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OEDO[0-0]地球防衛隊法案──概論

21世紀も四半世紀が過ぎようとしているが、フランシス・フクヤマが宣言したように歴史は終焉せず、文明の衝突が続いているではないかと批判される。世界の民主化は進まず、ポピュリズムは蔓延し、戦争や紛争が続いているではないかと。近視的に見れば確かにそうである。
 
しかし100年スパンで歴史を俯瞰すればどうだろう。当時あたりまえだった奴隷制度や植民地主義政策。ほんの50年前には世界の30%を占めていたマルキシズムを曲解した共産主義国家。今となってはどちらの復権も不可能である。歴史には不可逆的な要素もあるのだ。特に自由主義化と民主主義化の流れに逆行するものは。
 
科学技術と文化の発達により、帝国主義的な戦争は過去のものとなった。資源や領土を奪うような戦争は、世界が貧しかった頃の昔話だ。供給が足りず、物が足りないから奪い合っていたのだ。今や先進国は、生産力の飛躍的な向上により物が余る時代、売れない時代を迎えている。
 
売れなければどうする? 国民が買えなければ国に買わせるしかない。ミリタリーコンプレックスの誕生である。献金と票田、リフレ効果を匂わせれば税金は無限に引き出せる打ち出の小槌。現在における軍拡のインセンティブは財政出動、ケインズ効果にあるのだ。しかもその方法は簡単。
 
「鍛えられた筋肉は行使せねばならず」の原理の元、国民の不安を煽り、不満を海外に向けさせれば、政治家の支持率も上昇し、ゾンビ産業も安泰の一石二鳥。世界には依然、余る国と足りない国とが混在する。その格差を利用すれば良いのだ。パクス・アメリカーナ。大義名分はいくらでも後付けできる。
 
国がそうなら我々も戦争観をアップデートさせなければならない。いつまでも古い価値観で、足りない国、欲しがる国に合わせる必要はない。彼らのレベルにまで自らを堕とし、競り合うようでは名が廃る。一足お先に次のフェーズに移っても良い頃だ。
 
しかし我が国の防衛予算は年間およそ5兆。公共事業費や文教科学振興費と肩を並べるほどに巨額である。自衛官およそ22万人以外にも、関連産業で生計を立てる人も多い。隊服を作ったり、食料を仕出したり──。資本家を悪玉に仕立てるマルクス的手法も、排他的ナショナリズムも得策とは成り得ない。
 
そこで「地球防衛隊」法案である。雇用、産業構造はそのままに、自衛隊の活動内容をシフトする。全世界に貢献する「正義活動」に転向するのだ。具体的には地雷撤去、森林火災、炭鉱火災、そして何より人命救助、レスキュー活動に特化した組織に再編成するのだ。
 
平時には、世界に1億余りあるという地雷の撤去。20分に1人の犠牲者(3割が子ども)を出すというその総撤去費用は5兆を超し、埋設スピードから未来永劫不可能だとされる。しかし非戦闘地帯に限定すれば、我が国の防衛予算からして数年で可能なはず。一気に世界中からの賞賛を集めるだろう。
 
また災害時には総力を挙げてレスキューに出動。奇しくも我が国は災害大国でもあり、世界もまた温暖化による異常気象に見舞われている。国内外の震災、水害などでノウハウを蓄積した陸海空。どの国よりも迅速に現場に駆けつけ、一人でも多くの人命を救い、全世界に親日派を増やすのだ。
 
絶大な国際世論を引きつけることが出来るだろうし、国際地位の上昇も見込める。これ以上の専守防衛はない、無敵の積極的平和主義である。高度な科学技術を生かしつつ、国内の軍需産業とそれを下支えする関連産業の糊口も凌げる。違憲を問われ続けてきた議論も氷解。堂々と胸を張れる。
 
今や日本のアニメを見ずして育つ子は世界にいない。「地球防衛隊」は隊服も航空機も地味な迷彩、アースカラーに徹する必要もない。日本お家芸のデザイン力で「科学特捜隊」化も「攻殻機動隊」化も可能である。F-15Jを「ヴァリアブルファイター」に、イージス艦を「サウザンドサニー号」に改造しよう。
 
最終的にはブランディングに徹底したメディア戦略に打って出る。アニメ化ゲーム化したコンテンツで、世界中のオタクどもの心を鷲掴み。擬人化した地球防衛隊娘で、2次元からも2.5次元からも敵国を内側から侵略。征服の暁にはオマケで各地に「お台場ガンダム」や「NERV」も建立してしまおう!
 

※以上、構想全体を「概論」としてまとめましたので、専門用語も多く難易度の高い文になっています。今後、もう少し分かりやすい「詳論」に分けて説明していく予定です。

第一部[1-1]〜[1-9]では「戦争観のアップデート」について。第二部[2-1]〜[2-9]では「地球防衛隊の活動と効用」について。第三部[3-1]〜[3-9]では「予想される反論への返答」について。第四部[4-1]〜[4-9]では「地球防衛隊に至る思想的背景」についてを綴って行く予定です。

敢えて辛辣に、挑発的に書いている箇所もありますが、真剣に日本の未来を危惧し、明るいものに変えたいとの願いで執筆に励んでいます。「スキ♡」「フォロー」や拡散のほど、お願いいたします。批判や反論のコメントもお待ちしております。

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