友海(@6stom__)
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