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心理職のためのビジネスマナー入門

この記事が役に立ちそうな方:これから心理職として就職する方、就活中の方、すでに働いているがビジネスマナーに自信のない方

大学院生の頃、社会人経験者ということでたびたび聞かれたのがビジネスマナーについてでした。

一般企業とは異なり、心理職の職場ではビジネスマナーを学ぶ機会がなかなかありません。
にもかかわらず、いきなり他機関とのやりとりを求められることもあります。

そこで、会社員時代の経験も踏まえつつ、心理職の職場で使えそうなビジネスマナーをまとめてみました。
記事の一部はお試しも兼ねて無料に、後半は有料に設定してあります。

約8,500字あります(読了までのめやす:約25分)

もっとも大切なこと

ビジネスマナーにおいてもっとも大切なのは、「自分がどう行動すれば相手が動きやすいかを考える」ということです。

別の言葉でいえば、「思いやり」「他者視点を持つ」ということになるでしょうか。
ビジネスマナーとは、お互いの仕事をスムーズに回すための行動規範であるともいえます。

内容としては学校を卒業したばかりの新入社員でもできることですから、焦らずゆっくり学んでいきましょう。

ビジネスマナーはなぜ必要なのか

学ぶ動機づけのためにも、まずビジネスマナーが必要な理由を明確にしてみましょう。

一つは、仕事で関わる相手のためです。
相手を不快にさせたり迷惑をかけたりすることなく、お互い気持ちよく仕事をするためです。

そしてもう一つの理由は、自分のためです。どういうことなのか、3つのポイントを挙げてみます。

①「この人、大丈夫そうだな」と思ってもらう

ビジネスマナーは、「一般的に考えてこの程度のマナーができていれば標準とみなされる」という行為の集合体です。
ビジネスマナーが身についている人=社会人としてある程度の常識がある人と受け取られます。

逆に、ビジネスマナーができていなければ「一般的な常識が身についていない」とみなされる可能性があります。
組織の中でそういう印象を持たれてしまうと、必要な情報が回ってこなかったり、本来なら心理職が活躍できるはずの仕事を担当できなかったりするかもしれません。

また、クライエントにもマイナスイメージを持たれるおそれがあります。特に企業で働いているクライエントの場合、ビジネスマナーは「できて当然」という認識のことが多いです。
もし心理職がビジネスマナーを身につけていなければ、「こんな当たり前のことができないなんて、この心理士は本当に大丈夫だろうか」と不安にさせるかもしれません。

②自分を守る

ビジネスマナーを身につけておくことは、組織の中で自分の立場を守ることにもつながります。
なぜなら、何か問題が起きた時、ビジネスにおける一般的な基準に沿って行動していれば「いやいや、私は標準的な対応をしましたよ(問題が起きたのは私の責任ではありませんよ)」と主張できるからです。

心理職は一人職場で働くことも多いため、「組織の中でどう生き延びるか(どう自分の居場所を維持するか)」という視点を持っておいて損はありません。

自分を守るのも大切なこと

③業務を円滑に進める

そして、仕事がスムーズに回るようにするためにもビジネスマナーは必要です。

たとえば仕事を依頼するメールを送る時、要点をわかりやすくまとめ、依頼内容を明確にすることもマナーのうちといえるでしょう。
相手にとって理解しやすいメールを送れば、結果としてやりとりに割く時間も減らすことができ、お互いの業務負担軽減につながります。
(ビジネスメールの書き方については後述します)

基本的な考え方のポイント

①相手の時間を奪わない

ビジネスマナーの本質は「自分がどう行動すれば相手が動きやすいか考えること」です。
その中でも大事な考え方の一つとして、「相手の時間を奪わない」が挙げられます。

どんな仕事も、複数の人が関わって構成されています。
誰かがどこかで仕事の流れを止めてしまったら、その後の人は業務を進められなくなり、業務を終えるまでに余計な時間がかかってしまいます(=時間を奪われてしまいます)。

ですから、「ボールは早めに回す」(自分のところで業務を止めない。必要な作業が終わったらすぐ次の人に渡す)姿勢が重要になってきます。
そうすることで、相手は早めに仕事に取りかかれます。こちらとしても、タスクが一つ減って次の仕事に集中できるメリットがあります。

