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心理士はカウンセリング以外にどんな仕事をしているのか

この記事が役に立ちそうな人:臨床心理士や公認心理師の仕事に興味がある方

臨床心理士や公認心理師をしているというと、「つまりどういう仕事?」と聞かれることがあります。

一番イメージしやすい仕事はカウンセリングだと思いますが、実は他にも多種多様な業務があります。

今回は、医療機関で働く私のカウンセリング以外の業務をご紹介します。

なお、カウンセリング以外にどんな業務があるかは、職場によってまったく違います。カウンセリングを一切行わない領域もあります。
医療機関でも、精神科か身体科か、常勤か非常勤か、診療科専属かリエゾンチームか、などで変わってくると思います。
この記事はあくまで一例として捉えてください。

院内のカンファレンスも大事な仕事

1.カウンセリングの前準備

カウンセリングをする前には、その時点で得られた情報を元にしていろいろと仮説を立てます。
場合によっては前もって検査を案内する準備をしたり、紹介先を検討しておいたりすることもあります。

当日は、相談者の方に記入していただく書類や筆記用具の準備をします。相談室のチェックも大切です。万全の状態でカウンセリングが始められるようにしておきます。

2.記録の作成

カウンセリングが終わったら、相談内容の記録を作成します。
実は、これがとても大切で、かつ時間を要する業務です。

カウンセリングの内容を簡潔にまとめるのは、非常に難しいことです。カウンセリングで語られる悩みは「母親との確執」「いじめ」「うつ」などの端的な一言で表しきれるとは限りません。
語りの行間に表れる微妙なニュアンスを汲みつつ、心理職以外のスタッフ(たとえば主治医など)が見てもわかりやすいように記載する必要があります。

記録をまとめる過程で心理職側も客観的にカウンセリングを振り返ることができ、新たな気づきにつながるため、非常に重要な工程です。
ただ、いくら記録に力を入れたところで収益につながるわけではないので、記録作成に十分な時間を取れない職場もあるかもしれません。

うっかりするとカウンセリングより時間がかかる

3.検査の準備

心理職は心理検査や認知機能検査、神経心理学的検査などの実施も担当します。
当日スムーズに検査が行えるよう、事前に準備しておきます。

部屋の環境を確認したり、道具を揃えたりと、地味ですが大事な業務です。ここでバタバタしていると、検査中に道具が足りないことに気づいて青ざめることになりかねません。
普段あまりやらない検査の場合は、前もって練習しておくこともあります。

4.検査の実施

準備が終わったら、いよいよ実施をします。
これについては臨床心理系の大学・大学院で詳しく学ぶと思いますので、詳細は割愛します。

今のところ1日9件が最多記録

5.検査の所見作成

検査が終わったら、今度は所見を書きます(書かないこともあります)。
所見とは、検査の結果をわかりやすく説明した文書のことです。

心理検査の結果は、健康診断の結果などと同じく、専門知識のない方にとってはよくわからない数値や文字の羅列です。なので、理解しやすいように心理職が解説するというわけです。

非常に大事で、知識や経験が必要で、とても時間のかかる業務ですが、面接記録と同じく収益が発生するわけではないので、どこまで時間を確保できるかは職場によります。

6.集団療法への参加

心理士=カウンセラー=クライエント(患者さん)と一対一で仕事をすると思われがちですが、集団で行う業務もあります。

7.主治医との情報共有

公認心理師は主治医の指示の下で動くことになっていますが、そうでなくとも情報共有が必要な場合は多々あります。

ところが、どこの医療機関でもお医者さんというのは基本的に忙しいです。伝えたい情報のうち、「何を伝えるか」「いつ伝えるか」「どう伝えるか」をしっかり考えておく必要があります。

診察のスキマ時間を狙う

8.衛生管理

コロナ禍ということもあり、医療機関では衛生管理が厳しくなりました。心理職がいるような対人援助の職場では、医療機関以外でも感染対策に気を使っているところが多いのではないでしょうか。
換気をしたり、除菌シートでテーブルを拭いたりするのも仕事の一つです。もちろんこまめな手洗いは欠かせません。

9.電話対応

電話を取ったりかけたりします。受けるのは主に患者さんからの電話、関係機関からの電話、院内の内線などでしょうか。一方、かける相手は患者さんご本人、ご家族の方、関係機関などさまざまです。

最初はドキドキする

10.お知らせ文書の作成

院内に貼り出す文書や、患者さんに直接お渡しする文書を作ることもあります。

個人的には、難しいけれどやりがいを感じる分野です。文書をご覧になる方は注意力や理解力が落ちている方も多いので、相手に合わせてわかりやすいように情報を記載します。地味にアセスメント(相手が今どんな状態にあるか、専門的な知識や経験を元に見積もること)の力が試される業務だと思っています。

また、他院や他機関に送付する文書を作成することもあります。独特の用語があるので、最初は下調べ必須です。

11.スタッフとの雑談

個人的に大切にしている仕事です。
心理職は他の職種と一緒に働くこともよくあります。たとえば看護師さんや精神保健福祉士さん、医療事務の方、受付の方などです。

対人援助の現場では、大変な出来事も多々あります。そんな時に頼りになるのは周りのスタッフです。もちろん、反対に自分が支えることもあります。
一緒に働くチームの一員として日頃から関係を築いておきたいので、私はなるべく他職種の方とも適度に雑談をすることにしています。

ただし「適度に」というのがポイントです。基本的にみんな忙しいので、タイミングや話題のチョイスが大事になってきます。

雑談はバーンアウト防止にも役立つ

ここまで、ざっくりとカウンセリング以外の業務を挙げてきました。
ここに書いていないものもありますし、これに加えて重なってくる業務もあります。たとえば採用、教育、マネジメントなどです。

どんな業務も、「まわり回っていずれは相談に来る方の利益になる」という認識で取り組んでいます。

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