「ボールを早めに回す」例:
・メールや電話の返事は早め(遅くてもおおよそ1営業日以内)に行う。
・提出書類は締め切りギリギリではなく、早めに出す(可能なら、提出を求められた日のうちに出す)

②報告・連絡・相談を大切にする

報告・連絡・相談、頭の文字を取って「ほうれんそう(報連相)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
自分のところだけで情報をとどめておかず、必要に応じて上司や同僚と共有するというのも働く上では大事なことです。

例:
・作成を頼まれた資料は、完成するより前に「今こんな感じで作っています。この方向性で問題ないか、お手すきの際にご確認をお願いできますか?」と確認する
・クレームが入った場合は、「◯◯の件ですが、実はこういう経緯で…」と自分から上司に説明する

ちなみに、情報を共有する際はいきなり本題に入らず、「ちょっとご相談なんですが…」「質問がありまして」など、端的に伝えてから話し始めることで相手の心の準備をしやすくするというやり方があります。

③職場の問題はシステムの問題である

現在、ビジネスの場では「職場で起きた問題は、問題が起こるような設計になっているシステムの問題でもある」(したがって、システムを改善することで問題を解決していける)という考え方が広まってきています。

問題に対するシステム改善の例:
・FAXの誤送信を防ぐため、(一人が丹念にチェックするのではなく)二人以上でWチェックを行う。
・電子カルテの入力ミスにはエラーメッセージが出るよう、あらかじめ設定しておく。

ところが、心理職は個人の内的な問題について考える機会が多いせいか、外的な要因はあまり重視せず、職場の問題の原因を個人へと帰属させる傾向があるように思います。

しかし、職場で問題が起きた時、個人に原因を求めすぎることは、必ずしも問題の解決にはつながらない可能性があります。
職場の問題は、実際には労働環境や社会情勢など複数の要素が絡み合って起きています。
「職場の問題=システムの問題」という考え方を知っておくだけでも、自分や他人を追い詰めなくて済むかもしれません。

テクニック編

さて、ここからは具体的なビジネスマナーについて紹介していきます。
ビジネスマナーというのは明文化されたルールではなく、暗黙の共通理解なので、職場によって若干の違いがあります。
なるべくオーソドックスな内容をまとめたつもりですが、「実際に入職してみたら違った」という場合は、その職場での慣例を優先してください。

電話応対【例文あり】

まずは、電話応対に関してです。そもそも固定電話を使用した経験が少なく、イメージしづらい方もいらっしゃるかもしれません。

電話応対は慣れなので、とにかく電話をたくさん取ることで上達します。「お世話になっております」といった定型文は、口に出す機会が多ければ多いほどスムーズに出てくるようになります。
言葉がつかえてしまうこともあるかもしれませんが、みんな最初はそうなので大丈夫です。積極的に電話を取りに行きましょう。

電話に出る準備

電話を取る時は、必ずメモの準備をしておきます。
また、慣れるまではすぐ確認できる場所にカンペを用意しておくと安心です(私は新卒の頃、自分のデスクの引き出しを開けたところにカンペを入れていました)。

心理職が電話応対をする相手としては、
①自分の職場以外の相手(よその支援機関、企業など)
②自分と同じ職場の相手(同じ職場の他部署の人など)
③クライエント(あるいは患者、利用者、児童などの支援対象者)

に大別されます。

自分から電話をかける時はあらかじめ相手が誰かわかった状態で話し始められますが、かかってきた電話を受ける場合はそうではありません。
電話に出てから、臨機応変に対応を変えていくことになります。

①自分の職場以外の相手

よくありそうな「外部の人から同僚宛に電話がかかってきたが、同僚は不在である」という場面を例に、電話応対のやりとりを考えてみます。

仕事の経験がない方にもイメージしやすいよう、会話の例文と解説をまとめてみました。下の画像を見ながら、声に出して練習してみるのも良いと思います。
(代替テキストに収まらなかったため、テキストデータが必要な方はご連絡ください)
自分が電話をかける場合は、この画像でいう「電話をかける人」側の言い回しを参考にしてみてください。

「電話の受け手(=自分)は相談室に勤める心理職。同僚宛に、出版社から電話がかかってきた。同僚はあいにく会議中で、電話に出られない」という設定です。

「御社名」は「おんしゃめい」と読みます

②自分と同じ職場の相手

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